鍼 灸 治 療

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灸治療  総 論  目 次  鍼灸師の役割 


鍼治療
[1]考え方
@どのような選手に対して
A何を目的に
Bいつ
Cどこで治療するのか
状況によって治療法、治療に対する考え方が違ってくる。
スポーツ分野の鍼治療で考慮する事項
1,誰を治療するのか
@スポーツマンA健康人B障害者C病人
2,目的はなにか。
@傷害の治療A傷害の予防Bコンディションの調整C競技力の向上
3,誰とするのか
@医師Aコーチ、監督BトレーナーCその他
4,いつするか
@競技前A競技中B競技後C中間日
5,どこでするのか
@スポーツ現場A治療院B大学Cその他
[2]注意事項
(1)競技特有の動作を知ること
野球の投球動作やランニングのフォームといったスポーツ特有の動作を知ることが、発症原因を知るうえでも重要である。主訴の部位ばかりに目を奪われないようにする。
(2)競技者のレベルを知ること
健康の保持・増進を目的としたスポーツで傷害を起こした場合は、スポーツを中止して治療に専念させるが、トップアスリートの場合は鍼治療で痛みを鎮めながら練習を続けさせる場合がある。
(3)年齢・性別
発育期の子供では脊椎分離症、オスグット病などの骨の障害が考えられるので、練習の中止を念頭にいれながら治療するかどうか判断する。
中高年では退行性変化が進んでいるとことを考えて鍼治療にあたる。
女性では月経前症候群など性周期と愁訴が関連している場合があるので、性周期を念頭に入れて病状を把握する。
(4)練習
パフォーマンスの維持、向上のため常に練習を続けようと考えている。このことからスポーツの現場への復帰時期、練習をどこまでやっていいのかなど、練習の虚得条件を含めて指導していくことが必要となってくる。オーバーユースによる障害では、練習と痛みの関係を詳細に聴取する。
(5)鎮痛だけでよいのか
スポーツ選手は痛みを訴えながらもスポーツを続ける場合が多いため、鎮痛を目的とした鍼治療が選手にとってよいかどうか考えて治療しなければならない。次のようなケースは専門医の判断が必要である。
@ある程度効果があっても、1週間、1ヵ月と長い目でみると悪化している。
A一度治っても同一部位に繰り返し痛みを訴える。
B明白な筋委縮、筋力低下がみられる。
Cめまい、吐き気、発熱などの症状がみられる。
D関節部に熱感と腫脹がある。
(6)医師、指導者との連携
スポーツ選手を治療していく場合、診断、治療に際しては医師。練習計画ついては指導者との連携が必要となってくる。
[3]目的
1,スポーツ外傷の治療
(1)捻挫、肉離れなどの外傷の初期はRICE処置を優先させる。
鍼治療は疼痛の緩解や腫脹の早期回復に用いる。
復帰までの段階的リハビリテーションプログラムを作成し、物理療法、運動療法を含めた鍼治療を実施する。
例 前十字靱帯損傷の術後の鍼治療
@関節可動域の拡大
A筋力強化による疲労の早期回復
Bトレーニングにより誘発される痛みの緩解
を目的とする。
(2)鍼治療
急性期  局所に熱感がある場合=局所の刺鍼は避ける。
腫脹部=腫脹部を囲むように浅鍼で置鍼する。
関節部の鎮痛(捻挫など)=関節局所に刺鍼して100HZで15分間、低周波鍼通電療法を行う。
肉離れ=受傷した筋が収縮する程度1HZ15分間の低周波鍼通電療法をおこなう。筋収縮により痛みを伴う場合は置鍼術。
2.慢性スポーツ障害の治療
(1)オーバーユースによる慢性の障害が対象となる。(ジャンパー膝、テニス肘など)
鎮痛を目的とする。(痛みを訴える部位の治療)
痛みの起こる原因となるフォームやアラメントなどを考慮した治療計画を立てる。
練習前のストレッチング、練習後のアイシングを指示する。
(2)鍼治療
障害された部位へ、1HZ15分間の低周波鍼通電療法を行うとともに、スポーツ動作をバイオメカニクス的見地から観察して障害の要因となっている部位への治療を併せて実施する。練習後の鍼治療はアイシングの後に行う。
3,スポーツ外傷、障害の予防
(1)練習量の増加、試合が連続する場合
全身の疲労の早期回復を目的とした治療
障害の起こしやすい部位(自覚症状が出現する前)をあらかじめ治療をしておく。
                          ↓
選手の全身を観察し、障害をかばうことにより発生する二次的障害も考慮して治療にあたる。
(2)鍼治療
全身の疲労・・・脊柱筋起立筋の緊張や背部の兪穴などの圧痛部に置鍼や雀啄を行う。
障害を起こしやすい部位・・・筋緊張の状態や関節の可能性をチェックして治療部位を選択する。
4,コンデションの調整
