28.アンプ選びを楽しむ
昨年から少しずつ、小遣いを貯めていたら、6万円くらいは使えるようになって来た。
そこで、懸案であったアンプの買い替えが出来る事になった。なにしろ、今のアンプはハイファイオーディオ用と言えるものかどうか。重さも10Kgしか無いのだ。しかし、85年製にしてはちゃんと音が出るのは立派。さすがDENON。
昔、オーディオ少年だった頃に最初に買ったのはヤマハのレシーバーCR−700。(その前はナショナルのラジオ)
これはローズウッドのキャビに入った、ステキなレシーバー(チューナーつきアンプ)だった。今、あらためて画像を見ると、懐かしさに胸がいっぱいになる。すばらしいデザインだったなあ。
しかし、数年使っていたら、音がおかしくなった。ヤマハの人に来てもらったら、パワートランジスタの腐食だといって修理(部品交換)してくれた。
排気ガスなどでやられるとの事だった。
また数年使っていたら同じ症状が出た。そこで、CR−700はあきらめた。
次に購入したアンプは、サンスイの名機AU−707だ。これは良かった。オーケストラの空気感、奥行きと広がりを感じることが出来た。すばらしい。
しかし、数年立つと、ヤマハと同じ症状が・・・。そこでおれは山水電気の本社にアンプの持ち込み修理をしに行った。
当時のオレの家(実家)は東京都世田谷区松原1丁目、山水電気本社のあった杉並区和泉 2-14-1には歩いていける距離だったのだ。 山水電気跡地
オーディオに興味の無い子供の頃から、あそこに山水電気があるのは知っていた。社屋の裏にグラウンドがあり、日曜などは当然そこでキャッチボールをしたりして遊んでいたからだ。
あのあたり一帯は付近の子供にとっては、遊び、それも探検系の遊びに行く目的地だったのだ。付近には神田川、本願寺、荒地に畑(肥溜めもあったし、落ちた奴もいる)があった。
特にその荒地は、中央に丘のような高地があり、戦争ごっこには好適だったし、雨でぬかるむと底なし沼のようになり、足が沈んで靴をなくしたり、本当に冒険できる場所であった。
また、本願寺の墓地は高台にあって、その荒地を見下ろせたが、崖の角が足場が悪くて、母親と散歩に行ったとき、崖が崩れそうになって危なかった記憶がある。 神田川だって、中に入ってしまう子供も居たっけ。(今ではその荒地も、畑も杉並区の小学校、都立ろう学校になってしまった。学校2つができるほど広かったんだ)
また、明治大学和泉校舎、グラウンド、体育会系の寮もあった。明治大学のキャンパスも子供にとっては遊び場の1つ。当時は自由に出入りできた。「自由に入れる広い場所」は子供にとっては全部遊び場だったのだ。
そこで野球をやっていたら、整列して稽古していた空手部のお兄さんの頭にボールが当たってしまったが、稽古中なので痛いとも言わず、反応もしなかったので、あまり怖いとも思わなかったっけ。ごめんなさい。
明大の寮もいまは鉄筋コンクリのきれいな建物のようだが、昔は平屋の家作で、裸電球、部屋には洗濯物がつるしてある、という感じだったっけ。当時は「どういう人たちが住んでいるのかな」と思っていた。
オレたちは周辺を小さい自転車で走り回りながら山水電気の社屋を見て、「あれが本社なんだぜ。ぼろっちいなあ」なんて言ってる奴も居た。当時の子供としては、大手企業の本社は山手線の内側地帯にあるものだと、思っていたのだろう。
玉川上水公園(当時は今と違う作りだった。もっと野性的)の先の下り坂を下っていくと、平屋か2階建ての民家しかなかったので、山水電気の社屋とグラウンド、神田川ののどかな風景がすぐに見えたのだ。いまや高層マンションに囲まれ、山水があった土地に建っているヤマト運輸でさえ、屋上の看板しか見えない。もはや、心の中だけにある「田園風景」みたいなものとなってしまった。
山水電気の本社受付にはお姉さんが2人くらい居て、修理を頼んだ。直ったという連絡を受けて行ったら、中年のおじさんがいそいそとアンプを抱えて出てきて、トランジスターが壊れていたので交換しました、と言った。楽しそうだった。オーディオが好きなんだよ、という雰囲気を感じたっけ。
しかし、数年後にまたも同じ症状が出てしまった。おれはもういやになった。
山水とヤマハのアンプはすぐに壊れるんだな、と思った。
