18.「禽族禽王」の計


『勢力を倒すにはトップを倒せ』
 強大で倒すことが困難な勢力も、ただ一つ倒すことができる可能性があります。それはその勢力のトップを倒すか捕らえてしまうことです。「族を捕らえようと思えば、その王を捕らえよ」「組織をつぶそうと思えば、そのトップだけに的をしぼってたたけ」そんな意味の計略です。「将を射んとば馬を射よ」という言葉もあるように、倒したいものばかりを攻撃するのではなく、それを統括するもの一人を狙えということをこの計略はいっているのです。

王允の計略

 都を西涼の董卓軍が占拠して混乱を極めていたとき、都で漢に仕える王允は、この勢力を何とかして都から追い出そうと考えた。各地の諸侯が董卓軍を倒そうと戦を挑んだが、西涼の兵は強く歯がたたない、多くのものは万策尽きて董卓軍を討つことをあきらめてしまっていた。戦でかなわぬ以上、董卓軍を倒すことはできないのかと多くのものが思っていたとき、王允は、董卓一人を倒せば董卓軍はなくなるのではないかと董卓一人の暗殺を計画する。かくてこの計画は成功し、董卓一人を倒したことで、董卓軍は統制を失い、瓦解したのである。


 曹操や袁紹が、多くの兵を使っても倒せなかった董卓軍が、王允一人に落としいれられて瓦解したのは、まさにこの計略が成功したからであります。雑兵には目もくれずに、敵の大将首を狙うのは戦の基本戦術であるように、(信長の桶狭間の戦いなど)戦いにおいてこの考えは大事なものでありましょう。暗殺を奨励する気はありませんが、組織は柱一本失うことで簡単に瓦解してしまうものです。それが新興勢力で、尚且つワンマン組織であればあるほど、トップを失った時の瓦解の確立が高くなります。逆に歴史のある組織は、そうした危機を乗り越えるシステムが出来上がっているために、なかなか瓦解はしないということができます。まあ、トップ一人失って瓦解する組織であれば、所詮それだけの組織でしかなかったと考えることもできますが・・・とにかく、行き詰まった時は発想の転換が勝利を生むものです。