play5 欲求
「ッぁ・・た、つやッ、」
薄手の白いTシャツの上から、舌で乳首を愛撫してみる。
すると思っていた以上に、弥栄の口からは甘い嬌声が漏れていた。
それがなんだか嬉しくて、俺は暫くそこを舐めたのち、痛いくらいにその先を吸ってやった。
「っ・・、」
ようやく俺は、そこから唇を剥がす。
俺の唾液で濡れた弥栄のTシャツの部分からは、桃色の乳首が透けていて、ますます俺の理性をおかしくさせていた。
「・・弥栄、」
「痛ッ・・」
これって、夢じゃないのか。
今の俺には、どっちとも判断なんかできやしない。
・・だから、俺が正気に戻ったときに、今弥栄の首筋につけた赤い痕があるかを確かめてみようと思う。
「ンで・・、ばかや、ろー・・」
目じりに、今にもあふれ出しそうな涙を浮かべて、弥栄は俺の目をキッと睨みつけている。
・・そうだよ、・・・・・・なにやってんだよ。
弥栄からしたら、ホントにイミわかんねーよな。
友達だと思ってた奴が、いきなりキスしてきたりして。
オマケに、乳首まで吸っちゃったし。
・・最悪じゃねーか。
「・・悪ぃ・・、」
それしかない。
それしかいえない。
・・・・・謝罪することしか、今の俺にはできない。
今の行為をなかったことにするなんてこと、・・俺にはできねえ。
「・・どけよ、」
弥栄にそう諭され、頷く俺。
・・でも、身体が動かない。
なにやってんだよ。
なんで、動かねーんだよ。
「聞いてンのかよ・・、どけってば・・」
俺の肩の辺りをぐっと押して、引き離そうとする。
・・そして俺は、条件反射に・・そのまま弥栄の上に覆いかぶさった。
弥栄の顔の横に、頭をおとす。
「竜・・、」
「ごめん、俺・・・・」
お前のこと、好きなんだ
・・そう言えたら、どんなに楽だろう。
この苦しいほどに焦がれる気持ちを、お前にぶつけることができたら、どんなに救われるんだろう。
それでも俺は、この先の言葉を続ける事ができないでいた。
「・・・・・・・・・、」
どちらも、声を出さないでいた。
・・出せないでいた。
今、何か発言をしたら、もう前の俺たちに戻れないんじゃないか。
そんな余計なことを考えたりして、なにも喋れないでいた。
――――弥栄は・・?
・・すると、枕元に放りっぱなしにしてあったケータイのバイブが部屋に響いた。
――こんなときに、
・・いや。こんなときだからこそ、ありがたいのかもしれない。
「・・出れば?・・竜也ンだろ、」
俺に押し倒されたまま、手を伸ばして、弥栄が俺のケータイをつかむ。
そして、顔を上げた俺の目の前に、それを突きつけた。
背面ディスプレイには、大和の名前がゆっくりと点滅していた。
「・・サンキュ、」
それを受け取って、弥栄の上から横へと寝転がる。
大和のヤツ。
こんな時間に、一体なんの用だってんだ。
・・しかも、・・やっぱ、こんなときに。
「はいはい、なんの用ですかぁー」
なるべく今の状況を悟られないように、俺はいつも通りの平然とした口調で電話に出た。
『悪い、こんな時間に』
「いーからいーから。俺の心、ロシアの面積より広いし。・・で、なんだよ」
電話の向こうで、大和が一息ついたのが聞こえた。
俺は、なんだかじれったくなる。
「・・?焦らすなや。早く言えって、」
『そっちこそ、急かすなよ。・・なんつーか、』
これ以上、コイツが焦らすつもりなら、電話を切るつもりでいた。
・・でも、ここで通話を切ったら、その後俺は、弥栄にどう接したらいい?
まだ夜は長いのに、六畳一間のこの狭い空間の中で、俺はどうしたらいーんだよ。
それがわかるまで、この電話は切ってはいけない気がした。
「・・大和?」
『・・今夜、泊めてほしいんだけど』
・・・・・・ホント、今夜はどーしたらいい?