31.「美人」の計
『女で敵を骨抜きにしろ』
何とも単純な計略です。名前の通り、女の色仕掛けで敵を骨抜きにして倒してしまう計略です。しかし単純ゆえに、この計略は人間(男)の本能、心理をついており、その成功率、応用力、ともに高い計略であるといえましょう。男の弱点が女にあるのはいつの時代でも共通の真理。たった一人の女が国家を滅ぼした例は数え切れないほどあります。女性の存在がそれだけ魅力的なものなのか、それとも世の男がただスケベなだけなのか、判断はつけかねますが、単純ゆえにこれほど恐ろしい計略はありません。
董卓と呂布
都を乗っ取った董卓は西涼の精強な軍隊を持っており、なおかつ最強の武将
呂布を養子に迎えていたため、各地の諸侯と戦っても動じないほどの強さと権力を持っていた。都で皇帝に仕える王允は、打開策として一人の侍女(三国志演義では貂蝉)を使って二人を争わせ、同士討ちをさせることにした。有名な「連環の計」である。一人の侍女をめぐる争いは、強い絆で結ばれていた董卓と呂布の親子の仲を裂き。結果董卓は呂布に殺される。何十万の兵力でも倒せなかった董卓軍をたった一人の女が滅ぼし、国を救ったのである。
「美人の計」のエピソードは董卓だけではありません。あの曹操も張繍に騙され、危うく死にかける失敗をしていますし、劉備も孫権の妹を利用した計略にかかりそうになりました。楊貴妃、西施、妲己、中国史上には皇帝や英雄を惑わした「傾国の美女」が何人も存在します。これほどの英雄でさえ引っかかってしまう「美人の計」は、恐ろしい計略であるといえます。大物が女性問題で失脚するのは時代を超えた現代でも頻発する失脚劇です。男は進歩がない生き物なのかもしれませんね。気をつけたいものです。