← Back || Next →
play7 愛撫



「あー・・と、悪ぃ。もしや、汗くさかったり?じゃなきゃ、香水とか?ちょい待っとけ。今、他の持ってくっから」

一瞬よぎった自我自賛的なものはきれいに受け流して、とりあえず俺は思ったことをそのまま口にしてみる。
実際、大和が俺を好きとか、まず無いと思われる。
てか、こいつは俺が弥栄のこと好きなのもとっくに気づいてるわけだし・・。
それでいて、俺のことを好きな理由もない。

「・・待てよ、」

エセ布団から立ち上がろうとした俺を、あいつは短く・・でも、確実に制した。
その一言に、俺は動きをとめる。

「な、なに・・」

若干、声が上ずってしまったのは、俺がこの状況をうまいこと把握できちゃったからだ。

――この状況。
つまり、順を追って過去を振り返ってみるとだな。
第一に、俺は大和と『取引』してる。
第二に、大和の意味深な発言のナゾ。
第三に、俺の「寝るときは、裸派なんだよ」宣言=現在、ハート柄のトランクスだけが相棒
第四に、・・・俺の隣には弥栄。

・・・・・・・マズイ。
これは、非常にマズイかもしんない。
いや、正直この状況(とくに第四)じゃなきゃ、べつに大和に襲われようが襲おうが(?)かまわねえ。
だけど、さ。やっぱ、好きな奴の目の前でそーゆうことしちゃうってのはどーなの?

・・マズイ。
やっぱ、マズイだろ。


「お前さ。俺の言ってることの意味分かってる?」

相変わらずの無表情で、大和は俺に問いかけた。
そんな真顔で言われても困るって!

「俺、現文の評価2だからムリ!」

ここは、寝る!寝るに限る!!
そう即座に思った俺は、勢いよくエセ布団へと返り咲き、掛け布団代わりのコートをこれまた豪快に被った。
たのむ。今は、やめてくれ。
弥栄の前で、んな破廉恥なことはできません!!

「・・・・・・・・」

・・声が聞こえない。
諦めた、のか?

よかったー・・・・・・・・・・・・。


「・・じゃあ、現分苦手な唐沢くんでも分かるように教えてやるよ、」

いきなり耳元で大和の声が聞こえたかと思ったら、それとほぼ同時に腹の辺りに冷たい掌の感触を感じた。
思わず、叫びそうになる。

「っざけんな、むっつり坊主!」

あくまで小声で悪態をついてみる。
ここで弥栄が起きたら、話にならない。
つか、それはぜってえ避けなきゃダメだろ!

「お前、ネーミングセンスなさすぎ」

後ろから抱きつかれるような体勢で、相変わらず腹の辺りを弄られてて。
生まれて初めて、自分がそんな感度よくなくてよかったと思った瞬間かも。

「うっせえな。なんなら、むっつり王子とでも呼んでやろうか」
「すげえ遠慮する」

そのうち、ゆっくりとあいつの指が上の方へと上ってきて、当然の如く俺の右乳首を摘みやがる。

「・・・・・・」
「感じねえの?」

俺が何も反応せずにいると、ヤツから超直球がとんできた。
てか、もうちょっと遠まわしに言うなりしろって。

「あのなあ。女じゃあるめえし、乳首触られたくらいであはーんな声なんかあげるかよ」

・・なんて、可愛げのないこと言えば引き下がるかと思ったけど。

「・・へえ」

古!
とかそういう反応はどうでもよくて、・・・その。
むっつり王子(仮)の指が、俺の左乳首に移動してきて。
・・・そんで、俺は。

「っぁ・・、」

・・こんな声出しちゃって。
っぁッてなんだ自分。
きもいぞ自分!

・・・・こいつは、俺の唯一の弱点が左胸っつーことを知っててやったのかコノヤロー・・・・。
マジたちわりぃ。

「当たり、」

いつも通りの声色で、耳元でぼそりと呟く大和。
そして、首筋を舐められる。
・・・・・・・このスーパーむっつり野郎が。

「はいはい、おめでとーございます!わかったから、とっとと手ェどけろって・・」

そのまま指先でゆるく撫でられて、当の俺はすっかり駄目男まっしぐら。
これ以上いじられたら、マジむり。
・・・・声、おさえらんない。

「・・お前。他んとこの感度も、全部ココに集中しちゃってんじゃねえの」

左手で自分の口を押さえて、もれそうになる声をどうにかこらえて、右手で大和の手をどけようとするけど、ちっとも力がはいらない。
俺が抵抗する間も、当然大和は愛撫をやめないからだ。

「っ・・やだって、」

コイツ相手に、俺が不利な立場とかマジありえねえ。
てか、許せねえ・・・けど。
どう考えたって、今の俺はコイツに勝てっこない。
こんな声出ちゃうのも大和のせいだし、やけに心臓がドクドクしちゃってるのも大和のせい。
・・・・・弥栄、起きんなよ。
ぜってえ起きんなよ!

「・・なあ。こんな乱れてるお前見たら、弥栄どう思うと思う?」
「知るかよ・・、」

弥栄のこと考えてた直後に言われたから、内心ビビった。
でも、大和の言葉の意味をよくよく考えて、ますますビビる俺がいたり。

「お、お前。まさか弥栄のこと起こしちゃおう作戦とか考えてる!?だったら、相当性格わりぃぞ!」

こんな俺の予感。
・・・・どうか当たってくれるな。










← Back || Next →