30.「反客為主」の計


『外部の人間がいつしかトップに』
 客として現れた外部の人間が、気がつくとトップや幹部になっていることは珍しいことではありません。こうした計略を、客が主に取って代わることから「反客為主」と呼びます。この計略は取って代わる才能さえあれば、努力次第で誰にでもできる計略であります。「初めは処女の如く、後には脱兎の如し」というように、味方や協力者を装い相手に近づいて、その組織で人気を取り、必然的な人材になれば、おのずと周りが盛り立ててくれるでしょう。そこでこの計略を使うのです。うまくいけば戦いをせずに組織を乗っ取ることも可能です。

劉備の乗っ取り作戦

 劉備の国を得るパターンは「困っている国にまず客将として登場し、そこで人気を取り、なくてはならない存在になる。いつしかその国の主よりも人気を得るようになる。そして主にその座を譲られる。」というパターンであり、これを幾度も刳り返している。大方は周りの意思も手伝ってのことであるが、蜀を乗っ取った時だけは、明らかに計略である。劉備は初め蜀の援軍として蜀に現れた。しかし敵である張魯との戦いが終わっても兵を引く気配をみせず、蜀の内通者の仲介で国を乗っ取る作戦に出たのである。蜀としては、客として呼んだ劉備に国を乗っ取られた結果となり、結局、蜀は張魯よりも恐ろしい劉備と戦う事態になってしまったのである。


 劉備の場合は、人気、実力ともに蜀の人材を超えており、乗っ取りは簡単だったと思われます。劉備は蜀の名士たちの支持を得ていましたし、平和ボケの蜀の国では実戦経験豊富な劉備軍はもてはやされたのでしょう。これが他の人物であったら、うまくいかなかったかもしれません。このように、この計略はそれをする人間の、実力、人気にかかっているのです。実力もないものがやろうとすれば、自滅してしまう危険性があります。まずは同士や賛同者を増やすことから始めなければなりませんね。「バイトや派遣社員がいつのまにか自分より上の地位に出世していた!」などということは今の時代では珍しくありません。そういう人は追い越されないように努力することが大事ですね。