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play2 作戦



授業は早くも2限まで終了し、今は業間の休み時間だった。
早弁してる熊田を差し置いて、さっそく俺たちは朝の件について話し合っていた。


「でさあ。仮に妹チャンのことは、あの"テディベア"を連想させる可愛さから、"テディ"と呼ぶとして」

今朝、購買で買った苺・オレを飲みつつ、俺は小声での提案。
あー。俺ってば、マジでネーミングセンス抜群?

「そういうあだ名的なのは、いるのかよ」

「オバカね〜、大和クンったら。あだ名あった方が、会話するときになにかと便利だローが」

ムッとしている大和はさておき、さっそく本題に入ることにした。
まずは、いかに熊田にバレることなく、テディをフるか。

「でもさあ。コッチがどんなにうまくやったとしても、テディが花ちゃんにチクッちゃったら、終わりじゃねー?」

常に菓子を持ち歩いている弥栄の今日のおやつは、ポッキー(ノーマル)らしい。
満足そうに、次々とポッキーを口に運びながら、そう意見してくる。

「あのねえ。あんなプリティーガールが、チクるなんて卑劣な行為をすると思いマスカ?答えはノーだね、ノー」

弥栄の手元からポッキーを一本拝借し、それにパクつく。
もちろん、弥栄からはどやしの一本付き。

「見た目だけじゃ分かんねえだろーが。・・つーか、いつもフる時に泣かれるんだけど、どうしてだと思う」

さらに横から大和が、弥栄のポッキーを拝借。
俺たちの行動にあきらめたのか、弥栄は机の上にしぶしぶポッキーの袋を置いた。

そして、俺は大和の言葉にモチロンのごとく、ため息をおくる。

「そら、オマエがいつもの無愛想な調子でフルからだろーが」

これ以上にない、最もな意見だと思う。

「でも、笑顔で振られるってのもビミョーだよなァ〜」

と、これが弥栄の意見らしい。
俺は、なにも「笑ってフれ」とは言ってないっての。
まったく、弥栄のおっちょこちょいさんめ。

「俺はネ、せめて申しワケなさげにフれっつってんの。オマエ、いつもどんな風にフッてんの。 弥栄を実験台に、やってみ」

俺の言葉に「えー、俺かよっ」とか弥栄が文句を言ってたけど、まあそこは聞こえないフリ。
そして、最高にふくれた顔で、弥栄は「大和に告る女」役を演じた。

「大和君すきですつきあってください」

ぼ、棒読みかよ!
ぜってー好きじゃないだろ、その棒読み加減は。

「悪いけど」

そして大和は大和で、しつこい訪問販売を断るが如くの無表情さでフるし。
・・・・こりゃ、泣かれますわ。


「あー。オマエらの大根ップリには、恐れ入ったわ。ハリウッドもビックリな俺の演技力を、しかと目に焼きつけなさい」

一呼吸おいて、俺はまさしく恋する仮面を纏う。
そして、熱っぽい視線を大和に向けて、恥じらいながらのこの一言。

「俺・・・・オマエのこと、好きなんだ。・・オマエにならナニされても平気だし、・・・なんでもして欲しい・・。だから、・・俺と付き合え」

どうだ、このスバラシキ演技力!


「・・・・・・」

「・・・・・・」

俺の演技力の素晴らしさに、声も出ないらしい2人。
正直な反応で、何よりだぜ。

そして、やがて大和が口を開くと。

「・・俺、男には告られてねーんだけど。しかも、そんな熱烈な告白もされてねえ」

「あー?ンな細かいコト言ってんじゃねーよ。男で細かいなんて、サイアクだっつーの」

やれやれとため息をついてみせると、「全然細かくねーよ!」と弥栄の鋭いツッコミが入った。
男だ女だって、そんなに変わることかよ?
べつに結婚だなんだって言ってんじゃねーんだし、バイの俺としては、細かいことにしか聞こえねーんだけど。

そして、なんやかんやと茶々をいれられつつも、「竜也くんのなんともタメになる告白講座」は幕を閉じ、再び話題を戻すことにした。
けっきょくの問題点は、この二つということになる。
"いかに熊田にバレることなく、テディをフるか"
"テディをなるべく傷つかせない形で、どうフるか"
これは、これからの熊田との友情にヒビが入るかどうかの大事な問題だ。
なんとしてでも、穏便にことを進めなければならない。


「とりあえず、明日文化祭だろ?文化祭のワイワイした雰囲気の中で、テディをフる。
そーすりゃあのコの気も、ちッとは紛れんじゃねーかなっ?」

弥栄の提案を聞いて、俺も大和もなるほどと頷いた。
たしかに、それは得策かもしれない。
しかも告られてから、けっこう日にちが経ってるみてーだし、明日辺りが潮時だろう。
弥栄にしては、なかなかナイスな考えだ。

「あとは、オマエがなるべく気を使って応対してやれば、穏便に話はつくだろ」

それにも、大和は了承した。
コイツはもともと気のつく奴だし、無愛想な点をなおせば、なんとかことは穏便に解決する気がした。
よし。これで明日がくるのを待てば、また平穏な日々が戻ってくるってワケだな。
俺たち、ファイト!










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