(1)体調を良好に維持し、練習メニューをこなし、最高のコンデションで試合に挑むこと         
                          ↓
             試合で結果を出すために重要なことである。
日頃からメディカルチェックを行う。
オーバートレーニングに陥らないように注意する。
鍼治療の目的  @疲労回復 
A食欲、睡眠、便通など全身状態を良好に保つ。
(2)鍼治療
@関節の柔軟性や筋緊張を観察しながら適時単鍼術、軽い雀啄術を行う。
A運動により誘発された筋疲労の早期回復
疲労した筋に対して30〜60HZで筋が軽く収縮する程度の強度で15分間低周波鍼通電療法を行う。
B食欲不振、不眠、便秘など
臓腑経絡を考慮して、治療部位を選択する。
5,競技力の向上
(1)疲労回復を早め、より高度な練習メニューをこなせるようにすること。
(2)鍼治療
競技特性を重視する。
競技特有の動きと選手のアラメントを考え、専門競技を行う際効率のよい動きが発揮できるような視点で治療法を決める。単鍼術を中心に短時間で行う。
[3]治療の時期
1,競技前の治療
・刺激量に注意し、治療後に違和感が残らないように注意する。
・疼痛により競技に支障のある選手に対しては刺激量を気にするあまり、消極的治療にならないように注意する。鍼治療により競技中のパフォーマンスを落とさないようにすることが重要。治療後はウォーミングアップしてから競技に参加させる。
2,競技中の治療
@試合のハーフタイムなどに治療できる場合
試合中に生じた痛みや違和感が残っている部位に単鍼術や軽い雀啄術を実施、その後軽擦を中心とした軽いマッサージをする。
A運動時痛が強い場合
疼痛部に円皮鍼を貼付し、競技に参加させる場合がある。その際鍼の違和感が無いことを確認する。
3,競技後の治療
@オーバーコースによる障害
競技終了直後にアイシングを行い、その後鍼治療をおこなう。
A翌日の筋疲労の予防
競技でよく使った筋や背部の脊柱起立筋を中心に治療を行う。
4,中間日の治療
傷害に対する治療を中心に行う。傷害の程度によっては練習を休ませ、治療に専念させて次の試合日程に合わせた治療計画を立てる。
[4]スポーツ外傷、障害の鍼治療
1,問診・検査   病歴聴取、現症の観察
問診事項 @スポーツ歴、ポジション A練習量、質、頻度 Bグランド状況、用具
現症の観察 @静的な観察と動的観察 Aミクロな視点とマクロな視点
競技と治療の時期 @競技前A競技中B競技後C中間日
                           ↓
治療法の選択
治療の目的 @スポーツ外傷の治療Aスポーツ障害の治療Bスポーツ外傷、障害の予防Cコンデションの調整D競技力の向上
刺鍼部位の選択 @解剖生理学A臓腑経絡B障害部Cバイオメカニクス
鍼治療法(術式) @置鍼法、雀啄術A運動鍼B円皮鍼、皮内鍼C低周波鍼通電療法(筋パルス、神経パルス、関節パルスなど)
                           ↓
決定 @疼痛部の病態に応じた治療A疼痛の誘因の治療B疼痛誘発姿勢での治療
(1)ミクロの目・マクロの目
ミクロの目=障害部位を詳細に観察する。
マクロの目=全身の動きから障害部位を観察する。
例腰痛の場合
ミクロの目=選手の訴える腰痛の部位の筋緊張の状態、圧痛、などの観察。
       X-RAY、MRIによる画像診断から原因となる病態を把握すること。
マクロの目=なぜその障害、傷害が発症したのか、症状がなぜその部位のみに起こるのか、なぜ症状が憎悪するときと軽減するときがあるのか。選手のスポーツ動作やアラメントなどの全身状態を観察しながら主訴の原因を観察する目である
(2)静的な観察・動的な観察
@静的な観察・・・ベットサイドでの一般的観察
A動的な観察・・・痛みが起こる動作を行わせて痛みがなぜ起こるのか、疼痛部位の場所をバイオメカニクス的観点から観察する。
MRIやX-RAYなどの画像診断の多くは動き伴わない静的な構造の観察であるため、病態と痛みの程度が必ずしも一致するとは限らない。痛みを誘発する動きを伴う機能的な観察が重要である。
(3)刺鍼部位の選択
治療部位を選択する上で
・愁訴の部位を中心とした観察 ・動きを伴った動的な全体的観察を行うことが重要である。
@解剖、生理学的選択・・・原因を解剖、生理学的立場から判断、治療点を選択する。
例関節の障害=主動筋を考慮する。  
神経根症状=障害された脊椎の高位レベル、ワレーの圧痛点
A臓腑経絡による選択・・・体調が良くない、食欲が無い、よく眠れないなどのオーバートレーニングによる訴えに対して臓腑経絡によって経穴を選択する。
B障害された局所・・・障害された局所の圧痛、凝り、硬結、発赤、腫脹している部位が治療点となる。
