リヒャルト・フォン・フォルクマン=レアンダー(Richard Von Volkmann=Leander 1830-1889)
黒い子と金色の王女
童話も文学である以上、その時代の社会の悪や圧迫に対して無関心ではありません。そもそも人類は、抑圧や差別や階級やの、支配被支配の関係において歴史を作ってきました。今日流行りの言葉でいうと、人間は互いに”いじめ”が大好きなのです。子供もまたその例にもれませんし、民話に見られるように、残酷な話を好みます。創作文芸としての童話はしかし、そうした人類の性向に対して、童話の手法によってプロテストを行います。レアンダーのこの作品もまた、その時代の制約の中で、人種差別に対して、童話的解決を図ったものです。歴史的現実は、ここでの主人公の苦難以上であったことでしょう。黒人が白くなることによって人権を回復するという発想は、今日でもマイケル・ジャクソンなどにみられます。作品としてみて、不幸な境遇にある主人公が、遍歴の果てに幸福を見い出すという、童話の典型的なパターンにのっとって、王侯がいれば被差別民がいるという身分差別の対比をからめ、一つの教訓的な物語になっています。今の時代の趣味や、political correctness に反するからといって、童話集から削除するには、あまりにも惜しまれる一つの傑作です。あえて新訳として掲載しました。 |
黒い子と金色の王女 フォルクマン=レアンダー作 昔、ひとりのあわれな黒い子がいました。その子は石炭のようにまっ黒で、しかもその色が本物でなく、色がはげおちていくのでした。晩方には、彼のシャツのえりは、いつでもまっ黒になっていました。そして彼が母親の体をつかむと、衣服に五本の指のあとがつきました。それで、彼女はそんなことにはとてもたえられず、彼が近くにくると、いつでも押しやったり、つきのけたりしたのです。ほかの人の場合には、彼はもっとひどい目にあわされました。 彼が十四歳になったとき、彼の両親は、おまえも自分で食べていける仕事を、なにか学ぶ年になった、と言いました。そこで彼は両親に願いました。ーーぼくを世の中にだして、音楽師にならせてください。ぼくはそのほかのことには、役にたちませんから。 しかし父親は、それは食っていけない芸だよ、と言いました。母親ときては、すっかり腹をたてて、「ばかな子だね、おまえはなにか黒いものにしか、なれないんだよ」と答えるだけでした。 しまいに両親は、彼には煙突掃除人になるのが、いちばんふさわしい、と決めました。そこで両親は、彼を徒弟にするために、親方のところへつれてゆきました。そして彼が黒い子であることを恥じた両親は、彼がどんな様子になるかを見ようとして、さっそく黒く塗ってみたのだ、と言いわけをしました。 そうして、黒い子は煙突掃除人になりましたが、くる日もくる日も、煙突にもぐりこんでいなければなりませんでした。煙突はしばしばとても狭かったので、体がはさまったまま、出られないのではないかと恐れました。しかし彼はいつでも、うまく屋根に戻ることができました。とはいえ、皮膚も髪の毛も、煙突の中に残してきたような気が、たびたびしました。そうして、煙突の上の高いところに座って、ありがたく戸外の空気をすいながら、つばめを頭のまわりに飛びまわらせていると、彼の胸の中は広がってきて、はちきれそうになるのでした。そうすると、彼はほうきをふりまわし、煙突掃除人がそうするならいである、ホォーイードォ!ホォーイードォ!というさけびを、大声であげましたので、道をゆく人たちは立ちどまり、言いました。――「あの真っ黒なちびさんを見てごらん、なんてよい声をしてるんだろう」 徒弟の修業を終えると、親方は彼に、部屋へゆき、体を洗い、上品な良い服を着るよう、命じました。徒弟奉公から自由になり、一人前の職人となれるのです。 その時、あわれな黒い子を強い恐怖がおそいました。