活動レポート2007

活動レポートです 

2007年のレポートです

2007年8月1日(水)、特定非営利法人ピースコミュニケーション研究所(以下、PCI)が主催、神奈川県教育委員会と社団法人かながわ民間教育協会が後援、合資会社マネジメント・ブレイン・アソシエイツが協力する第一回教師サポートセミナーが「きゅりあん」(東京都品川区)を会場として実施された。 ピースコミュニケーション研究所は、人類の相互理解を深めることを通じ世界平和を実現することを目的とした設立されたNPO法人で、今回のセミナーは教育の最前線で活躍する教師のコミュニケーション技術の向上をはかるため企画されたもの。 『学習塾の実践から学ぶ保護者対応術』と題された本セミナーで取り上げられたテーマは、現在、大きな社会問題ともなっている教師と保護者との関係だ。 「モンスターペアレント」など、保護者からの理不尽なクレームが増加した背景には、教師と保護者の信頼関係の欠如、コミュニケーション不足があると指摘される。本セミナーでは、その改善策として、長年、市場競争にさらされ保護者との良好な関係を模索してきた学習塾での実践的な保護者対応術が紹介された。 セミナーには、現職の小中学校の先生だけでなく、将来の教師を目指す教育学部の学生などが多数参加。時事的な話題ということもあって参加者の間で白熱した議論が交わされ、実り多い時間が流れていくこととなった。

やる気を引き出す授業術02

特定非営利活動法人ピースコミュニケーション研究所(以下、PCI)が主催する第二回教師サポートセミナー『学習塾の実践から学ぶ、やる気を引き出す授業術』が、10月20日(土)に催された。 今回のセミナーは、教育の最前線で活躍する学校の先生方の授業力向上をはかるために企画されたもので、9月29日(土)、10月20日(土)、11月10日(土)の3回連続シリーズで実施されている。

1回目の9月29日のテーマは、「生徒のやる気を引き出す授業パフォーマンス」。はじめにPCI理事長である中土井鉄信氏が教壇に立ち、授業の本質、教師としての心構え、さらに「学校型授業」と「学習塾型授業」の比較などを披露。後半では、主任研究員の井上郁夫氏を講師とし、授業中の話し方、生徒への視線の振り方などのプレゼンテーション・スキルがワークショップ形式で研究された。

学校でも、学習塾でも、生徒の「分かった!」という笑顔が、教師にとっての最大の喜びであることに変わりはない。しかし、学習塾と学校の間には、不幸にも相互交流が妨げられてきた経緯があり、学習塾で培われた授業ノウハウが学校の先生方に伝えられる機会は少なかった。今回のセミナーは、この垣根を取り払い、学習塾で培われた授業ノウハウを学校の先生方に紹介し、日々の授業を行ううえでのヒントにしてもらうことを主眼としている。

さて、10月20日(土)の第2回目のセミナーのテーマは「生徒の興味・関心を引き出す授業展開」。 セミナーでは、 「授業の導入方法とは?」 「わかり易い授業とは?」 「面白い授業と可笑しい授業の違い」 など、熱心な教師なら誰もが関心のあるテーマを講師である井上郁夫氏が熱を帯びた口調で、次から次へ具体的な事例を交え説明していった。

その中で特に、印象に残った点を簡単にご紹介しよう。井上氏によれば、わかりやすい授業とは、多くの視点から説明ができている授業である。それと言うのも、すべての生徒に分かってもらえる万能な教え方はないからだ。なぜなら、生徒それぞれで興味・関心が違うため、ある教え方がA君にとってはわかりやすいものであっても、その隣に座る記憶の仕方が違うBさんには理解しづらいものとなってしまうケースがあるためだ。NLP(神経言語プログラミング)の理論によれば、人間の記憶には、 「視覚型」「聴覚型」「体感型」の3つのタイプがある。そして、それぞれのタイプにより、効果的な教え方は違っている。たとえば、視覚型の生徒には図や表などを多用したチャート型の授業が有効だし、一方、聴覚タイプでは、教師の言葉による説明が理解度を高めるキーとなるという具合だ。また、体感覚型では「実験」「観察」などが有効な教え方となる。実際の教室にはこれら3つのタイプの生徒が混在しているため、「視覚型」「聴覚型」「体感覚型」のどのタイプの生徒にも理解しやすいよう、複数の視点から説明ができるスキルが教師には求められているのである。

ワークショップでは、既習事項を振り返りながら、知的好奇心を刺激し、かつ将来に向けての学習意欲を引き出す授業方法の事例として、台形の面積を求める授業方法が受講者の間で話し合われた。 台形の面線を求める公式は「(上底+下底)×高さ÷2」だが、これ以外にも、台形を三角形と平行四辺形に分けたり、複数の三角形に分けたりしても解が求められるのはご存知だろう。この図形を分割したり、移動をさせる方法は、将来、生徒たちが学ぶ多角形でも使え、生徒の応用の範囲が広がるきっかけ作りになるなどの意見が活発に出された。

セミナーの後半では、大手学習塾で教師をしていたPCI主任研究員荒木崇氏による国語の模擬授業を公開。 普段は教師である受講者が生徒役となり進められ、「童心にかえったよ」と眼を細める先生がいたのが印象的であった。頻繁にコミュニケーションをとる学習塾ならではの授業方法を、身をもって体感できたようだ。 受講者は、教育学部の学生、小学校の先生、中学校の先生、学習塾の先生と、多彩な面々。年齢は20代前半から50代まで。「教育」という同じ目標に向かいながらも年齢や立場を異にするそれぞれの受講者が、互いに刺激し合っていたのも収穫の一つであった。

