MARKの部屋視覚や色と 動物の行動を話題にします

2.植物の色

植物の色素体・液胞について

 植物の色素は既に説明したように、液胞と葉緑体に起因します。この葉緑体は色素体(プラスチド)といわれるものの一種で、色素体は、葉緑体とその変形細胞器官の一群を指した総称です。色素体はそれ自身がDNAを持ち、このゲノム中に葉緑体タンパク質をコード化した遺伝子が存在しています。但し、大部分のタンパク質の遺伝コードは細胞核遺伝子にコードされており、分裂等は細胞核に制御されています。動物の場合、ミトコンドリア遺伝子は母系遺伝をしますが、陸上植物の色素体DNAも母性遺伝をし、このため花粉精細胞は色素体をもたない事が多いようです。植物細胞中の色素体には、光合成を行う葉緑体(クロロフィルを持つことからクロロプラストと呼ばれる)、果実や花弁の細胞にあり大量のカロテノイドを合成・蓄積し、黄色から赤色を呈する有色体(クロモプラスト)、根冠や貯蔵器官の細胞にあり、色素持たず、デンプン等の合成と蓄積を行う白色体(ロプラスト:デンプンを蓄積するものはアミロプラスト)、脂肪酸を合成する色素体(エライオプラスト)等があります。色素体は植物の組織や器官の分化に応じてさまざまに変化する能力をもち、前記の各タイプ間で変化する事が可能です。たとえば、トマトや唐辛子などは緑色の果実であったのが成熟して赤く色が変わりますが、これは葉緑体が有色体に変わりカロチノイドを合成したためです。なおデンプンは光合成を行う葉緑体で作られます。またすべての色素体はアミノ酸や脂肪酸の合成、さらにクロロフィルなどの前駆体の合成の場としても働いているようです。
 なお葉緑体のチラコイド膜上には光化学系やATP合成酵素などのタンパク質が方向性をもって配列されるとともに、ストロマにはカルビン・ベンソン回路を構成する各種の可溶性酵素が存在し、CO2の同化が行われます。またストロマ中にはときおりデンプン顆粒がみられますが、これは一時的な貯蔵で、最終的にはアミロプラストに運ばれます。
 液胞はフラボノイドなどの二次代謝物などを保持していますが、液胞は植物細胞体積の大きな割合を占めます。また液胞内には無機イオン、糖類、酵素、有機酸などの可溶性物質が含まれ、物質の貯蔵庫や浸透圧調整を担っています。浸透圧に関与する物質が液胞に水を引き込み、液胞が大きくなる事で細胞壁に対して圧力(膨圧)を加えます。これにより植物はしおれる事なく形を維持しています。

 花の色は前記のように表皮細胞の液胞と有色体の色素により表現されていますが、花には匂いもあります。この匂い物質も表皮細胞の色素体で基本物質がつくられ、それが細胞内器官で修飾される事で作られています。また必要に応じて液胞に貯蔵されます。

 


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