26.「桑を指して塊を罵る」の計


『説教は直接せずに間接的に』
 「桑を指して塊(桑とは別の木)を批判する」つまり本当はAを批判したいのだけれど、批判することができない場合、Aと似通ったBを批判することで、間接的にAを批判するというものです。

賈窒フ独り言

 魏の名軍師として有名な賈窒ヘ、ある日曹操に自分の後継者のことを尋ねられた。賈窒ヘ自身の保身に気を使う人物であり、ここでハッキリと後継者を決めてしまえば、もしそのものが後継者とならなかった場合に、自分も連座して失脚してしまうことを恐れ、答えを明確にしなかったのである。それと同時に、今だ後継者を決定しない曹操に苛立ちを覚え、何とか忠告したいという気持ちもあった。しかし曹操という男は、面と向かって批判されると自分を殺しかねないので、遠まわしに現状を批判することを賈窒ヘ思いついたのである。

 そこで賈窒ェ考えたのが、かつて袁紹や劉表が後継者をハッキリと決めておかなかったために滅びたいきさつを、独り言のように、思い出話にもちだしたのである。これを聞いた勘のいい曹操は、自分の今の状況を悟り、袁紹や劉表の二の舞を踏まぬように後継者問題に決着をつけたのであった。賈窒ヘ結局、曹操死後皇帝になった曹丕を支持していたために曹丕に気に入られ、権勢を手に入れることができたのである。


 皮肉といいましょうか。あてつけといいましょうか。直接批判でなく、間接批判です。自身の身を守りながら、批判をすることができるために、ちまたでもよく使われています。集団には必ずといっていいほど一人、怒られ役というものが存在します。いじめられっ子であるかもしれません。まわりの者はその人物が怒られているのを見て、「自分も気をつけねば怒られてしまう」と、気を引き締めるのです。これで組織はうまく動いていくことができるのです。しかし、怒られ役の人は、何とも気の毒です。しかし、大抵は次の新入社員が入ってくると、そのポストを譲ることができるのです。苦しいけれど、それまでの我慢ですね。