エッセイ 02

私の設計作法「シンプルにつくる理想の家」

 私は、これまで設計作法といったものをとくに意識したことがありません。
 持って生まれた性格がたまたま建築設計に向いていたのか、自然とそれに従って設計をしてきました。

 与えられた条件の中で全体として最適なものを得るにはどうすればよいかを常に念頭に置いて、仕事をしています。実際の設計において心掛けていることは、細部における無駄や虚飾を省きつつ、全体のバランスをとることです。各段階においては、細部を詰めることと全体のバランスをチェックすることの繰り返しによって、設計の密度(質)を高めていきます。その際、極力すっきりとつくるようにしています。結果としては人目を引くような奇抜なデザインはなかなか出てきません。しかし、ディテールにこだわりながらも、全体としてバランスのとれた、シンプルで合理的なデザインがつくりだせます。

 このような設計の進め方において重要なことは、全体および設計の各段階において何に優先度を置くかにあります。この優先度の置き方が、私の設計作法といえるのかもしれません。以下で基本的な考えを少しお話しいたします。

 まず私は「住宅は住む人のためにつくる」ことが大前提であると考えて、「建て主さんが気持ちよく生活できる家」をつくることを目指しています。
 改めて言うまでもなく、敷地と建て主さんの持つ要件は、すべて同じだとは限りません。従って「建て主さんが気持ちよく生活できる家」とは、建て主さんとのやり取りの中から出てくる個別解を一般解と組み合わせ、私の設計作法によって形にする一品生産の家になります。
 ポイントは、日光や雨、風、眺望など自然環境とのかかわりを大切にし、自然素材を有効に利用して、人間にやさしく建て主家族が自然体で気持ちよく暮らせるプランを創造することです。また外観は、環境との調和を考えて、表情がありながらも主張しすぎることがなく、豊かな街並に貢献できるものを考えます。

 最後に理想の家とは何でしょうか。繰り返しになりますが、「建て主さんの個性が生かせ、人間本来の感性が育まれる上質の家」「建て主さんが満足して気持ちよく生活し、愛着をもって長く住み継いでもらえる家」であると私は考えます。これからも建て主さんとの出会いごとの「理想の家」を追求していきたいと考えています。

(家づくりニュース2006年9月号掲載)

Essay 03 「日々想々:花や木々、そして、いけばな」


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