やる気を引き出す授業術03

「こんにちは。お元気でしたか?」 「お久しぶりです。最近、学校の行事が多く忙しくてね‥」 「そう言えば、A先生、今回は模擬授業をやる日でしたよね」 「いやー、プレッシャーかけないで下さいよ。これでも緊張しているんですから(笑)」 NPO法人ピースコミュニケーション研究所が主催する第二回教師サポートセミナー『学習塾の実践から学ぶ、やる気を引き出す授業術』の開催も、今回で3回目。最初は、ぎこちなかった参加者同士、参加者とスタッフの関係も、9月29日(土)、10月20日(土)と2回のセミナーを経験していることもあって、今ではすっかりと打ち解けた雰囲気が会場全体を包んでいる。

3回連続シリーズの最終日ともなったこの日(11月10日)のテーマは、 「達成感のある授業構成」。 初めての参加者がいたこともあり、セミナーの冒頭は恒例ともなっている自己紹介から。初々しい教師志望の大学生が、自己紹介を兼ね教育への熱い思いを語ってくれた。それを傍らで聞く、受講者であるベテランの先生が目を細めているのが印象的だ。もしかしたら、若々しい教師への夢に、過ぎ去った日の自分の姿を重ねあわせているのかもしれない。 自己紹介が終わると、3回連続で講師を務めるピースコミュニケーション研究所主任研究員の井上郁夫氏が、前回の復習のポイントを説明した。授業における導入の狙いや、分かりやすい授業のポイント、有意味化の大切さ、等々‥。

そして、教壇に立ったのが、生徒からの人気が高い現役の学習塾講師だ。 この模擬授業が、本日のセミナーの目玉企画の一つだ。 テンポの良い授業展開、生徒への発問の多さ、教壇を所狭しと動き回るダイナミックな動き‥‥。そして、教科の本質をシンプルな言葉で、生徒に分かりやすく伝える教材研究の的確さ。誰もが認めるプロ教師の授業が、そこにはあった。 普段は先生である受講者の姿勢が、次第に前のめりになっていくのが分かる。 模擬授業が終わると、受講者から矢継ぎ早やに質問がとんだ。 「学力の低い生徒を授業に引き込む秘訣は?」 「教材研究で利用しているテキストは?」 「発問で工夫している点は?」 やがて時間が訪れ質問は打ち切られた。しかし、休み時間中も、学習塾講師を中心にして円を囲むようにして授業での課題を話し合う受講者の姿が見られた。主催者の一人としてこのセミナーを開いて本当によかったと実感した瞬間だった。

休憩終了後、教壇に立ったのは、ピースコミュニケーション研究所理事長の中土井鉄信氏だ。前半の学習塾講師による模擬授業を受けるかたちで、学習塾の授業の秘訣を一つひとつ解きほぐしていく。 中土井氏は、学習塾の本質的な役割として 「生徒のセルフ・エステーム(自己重要感・自己有能感)を高める」ことを挙げた後、受講者の多くが悩みをもつ低学力の生徒への発問のノウハウを紹介した。 「多くの先生が試していると思いますが、私も低学力の生徒には、できるだけ答えやすい発問をするよう心がけてきました。ただし、答えやすい質問だけでは、教師の意図が生徒に見えてしまうので、三回に一回くらいは通常の発問をします。とにかく、どんなに勉強ができない生徒であっても頻繁に授業中に発問をし、成功体験を積み重ねてもらうことが大切なんです。たとえ、それが『できる』という錯覚であっても良い。『できる』という実感を生徒が持てないことは、その生徒は、もう一つ先のステップへと進めませんから」 また、高学力の生徒に対しては時にはその生徒の自信を揺さぶるような発問も有効だ、と言う。 発問は、とかく受け身になりがちな生徒を能動的に授業に参加させるのに有効な手段。また、発問によって、自分で気づいたことは教師から教わったことよりも記憶に残りやすいという利点をもっている。

9月29日にはじまった第二回教師サポートセミナーもいよいよ大詰めとなった。この日のセミナーの最後プログラムは、受講者代表による模擬授業の発表。 代表となったA先生は、英語のベテラン教師であるものの、受講者が同じ教師であるということもあって少々緊張気味。 しかし、持ち前の話術とパフォーマンス、絶妙な発問で、受講者が引き込まれる間に、アッという間に20分ほどの模擬授業の時間は過ぎていった。 先生の挨拶が終わると、会場からは一斉の大拍手。 模擬授業を担当したA先生が、「やっと調子に乗ってきたのですが‥」と語ると、会場は大爆笑の渦! 笑顔の内に、第二回教師サポートセミナーは幕を閉じた。 それぞれの受講者の皆様が勤務する、小学校、中学校、高校の現場で、「先生分かったよ!」という子供たちの笑顔が花開くことを祈って。

受講していただいた先生方、本当にありがとうございました。 また後援をしていただいた 神奈川県教育委員会、埼玉県教育委員会、横浜市教育委員会、 社団法人かながわ民間教育協会の皆様、 本当にありがとうございました。 協賛していただいた 財団法人日本児童教育振興財団の皆様、 本当にありがとうございました。 来年も、NPO法人ピースコミュニケーション研究所では 今回と同様の教師サポートセミナーを開催する予定です。 どうぞ、皆様方、今後ともよろしくお願い申し上げます。