灸 治 療

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目次  総 論  鍼灸師の役割  鍼治療 

1,目的 
(1)外傷の治療  
急性期・・・RICE処置との併用により、腫脹の早期回復、疼痛緩和を目的として実施する。
慢性障害・・・循環の改善による疼痛の軽減(特に膝、肘関節に効果あり)
(2)障害の予防
筋疲労の早期回復、寒冷期のシンストプリント、アキレス腱炎などの予防に用いる
(3)コンデションの調整
筋緊張によるのぼせ、胃腸の不具合などの全身調整、冷え症予防、下痢、便秘、不眠などの不定愁訴の改善、体調を整える。
2,スポーツ領域の灸治療
施灸部位、刺激量を考慮し、また障害の種類、程度、試合の時期などを考えて治療を行う。
(1)施灸部位
①局所治療・・・競技で使われる主要な筋肉、靱帯の起始・停止部、中央部の経穴や圧痛点に施灸する。
②全身治療・・・疲労感に伴い、圧痛が生じやすい部分、全身の力の中心となる腰部、腹部に施灸する。
(2)刺激量の調節・・・有痕灸、無痕灸の選択
選手の体調、体質、灸の経験、競技前後、季節などを考慮して実施する。
有痕灸・・・半米粒大3~5壮  3~5ヵ所
無痕灸・・・施灸部位が必ず温かく感じるまで行う。
*刺激量過多にならないようにする。
(3)灸の種類
①有痕灸・・皮膚に直接施灸する方法。有瘢痕灸、直接灸ともいう。代表的なものとして透熱灸、焦熱灸、打膿灸がある。基本操作が大切である。
・透熱灸・・・良質もぐさを用いて艾柱をひねり、体表上で燃焼させることにより温熱性侵害刺激を与える。熱刺激時間が短く、最高温度が比較的たかくなるのが特徴で局所の温熱刺激とともに、神経反射による遠隔部の血管拡張に用いられる。艾柱は大きければ大きいほど温度上昇が高く、燃焼時間も長くなる。もぐさの質、艾柱のひねりの強さ、送風の加減によって燃焼温度に変化がでる。
[適応]
灸単独、鍼治療との併用するのによい。多くの疾患、障害に用いることができる。特に関節部、筋付着部などのオーバーユースによる慢性的障害に効果がある。
[注意事項]
線香による熱傷に注意する。多壮灸を行う場合、同一部位に実施し灸痕を大きくしない。
・焦灼灸・・・施灸部位の皮膚組織を焦がして破壊する。
[適応] 鶏眼、胼胝などに直接または反復して行う。
[注意事項]
組織の炭化、壊死、脱落、瘢痕が生じることを事前に十分に説明する。承諾を得てから治療を行う。
(2)無痕灸・・皮膚に灸痕を残さない方法で関節灸、温灸ともいう。知熱灸、温筒灸、艾条灸(棒灸)、薬物灸などの多くの手法がある。様々な温灸器具を用いる方法も無痕灸に含まれる。
・知熱灸・・・透熱灸とおなじ方法を用いるが、温熱を感じたときに艾柱を取り除くか消火する。局所赤斑が生じるまで行う。
[適応]局所に加温した場合や、女性や子供、体力のないものなど有痕灸が適さない場合に用いる。
[注意事項]選手に施灸前に温感を感じたらすぐに合図してもらうように説明してから実施する。大きな艾炷を用いる場合には熱傷が大きくなるので注意する。
・温筒灸・・・市販されている灸に多く見られるタイプ。3~10mmの艾炷を筒形の台で支え、燃焼時には艾炷と皮膚の間に空気層をつくり、乾燥刺激を与える。台座灸もここに含まれる。
[適応]関節部、筋腱付着部などの過度使用による慢性的な障害や圧痛部軽減に効果がある。選手自身で行なえるように指示して使用するのに適している。
[注意事項]熱感が強い場合すぐに取り除く。貼り直しがきく場合は場所をずらす。事前に熱さを我慢しないように選手に伝えておく。取り外すときに指のやけどに注意する。十分に筒の温度が下がってから取り外す。
