20.「水をかき混ぜ魚を探る」の計
『敵勢力を内部争いさせろ』
敵が強大であり、正攻法ではかなわない時、有効な手段は敵の内部崩壊を誘発することです。敵内部の派閥争いや人間関係の亀裂を利用して敵の弱体化を謀るのです。敵中を水のようにかき混ぜ問題分子である「魚」を見つけ出し、それを利用して敵の弱体化を謀ることが、この計略の意味であります。
司馬懿の失脚
蜀の諸葛亮 孔明と魏の司馬懿 仲達はライバル同士。孔明は自分の策を見破る司馬懿の存在を恐れていた。そこで孔明が考えたのが、司馬懿という強力なコマを失脚させることであった。司馬懿は魏の国でも警戒されており、皇族の曹一族からは自分たちの地位を脅かすものと嫌われていた。そこに孔明がつけこんだのである。孔明は司馬懿が謀反を企てているとのビラを魏の国にばら撒き、司馬懿の悪評を流した。これを信じた皇帝や曹一族は司馬懿の実権を奪い、司馬懿を失脚させたのである。司馬懿を失脚させた孔明は魏に対し戦をしかける。かくして司馬懿のいない魏軍は恐るるに足らず、蜀軍はおかげで連戦連勝となったのである。
敵があまりに強く強大である時は、敵の内部の人間関係を探ってみることです。そこにつけこむスキがある場合、この計略を使うチャンスがあります。孔明の場合は、司馬懿という魏軍を統括するキーパーソンだったために、その効果も絶大でしたが、何も大物である必要はありません。不満分子や小者であっても、敵内部をかき回す仕事は充分できます。利用できるものは利用し、敵勢力を少しでも弱体化させるのです。三国志ではこの他にも呂布を攻めた曹操がこの計略を使い、呂布軍に内通者を出しています。秀吉の小田原攻めでもこの計略を使い、小田原側に内通者をつくって勝利しています。それから、かの田中角栄の失脚劇は、竹下
登という魚にかき回された結果、もたらされたものではないでしょうか?小沢一郎によって自民党がかき回されたこともありました。もちろん、反自民勢力がその時、この計略を考えていなかったとは否定できないでしょう。欲の強い人間が集まる組織ほど、この計略は有効であります。そういえば、孔明もこの後、司馬懿の計略で劉禅に蜀の都に呼び戻しをされていましたっけ、さすが司馬懿、自分がされた計略を、後日しっかりやりかえしているのですね。