耳鳴・難聴

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症例報告 


[1]耳鳴り
1,耳鳴りとは。
通常はほとんどの人が耳鳴りを経験している。そのうちで長期間持続して自覚しているのは10%であり、そのうち煩わしく思い、治療を考えているのが約10%であるといわれている。
耳鳴りは症状であり疾患ではない。背後には難聴を伴った耳の疾患を持つ場合が多い。心理的要因を持つ患者も少なくない。耳鳴りの診察には要因となっているストレスや疾患を把握することが重要である。
外来において耳鳴りの患者は5〜8%であるとわれている。正常な人を対象としたアンケートでは12%で耳鳴りがあり、潜在的患者は以外に多い。性差では一般に男性が多く、高齢になると女性が多いという傾向が見られる。年齢別では50歳代が最も多い。一側性耳鳴り全体の約70%で伝音性難聴がみられ、両側性は約30%で感音性難聴がみられる。難聴との合併では感音性難聴の35〜38%に耳鳴りが併発し。突発性難聴やメニエール病では併発率は90%となり高い。伝音性難聴では耳鳴りは17〜38%と低いが鼓膜穿孔例や頭部外傷例に多い。聴力型では高温漸減型難聴で頻度が高いといわれている。
2,分類   症状からの分類
(1)自覚的耳鳴り=通常の耳鳴りで、患者本人しか自覚しない。
@難聴を伴う耳鳴り
・伝音性耳鳴り・・・慢性中耳炎、耳硬化症などの中耳疾患に見られる。中耳伝音機構の障害により、外来音がその特性にあった共振周波数によって発振する。主に中低周波の耳鳴りが起こる。慢性中耳炎で20〜30%で耳鳴りがあり、手術で約30%の割合で症状が消失する。耳硬化症では80%で耳鳴りがあり、手術で50%で症状が消失または軽減するといわれている。
・内耳性耳鳴り・・・内耳障害に伴う耳鳴りである。
・中枢性耳鳴り・・・蝸牛神経より中枢に起因する耳鳴り。頭部外傷後の54%、聴神経腫瘍の8%で耳鳴り合併する。
A無難聴耳鳴り・・・原因不明のことが多い。自発的耳音響反射(SOAE)である例もある。
(2)他覚的耳鳴り〜他人にも聞こえる耳鳴り。
筋性耳鳴り・・・耳管周囲と軟口蓋に関与する筋肉のミオクローヌスが原因、1分間20〜600回の頻度とされている。筋緊張が亢進している状態なので精神安定剤、抗痙攣薬が有効である。

血管性耳鳴り・・・心拍に同調する耳鳴り、頚動脈の圧迫で消失。

自発性耳音響放射(SOAE)  1978年に発見された。
内耳の自発的音響現象、成人の約50〜70%でみられるといわれている。内耳外有毛細胞の配列の不規則性に起因していると考えられている。耳鳴り患者SOAEに起因する蝸牛機構系の耳鳴りは4%と少ない。SOAEが原因とするには耳鳴りを遮断するとSOAEが消失すること、耳鳴りのピッチとSOAE周波数が相関するか否かを検討することが必要となる。
(3)老人性難聴
約25%で耳鳴りを認める。耳鳴りのなかで最も多いのは感音性難聴にともなうものである。発生メカニズムは不明であるが、現在聴覚路の神経に自発放電の増減があり、その変化が異常と認識され、耳鳴りになると考えられている。
3,現代医学的治療
(1)手術・・・耳鳴りの治療もその原因を追究し、治療することが原則である。中耳手術により耳鳴りむが改善することが確認されている。
 特発性顔面痙攣での耳鳴りはICAなどの血管による顔面神経の圧迫が原因であるため、同部位の減荷術を施術すれば改善することが期待できる。人口内耳埋め込み術をおこなった例では術前に耳鳴りがあった患者80%に消失もしくは軽減が認められたという報告がある。これらの例は原因疾患の手術治療に随伴した効果であり、耳鳴りを対象としたものではない。
 耳鳴りを対象して手術で特殊な例であるが、アブミ骨筋腱切断術がある。これは顔面神経麻痺後のアブミ骨筋異常収縮に伴う耳鳴りに有効である。
(2)薬物治療
・内服薬・・・内耳障害の改善を目的としたもの
        ビタミンB、循環改善薬、ステロイド剤
耳鳴りの抑制効果を狙っているもの
筋弛緩剤、抗不安薬、抗うつ薬、抗てんかん薬、睡眠薬
これらを症状、病態に応じて組み合わせる。
・内服薬以外の方法
塩酸リドカインの静脈内投与・・・聴覚路における神経放電を減少させるといわれている。抑制率80%
ステロイド鼓室注入療法・・・・突発性難聴、メニエール病で用いられる。
(3)理学療法
耳鳴マスカー療法・・・外来音によって耳鳴りが遮断されることを利用したものマスカーと呼ばれる専用の耳鳴遮断装置を用いて、設定された遮断音を与える。
遮断音の条件
・耳鳴りに対して快適である。
・長時間聴取しても疲れない。
・音として自覚されない。
・無意味音である。
TRT(Tinnitis Restraining Therapy)法
耳鳴マスカー療法に支持的カウリングを組み合わせたもの、改善率は40〜80%といわれている。
プロモントリウム電気刺激法
人口内耳埋め込み術の適応を決定するために行う聴覚検査であるが、この検査によって耳鳴りが軽減されることからがみとめられ治療に用いられるようになった。聴神経に伝わった電気信号が求心性の信号を抑制するためといわれており、その効果は30〜70%といわれている。
(4)心理療法
耳鳴りに悩む患者の中には6.3%の頻度でなんらかの心身医学的異常があるといわれている。関係のある精神疾患としては神経症、心気症、賠償神経症、慢性耳鳴りにともなう不安抑うつ反応、詐病などがある。
適応される技法として、簡易精神療法が用いられる。
症状軽減的精神療法ね支持的精神療法の2つがある。
精神疾患があきらかでない耳鳴りであっても、重症例では臨床心理士、ケースワーカー、精神科医と連携して治療に当たるべきである。

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