「いまこそ、すべてが知れてしまう」と思ったからです。そして、そのとおりになったのです。というのは、彼が一番の晴れ着をきて、親方の部屋にもどったとき、そこにはすでに徒弟たちや職人たちが集まっていましたが、彼はあい変わらずとても黒いままでした。もっとも、煙突の中で黒い色がこすりとられたところだけ、ところどころ白い色がすけて見えていましたが。そこで、みなは驚愕して、彼の事情に気づきました。親方ははっきり言いました。――「おまえは職人にはなれないぞ。まっとうな人間ですらないのだからな。」そして、徒弟たちは彼に襲いかかり、服をはぎとり、彼を中庭に運びました。そこで、懸命にあらがう彼を井戸ポンプの下におしつけ、したたかにポンプの水をかけ、わらくずや砂で彼の体をこすりました。彼らの腕が疲れて、動かなくなるまでです。とうとう、いくら骨折っても、ほとんど色が落ちないのに気づいたとき、彼らはののしりながら、彼を中庭の扉から、外へつきだしました。 さて、彼は道路の真ん中に、たよるものもなく、神さまが作られた姿のままに、このあわれな黒い子は、たたずんでいましたが、これからどうしてよいか分かりませんでした。そこへ偶然に、ある男が通りかかりました。彼を上から下までじろじろと見て、彼が黒人であることに気づいて、言いました。――「わたしは貴族であるが、おまえを従者としてやとおう。ただ馬車の後ろに乗って、立っていさえすればよい。妻と外出するときに、貴族がやって来たことを、人がすぐ見てとれるようにな。」 そこで、黒い子は一も二もなく、彼の従者となりましたが、最初のうちはすべてがうまくいっていました。というのは、その貴族の妻が、彼を気に入ってくれたからです。彼女は彼のそばを通るたびに、彼をなでました。そんなことは、彼のこれまでの人生で、一度もなかったことでした。ところが、ある日のこと、彼らがいつものように馬車に乗って外出し、彼が後ろに乗って立っていたとき、猛烈な嵐が起こり、どしゃぶりとなりました。家に戻ってきたとき、貴族の主人は、馬車の後ろから、黒い水がしたたっているのに気づきました。 そこで彼は、一体どういうことなのかと、きびしく黒い子を責めたてました。黒い子はびっくりぎょうてんして、ほかにましなことが思いつかなかったので、雲が真っ黒でしたので、きっと黒い雨が降ったのでしょう、と答えました。 「ばかばかしい」と貴族の主人は答えました。彼はすでにその原因に気づいていましたので、ハンカチをとりだし、その端をたっぷりと唾でぬらして、それでもって黒い子のひたいをこすりました。ハンカチの端は黒くなりました。 「やはり、考えたとおりだわい」彼は叫びました。「おまえは、本ものの黒人ですらないのだな。これは驚いた発見じゃ。どこかほかのところで雇われるがよい。おまえは用なしじゃ」 そこであわれな黒い子は、泣きながら旅の七つ道具をまとめ、立ち去ろうとしました。そこへ、貴族の男の妻が彼を呼びもどし、こう言いました。――「夫に気づかれてしまったのは、本当に残念なことです。私はずっと前から知っていたのです。もちろん、黒人であることはとても不幸なことです。しかも色の落ちる黒人であることは。しかし、めげてはいけません、勇敢に、誠実にお生きなさい。そうすれば、いつかはほかの人のように、白くなることでしょう。」それから、彼女は一丁のヴァイオリンと、週に一回自分自身を映してみるようにと、鏡を一つ、彼に与えました。 そうして黒い子は世の中に出、音楽師になりました。彼に演奏を教えてくれる師匠を、彼は持ちませんでした。けれども、彼は鳥の歌う声や、木々のさやぐ音や、川のせせらぎに耳をかたむけ、それらの真似をしました。そうするうちに、森の花ばなや、暗い深夜の星たちも、特別の音楽を奏(かな)でていることに気づきました。もっとも、それはとてもかすかであって、だれもが聞きとるわけではありません。それをまねて奏でることは、とても難しいことでした。