love2 決行
今日しかないと思った。
今日しか、告白のチャンスはないと思った。
そう確信した朝。
俺の手には、占い雑誌が固く握り締められていた。
おとめ座 ★★★
告白のチャンスかも?
今日は、カラオケにでも行ってスカッとしてみるのもいいでしょう。
ラッキーアイテムは、ナマコです。
カラオケに行って、気分ののった所で告る。
何しろ今日のおとめ座の運勢は、堺正章もびっくりの星3つだ。
でも、ラッキーアイテムはどうやって手に入れるか不明なので、それには頼らない事にした。
(第一、ナマコ持って告るってどーよ)
俺は、朝考えた作戦を再度頭の中でレクチャーし、・・・とうとう作戦決行にうつった。
放課後HRの担任のつまらない話の時、俺は隣の席の兄者に小声で話しかける。
「兄者、今日カラオケいかねー?」
「は?何、急に。」
いきなり俺がそんな事を言い出すもんだから、兄者はいぶかしげな顔つきで俺を疑ってくる。
やはり、ターゲットは手ごわいぞ。
「いーじゃんよ、たまには〜。な、いーだろ?」
ここは、押すしかない!
押して押して、押しまくるっ!
「んー・・。じゃあ、他の人も誘う?2人じゃ盛り上がんないデショ。」
じ、じょーだんじゃない!
他の奴なんかこられたら、兄者に告れない!
「も、盛り上がるだろ!つか、俺盛り上げるしっ。」
「・・・何たくらんでんの?」
うっ・・。
さすが、腹の中からの付き合いなだけあって、俺の胸のうちまでお見通しって訳か。
さて、どうしたものか・・。
「なんもたくらんでねーよ!ただ兄者とハッチャケてーだけ。だから、さ。行こーぜ?」
にこーり。
柄にもなく、満面の笑顔での挑戦。
乙女(?)ッつーのは、ときたま男が見せる笑顔に弱いんだよ。
「・・・・・・・・うん、別に・・いーけど・・。」
や、やたー!
これって、俺の笑顔の賜物って奴だよなっ?
お母様!俺を美形に生んでくれてありがとう!(涙)
・・しかも、兄者は兄者で、柔らかそうな可愛い頬を仄かに紅く染めている…気がする。
これは、もしかしなくても脈ありなのでは・・?とか考えちゃう、オチョーシ者な俺。
「サンキュ!もー、兄者サイコーっ!」
「うるさいぞ、花螢!」
HR中なのをすっかり忘れていた俺は、無造作に叫んでしまい、担任からのお叱りをうけてしまった。
でも、今ならそんなの全然苦じゃないぜ!
「・・・バカ。」
「すんませんでしたー」
俺はこの先に希望の光が見え、兄者に隣でどやされながらも、おどけながら担任に詫びたわけであった。