43.京都旅行と名曲喫茶・柳月堂
再就職内定してから勤務開始まで3か月くらい猶予ができたが、いよいよ勤務開始が近くなってから京都に行きたくなった。琵琶湖から歩いて京都市内・東山に入るコースだ。家族の了解を得、8月7日の朝、ひとりで出発した。
1日目は、石山坂本線の三井寺(みいでら)駅を降り、旧東海道や疏水を蹴上まで歩いた。
暑くて、疲れた。夜、ホテルに入り、近所のスーパーで買ったおろしとんかつ弁当を食べ、死んだように寝てしまった。
翌日は北野天満宮にお参りしてお守りをいだたき、千本今出川の「金時」で大福を買い、それから柳月堂に行った。すでに14;:00を過ぎていたな。
近くには「LUSH LIFE」というジャズ喫茶もある。オープンしたての店に見えたが、後で調べたら大変な歴史のある店だった。しかし、時間がなく、入らなかった。
柳月堂には入口ドアの前に小さいテーブルがあったので、荷物をまとめ、上着を着て店に入った。店員さんに、「音を聞くのはこちらですか」と言ったら「リスニングルームですね」と言って入れてくれた。特別、説明はなかった。音を聴きに来た客だと察したようだった。リスニングルームは広く、近現代のオーケストラがかかっていた。最初の印象は「やわらかい音」だ。最近はあまり聴いた記憶のない種類の音。
お客さんはいなかったので、真ん中の一番よさそうなソファーに座った。写真で見た通りのセクトラルホーンがあった。ウーファーは30cmかそれ以上の2発駆動バスレフのようだ。中低域重視の、オーケストラむきの音作りのようだった。
臨場感があり、少なくとも横の定位が抜群で楽器(演奏者)が横に並んで演奏しているようだった。我が家の、右壁に極端に近接した配置では到底出せそうもない臨場感だ。奥行についてもよさそうだったが、もっと聴きこまないとわからない感じ。
大型のホーンシステムは音がバラバラになるのではないかという先入観があったが、ここの音はそんな事はない。この臨場感、定位感は素晴らしいと思った。
ぜいたくな環境だ。
LP演奏だったが、スタイラスや盤面に問題のあるような音ではなかった。
ウインナコーヒーを注文したときに、「リクエストもできます、後ろの席でお願いします」と言われた。「時間制限とかありますか」と聞いたら、「制限はありません。いつまでいていただいてもだいじょうぶです」と言われたので、長くはいられないのだが、とても安心した。
あらためて室内を見回すと、正面にグランドピアノ、ぬいぐるみ、あちこちに昔のスピーカーやラジオ、キャビネット、置物などが置いてあり、吸音は十分だろう。部屋自体が演奏会場のようなシューボックス型!になっている。ソファー周りは、人が歩くと床がけっこう沈む感じだが、オーディオの置いてある床はしっかりしているようだった。あと、前方正面と左右の耳の高さに発泡スチロールと思われる吸音材を配置している。しかも右側は横に、左側は縦にセット。これはかなりヒアリングを重ねてセットしたものじゃないかと思う。1~2時間ではこの部屋、装置の実力はわからん気がした。
ウインナコーヒーはクリームが別についてくるタイプ。しかし、コーヒーの底には砂糖がなかったので、角砂糖を2個入れて飲んだ。昔、荒神橋口で飲んだウインナコーヒーはまったく砂糖を加えてなかったっけ。
しばらくして2~3人のお客さんが来たが、どうも常連さんっぽい人は後ろの席を好むような感じだった。
次の曲はピアノ曲だったが、ハミングが聞こえたのでもしやと思ったが、グールドだった。リクエスト席の近くにプレーヤが置いてあり、ジャケットも置いてあった。
リクエストコーナーには、書き物、本のページをめくる音、メガネを置く音、カバンのファスナーを開け閉めする音、上着や靴を脱がない、など注意するように書いてあった。
せっかくなので、リクエストをしてみた。リクエスト用の席があり、案内と注意事項が書いてある。音を立てないようにという注意もここに書いてある。そのときはチャイコフスキーの「くるみ割り人形」!を聴きたかったのだ。しかし、不案内で探すのに時間かかりそうだったのでベートーヴェンの交響曲第4番、クレンペラー・フィルハーモニアにした。
その音だが、やはり中低域重視の感じで、やわらかく、俺などのシステムでは感じるフィルハーモニアの弦の明るさはあまりない。そのかわり低弦はよく聴こえる。動きが鮮明、という感じだ。演奏のゆったりしたテンポとあいまってドイツ的な重厚さ、というやつか。
そのあと、バッハのコラール第80番がかかったが、ソプラノなど、目の前に立って歌っているような感じがした。
柳月堂さんの音について、後でネットを探してみたらマニアや業界の方々の評価は高くないようだった。まあ、誰でも自分の音が良いと言いたくなるし、耳も慣れてるからね。しかし、あれだけの広い部屋で大型のシステムで鳴らす音をゆったり聴ける空間は素晴らしいの一言だ。
「ライオン」とは異なり、スピーカー~リスナーの空間に障害物もないし。
あと、正面にかかっているのは、ベートヴェンのライフマスクだな。デスマスクと誤解してる人もいるようだ。
14:30くらいから16:00までいて、京都駅に向かった。会計をしたら、「次回の~にお使いください」とか言われた気がしたが、なくしてしまったようだ。
いっそのこと、2日間ここに通えばよかったと思ったが、後の祭りだった。
今回は再就職活動中の生活パターンが丸出しになってしまった。要するに、お金を倹約して、時間を使う、というものだ。しかし、京都2日間だったら、お金を使って時間を倹約すべきだった。あと、計画性と準備も足りなかった。体力は使ったが、経験にはあまりならなかった。それでも、琵琶湖~東山までとにかく歩けたことと、柳月堂に行けたことはよかった。ただし、後で調べたら京都には他にも名曲喫茶やジャズ系喫茶などが多くあることがわかった。
(2018・10)
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