しかし、その一番難しいものを、彼は最後には、人の心臓が打つように、奏することができるようになりました。それができるまでには、彼はすでにあちこちとたくさんの旅をしてまわり、さまざまなことを体験してきたのです。 そして、彼の放浪の旅において、時には良いこともありましたが、たいていはつらいことばかりでした。晩方に、暗がりの中で、どこかの家の前で立ち止まり、美しい歌を歌って一夜の宿をこうと、人々は泊めてくれましたが、朝になって、彼がどんなに黒いかを知り、色が落ちるような者を泊めたのは、まずかったと気づくと、悪口があびせられたり、平手打ちをくらわされさえしたのです。そんなことがあっても、彼は勇気を失いませんでした。貴族の男の妻が彼に言ったことを思い出し、ヴァイオリンを弾きながら、町から町へ、国から国へと、旅をつづけました。日曜日ごとに、彼は鏡をとりだし、どれくらい肌の色が落ちたかを調べてみました。もちろん、一週間ではたいして落ちはしませんでした。それはとてもがんこな色でしたから。それでも少しは落ちていました。そして五年間も放浪をつづけたのち、体全体に底の色が透いて見えるようになりました。同時に、彼は評判のヴァイオリンの名手となっていました。彼が来るところ、どこでも彼の演奏を聞こうと、老いも若きも、むらがり集まるのでした。 ある日のこと、彼は金色の王女の支配する、見ず知らずの町にやってきました。彼女は金の髪と、金の顔と、金の手足を持っていました。彼女は、金のナイフと、金のフォークで、金の皿から食べ、金色のワインを飲み、黄金の服を着ていました。要するに、彼女の身につけるもの、彼女のまわりにあるものの、すべてが金色でした。そのうえ、彼女はことのほかプライドが高く、尊大でした。そして臣下たちが、女王の政府は長つづきし難いので、王子を婿(むこ)にとるように願っても、どの王子も彼女には、美しさや高貴さが足りないのでした。 毎朝、前の晩に郵便馬車でやって来た、およそ六人の王子が、求婚者として名のりでました。なにしろ、世間では黄金の王女のことと、その美しさで、話がもちきりでしたから。 六人の王子は、順番に彼女の玉座の前に、立たねばなりませんでした。彼女は彼らをあらゆる面からじっくりと見て、最後に毎度のこと、鼻にしわを寄せ、こんなふうに言いました。―― 最初の王子は ぶこつもの 二番目の王子は きたならしい 三番目の王子は はげあたま 四番目の王子は にえきらない 五番目の王子は ぼんやりもの いとわしいのは 六番目の王子 むこ選びはお終い 六人そろって町から追い出しなさい すぐさま、十二人の大男の護衛兵が、身の丈ほどある白樺のむちを持ってあらわれ、全員を町の外へ追い立てました。そんなふうなことが、ここ数年、毎日つづいていました。 黒い子は、この王女がどんなにすばらしく美しいかを、耳にしたとき、ほかの何ごとも考えられなくなってしまいました。彼は彼女の宮殿へ出かけてゆき、階段の段の上にすわり、ヴァイオリンを手にとって、彼の一番すぐれた歌曲を歌いはじめました。たぶん、彼女は窓辺に出てくるだろう、と彼は思いました。そうしたら、彼女を目にすることができるだろうと。 ほどなくして、金色の王女は、三人の腰元に、だれが外でそんなに美しい音楽を奏でているのかを、見てくるように命じました。すると、腰元たちが報告するには、これまでそんなものは見たことがないような、かわった顔の色をした、一人の男であると言います。ひとりの腰元は、ねずみ色と言いますし、もうひとりは、青みがかった灰色と言いますし、三人めの腰元などは、ロバのような灰色と言いました。 そこで王女は、自分の目で確かめねばなるまい、その男をつれてまいれ、と言いました。 そこで、腰元たちはもういちど外へ下りてゆき、彼をつれて戻りました。黒い子は、全身がほんとうに黄金でできていて、太陽のように輝いている、王女を目にしたとき、あまりのまばゆさに、最初は両眼を閉じずにはいられませんでした。