同時期に購入した輸入盤のジュリーニ・LSOのベートーヴェン第9がひどい盤質でノイズが大きく、聞けたものじゃなかったのも災いした。
その頃のオレは運動不足解消のためテニスを始めて、面白くなっていたし、パソコンプログラミングも始めた頃なので、オーディオへの興味は急速に薄らいでしまった。PMA840Vを購入したのも、秋葉原の店頭展示品を「これでいいや」という軽い感じで、そう「ちゃんと音が出れば良いです」という感じで買ったのだった。
以後、音楽鑑賞とオーディオからは、ほぼ足を洗ってしまったのだった。
しかし、今から考えるとあの70年代は公害の時代。排ガス規制も甘いものだったろう。
実家は甲州街道と井の頭通りに程近い、排気ガスのたっぷりある場所。ちょっと歩けば環七だ。しかも自宅は木造の古―い家だったのでスキマ風だらけだったけ。
ヤマハや山水のせいではなく、環境のせいだったのかもしれない。
しかし、今やまた時代はめぐってきた。現行システムでは、アンプが弱い。
最初はPMA-1500シリーズの新品を買おうと思った。やっぱり新品ですよ、新品。
しかし、高いなあ、やっぱり。うん?リモコン付き?あっ、ボリュームにモーターがついていてリモコンで回せるのか。居間のミニコンポと同じだな。リモコンは使ってないし、無くしちゃったけどな。リモコンを使うなんぞは邪道じゃないか。CDプレーヤのリモコンだけはとっておくんだった。邪道だと思っていて、無くしてしまった。もともとCDはデジタルなんだから・・・。
うん?DENONのアンプにはマイコンストップモードがある?アンプにマイコンか。MC用トランスどころの騒ぎじゃないな。
長岡師は、アナログを聴く際はデジタル機器は電源を切れと言っているのに・・・。おれもそう思う。
だんだん冷めてきたところに、ネット上では、ピュアオーディオアンプは1985年ピーク説、95年ピーク説があるのに気づいた。いずれもその年代がピュアオーディオ製品の品質のピークだったから、その頃の中古アンプを購入するのを勧めている。まあ修理系のサイトだったりすると、そう言いたくなるような気もするが・・・。
もちろん、新しいほど技術が進み、音も良くなっているという説もいっぱい出ている。こっちの方がずっと多い。・・・主流だろう。
しかし、マイコン内蔵、モーター内蔵というのは好みに合わないなあ。使わないものにお金を払うのはあかん。
見かけだけで中古アンプを選んじゃうと、85年どころではなくなってしまう。デンオンPMA-700Z、トリオKA−9300、サンスイAU-9500だあ!これらは素晴らしい存在感だと思うが、本当にヴィンテージの分野になってしまいそうだ。
候補選び
とにかく、購入候補はいくつかに絞られた。全部中古だ。安いからね。デノンPMA2000シリーズ、サンスイAUα607MR、NRA、NRAU、マランツPM-17SA (Ver.2)このくらいだ。
CR-700の縁でヤマハはどうなの?と思ったのだが、CA-1000の美しい時代は遠く過ぎ去り、中古で出てるのは20Kg超級の美しくない製品ばかり。対象外。
デノンPMA2000シリーズは今使っているアンプと同じメーカーだし、耐久性がありそうだ。しかし、デカい。重い。20Kgを超えるとラックや周辺機器への負荷が心配だ。それに年代が新しいとけっこう高い。敬遠。
マランツPM-17SAは、デザインがおしゃれでそそる。大きさ、重さも手ごろ。と、思ったが、幅が広すぎて、今のラックにそのままでは入らないではないか。サーモメーターはかっこいいが、音質的なメリットは何も無いのではないか?却下となった。
サンスイAUα607シリーズはPMA2000よりは小柄だ。ラックにもむりなく入る。音はよさそうだ。もしイマイチの音だったとしても、あきらめがつきそうだ。昔から縁のあるサンスイだし、日本オーディオ史を読んでますます気持ちが傾いてきた。その頃、山水電気民事再生申請のニュースが流れたが、別に関係ない。しかし、年式は新しいほうが修理の心配は少なくなるだろう。かといってNRAUは、中古でも高い。プリアンプ用の別トランスは良いかもしれないが、高能率スピーカーを小さめの部屋で鳴らすのに、そんなに電源に負担が掛かるとは思えない。
そのうちにハイファイ堂のAU−α607NRAの値段が5000円下がった。これはチャンスだな。タバコ臭くないことを祈って、購入手続きをとった。ではまた。