Cバイオメカニクス的選択・・・ランニングや投球フォームなどを観察し、愁訴がどのように発生するのか、選手の身体的特性を考えながら、バイオメカニクス的見地から治療部位を決める。
(4)術式 @置鍼、雀啄など・・・凝り、硬結などの部位に刺入させ、鍼自体に感じる抵抗感やひびきを観察しながら筋緊張などの障害を改善する。例としては脊椎分離症の場合、分離部の周囲の循環を改善するために分離部の近傍に刺入してひびきを目安に雀啄術を行う。腫脹部については皮下や筋膜に達する程度の深度で10〜15分置鍼を実施する。
A運動鍼・・・疼痛が強くなる姿勢をとらせ、最も痛みが強く感じる部分を示してもらい。同部位に刺入して軽い雀啄術を行う。または同部分に置鍼をして押手で鍼を固定し、そのまま除々に障害された関節を動かす。腰痛の後屈痛や肩関節の深部の痛みにたいして直後効果がみられる。例としては腰痛で体幹部の後屈痛がある時ね立位で痛みが強くなる姿勢を取ってもらい、疼痛がある部位に置鍼してゆっくりと前後屈を行わせる。
B円皮鍼、皮内鍼・・・疼痛局所に貼付、そのまま運動を行う。貼付したあと痛みがないか確認する。コンタクトプレーを行う競技の選手の練習には不適応である。感染には注意を充分にする。
C低周波鍼通電療法・・・低周波鍼通電装置を用いた方法である。
[使用法]ステンレス鍼、ディスポーサブル鍼を使用する。
鍼は3番(0.2mm)以上を使用し、長さは目的とする部位までの深度による。
[治療点]経穴にこだわらず筋、神経などを治療目的により選択する。刺入した鍼を電極として使用するため、2本以上の鍼を使用する。陰極は主要な刺激導子となる。
[周波数]筋緊張の緩和を目的にするときは1〜3Hz、腱付着部炎など30〜50Hz、疼痛が限局している関節部100Hz
[刺激の仕方]通常連続波を使用する。30Hz以上の周波数では連続通電に休止時間を挟んだ断続波を用いる。
[電流の強さ]筋緊張の緩和、神経刺激・・痛みが伴わず筋がリズミカルに収縮する程度
30〜50Hzの場合・・筋が持続的に収縮する強さ。
100Hzの場合・・刺入部位に刺激を感じる程度
[時間]15分程度。鍼麻酔などは30分間。
[5]低周波鍼通電療法の具体例
@筋緊張に対する治療(筋パルス)
目的・・・筋・筋膜性腰痛などの筋性の要素の強い疾患に対して筋緊張の緩和を目指す。
刺入部位・・・緊張した筋の筋膜に刺入、これを(-)極とする。筋の中で最も疼痛の強い部位に刺入しこれを(+)とする。
刺入深度・・・筋に達する程度
周波数、通電時間・・・1Hz 15分間
電流量・・・筋収縮を認めること。刺鍼部位に痛み(チクチク、ズキンズキン)がないこと
注意事項・・・治療法を変える場合。
障害部に熱感があり、拍動性の痛みがある。
触診するだけで身体をねじるような痛みがある。
A上下肢痛などの神経症状に対するもの(神経パルス)
目的・・・変形性頸椎症、腰椎椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛などの神経根症状がある時、神経近位部に鍼を刺入する。
刺入部位・・・障害された神経根の近位部と痺れを訴える部位の神経経路の近位部に刺入する。極性の選択基準は障害された神経の支配筋が収縮するか否かで決定する。
周波数・通電時間・・・1Hz 15分間
電流量・・・神経支配領域の筋が収縮する程度。
B筋疲労・腱炎の痛み
目的・・・遅発性筋痛ねアキレス腱炎などに腱付着部の痛みに対しての消炎と鎮痛を目的に行う。
刺入部位・・・疼痛部(+)と筋腹(−)に刺入。腱や筋が持続的に収縮のを認める。
周波数・通電・・・30〜50Hz  10〜15分間。連続時間に休止時間がある断続波を用いる。
電流量・・・腱の持続的収縮が触知される程度
C関節局所の痛み、腫脹の軽減(関節パルス)
目的・・・捻挫などにより熱感、腫脹のある部位に消炎鎮痛を治療目的とする。
刺入部位・・・関節部の圧痛点、熱感、腫脹のある部位を挟むように刺入、極性にはこだわらない。
周波数・通電時間・・・100Hz  15分間
電流量・・・ジーンとする刺激を感じる程度。筋の収縮はみられなくててよい。
注意事項・・・熱感が強い場合はRICE処置を優先する。
[6]腰点
@スポーツ動作をさせ、疼痛部を正確に把握する。
A主訴の要因と原因をバイオメカニクス的見地から全体的に観察する。
B練習の時期による影響を考える。
C主訴部位を確認、筋緊張緩和、消炎鎮痛などの病状に合った治療を行う。
D全体的観察から得られた所見にもとづき、次の治療を行う。
E治療後症状の増強姿勢をとらせ、痛みの症状が残存しているときは疼痛部に運動鍼を行う。
F運動鍼実施後も痛みが残存している時は、円皮鍼の施術を考える。