それから、勇気を出して、彼女をまじまじと見つめたとき、もうどうしてよいか分からなくなってしまいました。彼は彼女の前に、身を投げうつようにひざまずき、こう言いました。―― 「この上なく美しい、金色の王女さま。あなたは、あなたがご存知ないほどに、美しくていらっしゃる。それをご存知ならば、なおさら百倍も美しくていらっしゃる。私は、どんどん白くなっていく、黒人の子です。そして、私の奏でた歌曲は、まだまだ私の最も美しい歌曲とはいえません。あなたは、どうでも婿を取らないわけにはいきません。私と結婚してくださるなら、こんなに嬉しいことはありません。そしたら、両脚をまっすぐにして、テーブルを跳びこしてみせます。」 これを聞いた王女は、最初いなずまに打たれたように、まのぬけた顔をしました。どんなに美しくても、彼女はそれほど利口ではなかったからです。それから大声で笑い出し、両手で腰を押さえねばならないほど、おかしがりました。三人の腰元たちも、いっしょに笑わねばならないと思いました。そして、十二人の護衛兵が突然入ってきて、黄金の王女の前にだれがひざまずいているかを見てとると、彼らもまた大笑いしましたので、その笑い声は町中に響きわたりました。 そこで黒い子は、非常な恐怖に襲われました。なにか馬鹿なことを言ってしまったことに、はっきり気づいたからです。彼はヴァイオリンをつかむと、扉をいそいで開け、階段を三歩で跳ね下りました。それから、ふりかえることもなく、通りを駆けぬけ、畑を横切って、手近の森へ駆けこみました。森の中で、彼は疲れきって、身を草の上に投げ、涙の中を泳ぐかのように、泣きました。 けれども、しまいに彼は気持が落ちついて、こんなふうに思いました。――御者が酔っぱらっていては、馬も暴走するというものだ。ぼくは賢いのか、それとも馬鹿なのか。黄金の王女と、結婚したいんだって?ぼくは、まったくのばか者だ!人々が、ぼくを笑いものにするのは、不思議でも何でもないじゃないか。 そう思って、彼はふたたびヴァイオリンを背中にしょい、口笛を吹いて、放浪の旅をつづけ、これまでのように、町から町へ、国から国へと、さすらいました。そして、年々彼は白くなってゆきました。人びとも、ますます彼を歓待するようになりました。彼が自らつくった歌曲は、いっそう美しくなってゆき、ヴァイオリンの腕では、彼に並び立つものは、だれもいなかったからです。そして、成長して、大人になったとき、彼は完全に白くなっていて、むしろ、ほかのたいていの人よりも、まじりけのない白さに見えました。彼が以前に黒人であったなどと、だれも信じなかったでしょう。 ある時のことです。ちょうど年の市のおこなわれている田舎町に、彼はやって来ました。彼は赤いカーテンのかけられた小屋を見かけました。そのカーテンは、以前は新しかったものが、いまではぼろぼろで、つぎはぎだらけでした。その前に、まだらの上着をきた粗野な若者が、トランペットを吹いて、こんな口上を叫んでいました。――「みなさん、お入りください。世にも不思議な、見ものでございます。まず、双頭(そうとう)の子牛、これは二つの口で食べ、一つの胃で消化します。つぎに、トランプで占いをし、運命を告げる豚でございます。またつぎに、かの有名な、こよなく美しい、黄金の王女、すべての男が、彼女を得ようと競いあいました。」 「まさか、ぼくの黄金王女ではないだろうな」と彼はつぶやきましたが、念のために、小屋の中に入ってみました。 すると、彼は驚愕のあまり、体が地面に沈みこむような気がしました。それは、ほんとうに彼女だったのです。けれども、黄金はほとんど全身からはがれ落ちて、彼女はただのブリキからできていることを、彼は見てとりました。 「まったく驚いた」彼は叫びました。「君はどうしてこんなところに来たのだ。なんて姿なのだ」 「それがどうしたの」と彼女は、何でもないことのように、答えました。