哲学の名著を読む/ 『プロタゴラス』 / 『方法序説』

哲学の名著を読む

哲学の名著を読む、では、主に哲学で名著と言われる本、あるいは名著であろう本を読んだ感想をご紹介いたします。

 『プロタゴラス』を読んで  2015年11月14日公開

『プロタゴラス』という本を読んで、最も感動した場所は以下のところである。 『プロタゴラス』によれば、徳とは、知恵、正義、勇気、敬虔、節制(分別)の5つのようです。そしてその逆が、無知、不正、臆病、不敬虔、放埓の5つです。プロタゴラスとソクラテスの違いに勇気が挙げられます。プロタゴラスは世には並はずれて不敬虔、不正、放埓、無知な人間でありながら、ただ勇気だけはとくに衆にぬきんでているというような人々がいると言っています。それにたいしてソクラテスは、勇気がある人々というものは、恐れをいだく場合があるとしても、醜い恐れ方をするようなことはなく、向こうみずになるときも、その向こうみずは決して醜くない、これの反対の臆病な人々にしても、蛮勇を発揮する人々にしても、気の違った人々にしても、そうした連中の恐怖や向こうみずは醜いものではありませんか、しかるに、醜悪な向こうみずさを発揮するというのは、ほかでもない、愚かさと無知のしからしめるところではありませんか、とこたえています。もちろん、これ以外にも感動したところはあるがやはり一番はここである。ところで『プロタゴラス』はプラトンの初期篇であり、ソクラテスの思想であろう。
 *『プロタゴラス―ソフィストたち―』(プラトン著、藤沢令夫訳、岩波書店)を読んだ感想です。

『方法序説』を読んで  2019年7月9日公開

『方法序説』は、一般の人に向けて書かれたもので著者名なしで出版された哲学入門書といっていいものである。『方法序説』とは、「理性をよく導き、もろもろの学問において真理を求めるための方法についての序説」という意味のようだ。内容は平易であり、しかもページ数が少ない(岩波文庫版(谷川多佳子(訳))なら103ページ)。そのため読書に時間もかからず、きっと途中で挫折する人はいないのではないかと思われるものである。第6部まであるのでこの6部を心の余裕を持ってしっかり理解できるように2週間〜3週間くらいで読むようにすればいいのではないだろうか。重要だと思うところは、忘れないように、書いたり、線を引いたり等をして見直せるようにしておくことをお勧めする。哲学書を読んだことがない人で、哲学書は難しそうだとか、挫折するのではという人には、最適な本である。
  哲学史においてルネ・デカルトは、現在の科学技術文明を基礎づけた近代哲学の父(=創建者)とされている。つまり合理論(知性、理性によって認識が生じる)の哲学者とされている。そのためデカルトの「我思うゆえに我あり」の「思う」は、「考える」ことだという意見があるのだが、デカルトの著作(方法序説ではわからないので、例えば、『哲学原理』(桂寿一(訳) 岩波書店 1964年 P49)を読んでみれば、実際の「思う」は「考える」だけではなく「感じる」ことも含まれているのがデカルトの「思う」なのであることがわかる。しかし哲学史は「思う」=「考える」だとして近代哲学の父(=創建者)つまり合理論の哲学者として紹介しているわけである。
  一部、(『方法序説』(谷川多佳子(訳) 岩波書店)を読んでとても気になったところがあったので2つほど引用しておく。
 
 
  われわれの道徳が退廃してくると、自分の信じることをすべて言おうとする人はほとんどいなくなるし、そればかりか、多くの人は自分が何を信じているのか自分でも分らなくなるからである。人があることを信じる思考の働きは、それを信じていると認識する働きとは異なっていて、この両者(信じる思考の働きと信じていると認識する働きの両つのこと)は互いにもう一方を伴わないことがたびたびあるからだ。(『方法序説』(谷川多佳子(訳) 岩波書店P35L7〜から引用。)
 
 
  現在、こうした基礎と出発点をもつ近代思想全般に対しては、見直しと批判の機運が高まっている。デカルト哲学を祖とする近代思想の超克や解体、あるいは脱構築が問題となり、さらには科学技術文明の弊害、たとえば環境問題や自然破壊、はては医療への不信倫理の不在までも、デカルト主義をその思想基盤とする見方さえある。こうした諸問題に解決や出口を見いだすことは容易ではない。絶望的といえるかもしれない。が、そのような状況のなかに置かれたわたしたちにとって、デカルト自身が語ったことや希求したことを、ここでもう一度直接に読み直してみるのも、無駄ではないと思う。(『方法序説』(谷川多佳子(訳) 岩波書店 解説内のP135L14〜から引用。)
 
 
  *方法序説において私(この文章の作者)がデカルトの意見に対していくつかのところで同意できないところがあり、それに対しては反論があるが、ここでは理由があって省略することにした。
 
 
  *『方法序説』(谷川多佳子(訳) 岩波書店)を読んだ感想です。

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