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play3 彼女



「バカやろッ‥あんまがっつくなよ、」

なんだかおかしな事に、大和と変な取引をしてしまった俺は、すっかりヤツの思うツボだと思う。
そして大和は、全く遠慮するコトなく、俺のカラダを弄んでいた。
いつの間にか、纏っていた学ランは脱がされていて、中に着ていたTシャツの隙間からは大和の手が忍び込んでいた。


「だから俺は、むっつりなんだって」

理由になってねぇ大和の言葉に呆れつつ、俺はため息をつく。

「つーか、お前。どこまでする気‥?」

そう聞けば、俺の背中をまさぐっていた奴の掌の動きが止まった。

「…どこまでがいーんだよ、」

耳元で囁かれるように言われて、思わずカラダがゾクリと反応する。
相変わらず机に押し倒されたままの俺のカラダは、そろそろこの体勢のキツさに悲鳴をあげはじめていた。

「や、大和‥痛ェ」

と、訴えれば。

「…ごまかすなって。どこまでだよ、」

ごまかしてなんかねえってのに、大和のヤツは俺の腹の辺りを撫でながらそう言ってきたのだ。

「ンなコト、俺に聞くんじゃねぇッて‥」

余談だけど、俺はこういう時にバカに声は出さない方。
まあ、すげェ気持ちい時は別だけどさ。

「じゃあ、俺が決めていいのかよ‥、」

大和の唇が、ズボン越しに俺の下半身に口づけしてくる。
さすがにヤバイって、この状況。
仮にも、俺は微妙に大和の事を恋敵として見てたし、弥栄に一番近い存在って事も気に入らなかった。
‥なのに、この現状はどうだ。
俺はそんな男に、いいように弄ばれてるじゃねーか。

「やめろって、このエロッ・・」
「サイッコーの褒め言葉じゃねえの、」

ベルトをカチャカチャいわせながら、それをはずしていく大和。
‥あーあ。
俺、このまま大和にヤられちゃうのかなー‥。
まあ、抵抗する気も今更起きねーけど、とりあえず覚悟はしておいた方がよさそうだ。
とんだどんでん返しだよな、全くよ。

「‥ずいぶん余裕だな。慣れてますってか、」
「まァーな。お前みてーなのは、初めてってワケでもねーよ」
「・・・・、」

そう親切に教えてやると、大和は予想以上に嫌な顔をした。


「‥‥偏見‥?それとも、嫉妬だったりして」
「…どっちかっつーと、後者。」

そして、まさかと思った言葉と共にやってきたのは、ヤツの唇。
ホントに大和は、キスが好きだよな。


「‥唐沢、」

ガラッ

俺の名前を呟く大和の声と、教室のドアが開く音が重なった。
思わず、ドキリとする。
‥見られた。そう確信しながら、俺はドアの方に視線を向けた。


「内、藤・・。」

カラダ中の水分が、全てなくなったような感覚に陥る。
ドアを開けて教室に入ってきたのは、弥栄の彼女・・・・内藤姫香だった。


「からさわくん?」

ほけーっと俺達を見つめる、内藤。
内藤は、細っこくて目がデカくて髪が長くて、いかにも弥栄が好きそうな女だ。
そして、それにプラスして・・・大の天然ボケってやつなワケ。
まあ、男としては可愛くてしょうがないわな。


「大和くんもいるんだねー。なにしてるの?」

俺を机の上に押し倒している大和に、
学ランを脱がされてる俺。
この状況で、「なにしてるの?」って聞いてきた内藤に、俺は心の中で拍手をおくった。
・・・・・・コレだから、天然は困る。

「えーと・・・・・・、」
「唐沢が背中痛いっつーから、治療法教えてやってたんだよ。」

俺が口ごもっていると、大和がそれを遮るように嘘をいった。
・・・・あーあ。
あんな純粋なコに嘘ついちゃって、俺らって超ヤなやつ。


「そっか。唐沢くん、大丈夫?」
「あー、おう!超治ってきたっぽいっ」

机の上から起き上がって、そう弁解する。
あー・・・罪が重なってく。

「・・あ、」

思いついたような声を小さくあげて、内藤は俺たちに近づいてくる。

え、なに。
俺ってば、なんかヤバイもんでも落とした・・・・・?

「ハイ、落ちてた。汚れちゃうよ、」

大和に脱がされた学ランが床に落ちていたらしく、それを内藤は拾って、俺に渡してきた。
しかも、俺の学ランについたホコリをパタパタと軽くはらってくれる。
ど、どんだけ天然で、いいコだよ・・っ

「さ、サンキュ・・。」
「私、家の鍵忘れちゃって、戻ってきたんだー。お邪魔しちゃってゴメンね。」

内藤は、ずっとにこにこしていた。
よく、顔の筋肉が引きつらないなとか思う。


「また明日ね。」

ドアの前まで戻って、俺たちに手を振る。
・・・・・ん?

「内藤、鍵持った?」

なにか違和感を感じた俺は、大和の言葉にピンときた。
そうだ。
内藤は、肝心の用事を済ませてない。

「あ、忘れてた!」

・・・・・・・・・どうやら、俺は天然ボケを甘く見ていたらしい。

「あったあった。ホンット、ぬけててやだなぁ・・。」

苦笑しながら、鍵をポケットにしまう。
この勢いだと、家に着いたときには鍵をどこにしまったかも忘れてそうだ。

「じゃあ、今度こそバイバイ。」

ひらひらと手を振って、内藤は教室をあとにした。


「・・なんかさ、」

内藤がさっきまで立っていた辺りを見据えながら、俺は溜息をつく。

「ああ、」

「内藤って、超かわいーのな。」

思わず、苦笑いになる。


「・・弥栄の彼女だからな。」

そんな俺を、大和は無表情で見据えていた。


「・・・俺、勝てる気がしねえわ。」

すごく、気がおちる。
正直、弥栄はいい彼女を見つけたと思う。
・・だから、俺のこんな気持ちは、ただ邪魔になるだけだ。


「・・・・勝たなくても、いいんじゃねぇの。」

ポン、と俺の頭に手をのせ、俺の返事も待たずに、大和は荷物を持って教室から出て行った。










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