25.「梁を盗んで柱を換える」の計
『人事すり替えで相手を弱体化させろ』
「家の柱をすり変えることでその家をつぶしてしまう。」という計略です。人事を遠隔で操作し、有能な人材をそのポストから降ろすことで、その組織の弱体化を謀るというものです。「よその組織の人事を操作することなどできるか」と思いますが、できます。それは噂をばらまいたり、内通者を作ったりすればよいのです。
蔡瑁の失脚
赤壁の戦いの時、曹操軍は苦手な水軍を統括する人材として、降将である蔡瑁という人物をその水軍統括ポストに任命した。北国の曹操軍には水軍を扱える人材が皆無だったので、仲間に加えて間もない蔡瑁を使わざるをえなかったのである。一方、呉では戦いに勝つために何とかこの蔡瑁を失脚させようと企んだ。呉の周瑜は敵から送りこまれてきた間者(スパイ)を逆に利用し、蔡瑁に謀反の心ありとの情報を流したのである。この偽の情報を信じた曹操は蔡瑁を殺し、干禁という水軍経験のない武将を後釜のポストにつけたのである。これによって曹操軍の水軍を弱体化させた周瑜は、赤壁の戦いで魏の水軍を打ち破ることに成功したのであった。
重要人物をそのポストから降ろし、かわりに凡人をもってくることによって、その勢力の弱体化を謀るのがこの計略の目的です。組織や企業は人材がなによりの宝。その人材に的をしぼって攻撃するこの計略は、それゆえに効果絶大であります。とくに屋台骨である大黒柱を失脚させれば、もうその組織は崩れ去るのみです。周瑜の場合は蔡瑁が曹操に信用されていなかったという利点もありましたが、信用されているものでも、他の計略とあわせることによって、成功率を上げることができます。