・隔物灸・・・皮膚ともぐさの間に生姜、、にんにく、味噌、塩などを置き、温熱や間に入れたものの成分による作用を期待する。
[適応]知熱灸の効果とともに、介在物の成分の効果も期待できるため、消化器系の疾患などにも応用されている。
[注意事項]低温での加熱時間が長くなるので、低温熱傷に注意する。加熱によって介在物の水分温度が急上昇し、熱傷を起こさせることがあるので温感を感じた時に取り除くこと。
・棒灸・・・もぐさまたはもぐさと生薬を練り合わせたものを円柱状に巻いた棒艾を用いる。施術者が施術部位を炙るように使用する。熱源である棒灸を移動し、温熱の強弱、刺激時間を自由に操作できるのが特徴である。
[適応]①関節部、筋腱付着部の過度の使用による慢性的な障害 ②筋疲労の回復 ③冷えの軽減など。    
[注意事項]灰が落ちることがあるので熱傷や衣類の燃焼に注意する。煙が多く、目がしみることがある。事前に熱さを我慢しないようにいっておく。
・灸頭鍼・・・置鍼した鍼の鍼柄に丸く艾球をつけ、火を点火かする。鍼刺激と灸の燃焼による輻射熱の2つの効果を与えることができる。
[適応]多くは腰背部に用い、腰痛、神経痛、婦人病に用いられる。鍼、灸の併用として好まれる方法である。
[注意事項]最も火傷事故を起こしやすいので、細心の注意が必要である。燃焼灸が落下する原因として艾球の緩さ、不純物の混入による燃焼の艾球の艾球の割れ、患者の体動などの不意なことによる燃焼灸の落下、火傷が起こるので常に監視しておく必要がある。置鍼する鍼も十分に艾球を支える太さを選び、鍼体と鍼柄が熱に強いステンレス製カシメ止めのものを選ぶ。
3,灸治療の注意事項
熱傷などの副作用を完全に防ぐことは不可能である。季節や体調の変化で温熱の反応は変化するので、選手にはそのことをよく理解してもらい、感覚の違いを早く気付いてもらうことが重要である。選手自身に灸を指示する場合には、灸の方法のみならず、注意事項の説明を行うことが必要である。
①熱傷・・・[対処法]熱傷を生じさせた場合、すぐに水や氷で冷やす。水ぶくれは潰さず化膿しないように注意し、熱傷の程度によっては医療機関を受診させる。
[予防法]施灸中は患者から離れないようにする。温灸や灸点紙を使用し、施灸しても熱傷が生じる可能性があることを説明し、事前に熱さを我慢しないように伝えておく。施灸前後の入浴、赤外線などの温熱刺激の併用は低温やけどの原因となるので避ける。皮膚に汗などの水分があると水疱を生じやすいのでよくふき取ってから施灸する。
②化膿・・・[対処法]化膿した灸痕には施灸しない。灸痕が隆起したり、化膿が治癒しにくい場合医療機関を受診させる。
[予防法]施灸後消毒を十分に実施する。水疱が破れやすい部位は絆創膏などを貼って灸痕を保護する。グランドなどの不衛生な場所で皮膚に直接触れる施灸は行わない。灸痕を掻きむしらないように説明する。練習、入浴後は消毒するよう指示する。
③灸あたり・・・[対処法]施灸中や施灸後に灸あたりを生じた場合、しばらく安静をとる。施灸後しばらくして症状がてた場合は数時間ないし1~2日で自然消失することを説明する。症状によっては医療機関を受診させる。
[予防法]患者の治療歴、体調、感受性にあった治療を行う。初めて施灸する場合や久しぶりに治療を再開する場合などは刺激量を減らし、そのご随時増やしていく。
④その他の注意事項
急性の炎症(特に局所に熱感があるもの)には施灸しない。
糖尿病などの温度感覚が低下している疾患、アレルギー性皮膚炎のように全身的な疾患を考慮して施灸を実施する。
トレーニングウェアなどのような化学繊維は火がつきやすいので、衣類を焦がさないように注意する。
完全に消火して廃棄する。火を扱うので火の始末には十分に注意する。