しかし、彼女は考えなおして、彼が以前に、彼女がまだ全身黄金であったころ、彼女を見たことがあるにちがいないと思いました。そこで腹立たしげに、こうつけ足しました。――「人がいつまでも変わらないとでも、思ってるの、あんた、まぬけな伊達(だて)男さん。よけいなお世話というものよ」 そこで、彼はあやうく大声で笑い出すところでした。彼がだれであるか、彼女が見ぬけなかったことが分かったからです。しかし、あまりに気の毒に思われて、「ぼくがだれであるか、まったく分からないのかい」と、小声でたずねました。「ぼくは、君が昔さんざんに笑った、あの黒い子さ。」 こんどは、だまりこんで、恥じるのは、彼女の番でした。そして、しきりにすすり泣きながら、彼女は、最初はところどころが、それからほとんど全身から、黄金がはげ落ちていったしだいを語りました。そのことを、臣下たちに長い間隠していたのですが、とうとう気づかれてしまい、彼女は追放されてしまったのでした。「今では、私は年の市から市へとめぐっています。とても満足しています。あなたが今も、昔のお気持ちでいらっしゃるなら、喜んであなたと結婚いたします。」 それを聞いて、彼はすっかり真顔になり、こう答えました。――「君が心から気の毒だと思いはするけれど、僕はもうじゅうぶんに分別がついたのだ。ブリキのお姫さまと結婚する気にはなれないよ。ぼくは断然、こんどは君よりもずっとましな妻を、えらびたいと思うよ。」そう言って、彼はブリキの王女をあとに残し、小屋を出ました。彼女は腹立ちのあまり、破裂しそうでした。そして彼が出ていくあとに、罵声(ばせい)をあびせつづけました。――「黒い子め、黒い子め、色のはげおちる、石炭みたいに黒い子め!」などなど。けれども、彼女が誰のことを言っているのか、だれにも分かりませんでした。彼はもはや、しみ一つほどの黒い肌を、持っていなかったからです。 ですから、彼は落ちついて、ふり向きもせずに、あゆみ去りました。彼の人生において、二度とふたたび、あのいとわしい女の噂(うわさ)を聞くことがなかったのを、さいわいに思いました。まだしばらくの期間、彼はあい変わらずの放浪生活をつづけました。ほとんど全世界を見てまわり、そろそろ旅回りに疲れてきたころのことです、ある王が彼の演奏の腕前を聞き、彼を招くよう命じました。王の前で、彼は一曲また一曲と、夜がふけるまで歌曲をかなでねばなりませんでした。最後に王は玉座から立ち上がり、彼を抱きしめると、余の最良の友となってはくれぬか、とたずねました。彼が承知すると、王は自身の黄金の馬車に彼を乗せて、町なかを走らせ、一軒の家とたくさんの金銭をさずけましたので、彼は一生困ることがありませんでした。それに、彼は妻をも得ました。王女でも、ましてや全身黄金の王女でもありませんでしたが、黄金の心を持った妻でした。彼女とともに、彼は満ち足りた、誉れ高い生活を送り、長寿をまっとうしました。 ブリキの王女の方はといえば、日に日にみすぼらしくなってゆきました。そして最後に残った黄金のひとかけらが、はがれ落ちると、彼女はあちこちと、したたかに投げまわされ、体中がこぶやへこみだらけになってしまいました。 とうとう彼女は、古物を売る店におさまりました。そこのすみっこで、彼女は今でもなお、いろいろなガラクタやクズの間に、立っています。そしてつれづれに、こんなことを考えています。――人生においては、いろいろなものがはがれおちていく。みにくいものばかりでなく、美しいものも。なにごとでも、大事なのは、その下にあるものだ。 (原題:Der kleine Mohr und die Goldprinzessin) 作品名:黒い子と金色の王女 作者:リヒャルト・フォン・フォルクマン=レアンダー 訳者:脩 海 copyright: shu kai 2016 入力:マリネンコ文学の城 Up: 2016.12,31 |