29.アンプ入れ替え


AU−α607NRAの音。

 長岡先生は良く「散乱するサウンド」という言い方をしたが、そんな感じ。きらめくサウンドだ。
 1音、1音の質が高く、美しい。
 しかもS/Nが良い。今まで、こんなにノイズがあったんだ。
 ディスクに含まれるノイズだ、と思っていたものまで無くなってしまった。
 プリメインアンプのノイズなんて、”解決済み課題”のように思っていたのに。
 楽器の質感もよくわかる。木の音、金属の音、皮の音。
 ボリュームを上げても、音がうるさくならない。甲高くならない。
 シカゴ響の弦が、たとえようも無く美しい。キラキラ、サラサラ。清澄な泉の水、または小川の澄み切った水のような感触だ。
 低音部の音程がよくわかる。いままでは、「(低音が)出てるな」という感じだっが、よりくっきりと「聞こえる・感じられる」ようになった。
 実際の音楽でも、低音の音程がよくわかるようになった。
 これがピュアオーディオアンプの音なんだ!これでやっとシステム全体でピュアオーディオを称する事ができるのでは?
 今までは、現システムにはフルレンジスピーカーの、高音域の荒さがあるのではないか、という懸念を持っていたのだが、それも一掃されたのでは?
 総じて、トータルの音質は格段に良くなったと断言できる。
 テストCDのスィープ音も、今までは、ぼやーっと始まっていた低い方の音がくっきりと聞こえる。
 20Hzまでは出ていないようだ。(出ていないのもくっきりわかる)25Hzか30Hzかわからないが、そのあたりからは、はっきりと出ている。
 10,000Hz以上になると、このテストCDのスィープ音は、俺の耳では聞こえない。昔、テストLPでテストしていたときは、もう少々上まで聞こえていたような気がするが、残念だ。
 現システムでは、下の再生限界は仮に25Hzとすると、上のほうは指向性を考えて30000Hz、25×30000=750000となり、鉄男先生の80万説に近くなる。

改めて、AU−α607NRAの音。
 AU−α607NRAは、スケジュールどおりに届いた。万一トラブルがあるといけない。平日ではあったが、すぐにPMA940Vと入れ替えて、音を出した。
 ムーティ・フィラデルフィアのCDで「イタリア」だ。出だししか聴く時間が無い。
 お、ヤケにきれいな弦だな。よし、今日はこれで終わり。
 その後、いろいろ、じっくり聞いてみると、やっぱり格段に音は良かった。今まで使っていたアンプとは値段も製造年代も違うから違ってあたりまえ。比較するのは間違い。
 いままでお世話になったアンプに気の毒なので、比較は書かない。以下は、比較ではありません。
 AU−α607NRAになってからのある日、ジュリーニ・ニューフィルハーモニアのベートーヴェン田園(外盤LP)、某指揮者・ベルリンフィルのベートーヴェン7番(70年代録音、国内盤CD)を聞いた。
 NRAにしてからは、ノイズが減り、分解能が上がり、フォルテでもうるさくならず、質感(木か、皮か、金属か、など)が良くわかるようになった。すると今までわからなかったことが聴こえるようになってきた。
 実際、ヘッドフォンで聞いてもノイズがうんと減ったのがわかる。80年代以降のアンプでは、ノイズの問題なんて解決済みだろうと思っていたが、ちがったようだ。
 ジュリーニの田園は良かった。NPOの華やかな高弦を楽しめた。69年録音だからマルチマイク録音の可能性が高いのだろうが、ワンポイント的な音。渾然一体。音は、左右の違いはわかるが、基本的に中央から聞こえてくる感じで、自然。ホール後方・中央で聴いているよう。
 BPOは、はっきりマルチマイク録音という感じ。ほとんどの楽器が近くで鳴っている。左右の分離が良すぎる。わざとクギってある感じ。しかも、たとえばフォルテッシモで「もっと響いても良さそうだが」「もっと(音量が)伸びても良さそうだが」・・・ところが、伸びない、響かない、というところがあり、リミッターが強力に掛かっている感じ。安いステレオで聴くには、こういう方が聴きやすいかも。あと、ソロパートの音が直接音主体で、ホールの響きが感じられなくなる、というところもあった。ジュリーニの場合、直接音と間接音の比率はいつでも一定に近い感じ。
 低弦は十分なボリュームがあって、これがドイツ風の重厚さか、と思うが、超低音はカットしてあるような感じ。超低音(元々あったとして)が入っていて喜ぶのはオーディオマニアだけ(?)で、ミニコンポやケイタイプレーヤでは邪魔になるだろうから、大きなマーケット向けにはこの方が、聴きやすいだろう。(アンプを変えてからこんな事までわかるようになってしまった)まだ片付いてない・・・
 演奏は第2楽章まではオーケー。これが有名指揮者だと納得しながら聴く。しかし第4楽章はテンポが速すぎて私にはメロディーも響きも味わえない・・・。
 マルチマイク録音の場合、音の出方と、間接音の響きの相関関係が変動している場合があることが、今回わかった。最新技術でワンポイント録音をしてあれば、臨場感のある音質になるのではないか?テラークがそれに近いはずだが、NRAにしてからまだ聞いていない。しかもCDしか持っていない。でも楽しみだ。
 ところで、昔使っていたAU−707だが、これこそ製造年代がAU−α607NRAとはかけ離れている。カタログで語られている回路もぜんぜん違うし、607シリーズの新製品が出るたびに「音の傾向が変わった」とか評価されてきたんじゃないのか?当然、別のアンプ、別の音、のはずである・・・。
 まあ、使っているスピーカーも、部屋も、カートリッジのスタイラスも違う。
 しかし、AU−707で当時聴いたレコードを今、聴いてみると、今までより昔と似た傾向を感じるのだ。
 やっぱり、AU−α607NRAにして良かった。 
 
 そのうち、秋になったので、カートリッジをDL−103に変えた。
山室英美子を聴いたら、音がくっきりしていてMCらしかった。スピードと、細かい音はMK3の方が出てるかもしれない。しかし、しばらく103を聴いていると、これに慣れてしまう。
 ジュリーニ・シカゴのシューベルト交響曲第9番を聴いた。やっぱりクッキリ、はっきりしていて、立体感がある。これもいいなあ。すごくいい。アンプを変えたので違いがはっきり出るようになった感じ。
 MC入力の音の良さがわかりました。今までよりね。
(2012/10)


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