パニック障害は近年ようやく、メディアやあらゆる媒体でも紹介されたり、社会的にも認知されつつある心の症状の一つです。
以下はこのホームページに書く許可を頂いたある男性クライアントのお話です。皆さんの中にもこれに似たような心当たりのある方も沢山いらっしゃるのではないでしょうか?
ある時、その男性は会社帰りに急に立ち眩んだ感じがしたと思ったら突然、足や手が痺れてきて、なぜか呼吸ができなくなり、吐き気がしてきて息苦しくなり、更に心臓の鼓動がどんどん早くなってきて最後は歩けなくなり、道路にしゃがみこんで必死に救急車を呼んだそうです。
それ以来、その場所やそこに似ている場所や繁華街、人混み、電車、広い場所、狭い場所、閉鎖的な空間で逃げ場のない場所で不安感がどんどん生まれてきては発作を繰り返すようになっていきました。
その事について少しでも考えると、例えば朝の通勤時「今日は大丈夫かな?気分悪くなったらどうしよう。」などと考えると、それが予期不安となり、手足がしびれてきて後は雪だるま式にどんどん我慢できなくなり、駅のトイレに逃げ込んだり、途中の駅で降りてしまったりの繰返しになり、気が付いたらJRの各駅停車の一駅乗ることでさえ苦痛になってしまいました。
それから、彼の行動範囲も更に狭まっていきました。電車は乗りたくない、人混みも嫌になる。遠出もできない、ましてや新幹線、飛行機は夢物語になる。職場の会議室やひどいときは一人でいる部屋でさえ空気が薄く感じたり、心臓がどきどきしてどうしようもなくパニックに襲われる。遠出はしたくなくなる。人の極端に少ない見ず知らずの土地も不安になる・・・。
思い当たる方いらっしゃるのではないでしょうか?毎朝起きる度に「さあ出勤だ、でも今日は何か不安だなあ、いやな感じする、薬飲もうかな、今日はあんな遠くに行かなきゃいけない、今日は電車に乗らなきゃいけない、新幹線、飛行機に乗らなきゃいけない、車で高速を走らなきゃいけない、行ったことない所は不安だな。それにあの駅周辺はすごい人混みだ。あーやな感じがしてきた。」更に、「途中、気持ち悪くなったらどうしよう、周りに迷惑をかけてしまうかもしれない、体調おかしいから外出したくないなあ、会社行きたくないなあ、私のことを怠け者だと思うだろうか?こんな自分じゃダメだ、どうしてこんなに弱いのだろうか?職場で倒れたらどうしよう?迷惑かけたらどうしよう。」
これら様々な「予期不安のくり返し」に対して様々な視点からお一人お一人のペースに合わせてアプローチすることがパニック障害改善には必要不可欠であると考えます。
その男性はそれから心療内科病院に通い始めました。しかし、病院に来る人はその人だけではありません。そのドクターと沢山話せたとしても、せいぜい15分早いときは数分でした。それから薬をもらい、追い出されるような気分で、ほとんど言いたいことも言い切れず「どうですか先生?パニック発作のこの薬あんま効き目ない感じするんですけど。」彼がそう聞く度にそのドクターは「効くかもしれないし、効かないかもしれない。個人差があるから何とも言えない。」そんな感じの繰り返しだったそうです。そして彼は帰り道に「今日は調子悪かったからもっと沢山話したかった。この薬は本当に効くのだろうか?効く人もいればいない人もいるって、じゃあ効かない時はどうしたらいいの?薬コロコロ変えたりするだけで、こんな状態がいつまで続くんだろう?納得できない。本当に良くなるのかな?また気分悪くなってきた。俺が弱いからだめなのかな?また明日から通勤電車乗るのか。嫌だなあ」などと、病院に行っても、自分からひたすらマイナスイメージを繰り返していたそうです。
予期不安などのマイナスイメージはプラスイメージよりも早く、無意識に刷り込まれる性質があります。そのため、一回不安になると、プラスイメージを思い出しても無意識に届くスピードが遅いため、マイナスイメージを結果的に優先させて刷り込ませていくことになります。
結局、彼にはそれからも相変わらずの日々が続きました。薬をもらい続けるだけではどうしても未来に希望が持てませんでした。そんなある時、彼はどうしても飛行機に乗らなくてはならないことになり困り果てていました。そんな時にテレビの番組でちらっと見た催眠をみて、催眠療法、カウンセリングを受けてみようと決心したそうです。
それから、彼はカウンセリングや催眠などの心理療法を体験しました。「悩みについて思う存分話すことができるという心地よさ、カウンセラーの話を聞いてくれる時の何とも言えない安堵感、不思議な充実感、見守っていられている暖かな雰囲気」が彼にはとても心地よく感じたと後に語っています。そして、カウンセリングルームから帰ってからもその時教わったイメージトレーニングなどを取り入れながらしばらく生活を続けていると、ネガティブなイメージがポジティブなイメージに変化して「私は私で良かったんだ。人は人。今までつらいのに本当に良く頑張ってきた。パニックになるのも無理もないよな。これからは自分の為に生きてみよう。自分にはこんな性格もあったんだ。こんな得意なこともあったんだ。少しづつ頑張ってみよう。何か勇気が湧いてきたぞ。」などと変化していき、いつの間にかどんどん前向きに気持ちが変化していったのだそうです。
そして、数回カウンセリングを受けた結果、彼には夢物語だった飛行機に無事に乗ることができ、今では電車も飛行機もバスも車もいつの間にか寝ながら乗れるまでに改善していきました。そして、それに従って激しかった発作もいつの間にか消えていきました。
パニック障害の改善にとって大切なのは、症状についての悩み、つらさ、不安感などの様々な話を沢山話すことで、「私は理解してもらえている。」「私は私でいいんだね。」等と無意識レベルでまずは自分を受け入れ、そこから少しずつ生まれる安心感を得ることです。
また、クライアントの皆さんとの会話を通し、パニック障害が起きるようになる前の生活はどうだったのか?今はどのように生活していて、どんな生活環境なのか?人間関係、環境、体調、様々な具体的な一つ一つの視点からの少しづつアプローチしていき、最終的にはその一つ一つの情報をもとに少しずつ皆さんの心の中の無意識に「自信の芽」が生えることで、新たな自分を認めていくことができるようになり、それが改善への不可欠な要素だと考えます。彼の変化は以下の通りです。
自分は自分でいいよね。不思議だなあ。何となくやれそうな気がし
てきた。カウンセラーの言う通りかもしれない。
⇒それに、飛行機にはキャビンアテンドさんもいるし、倒れたらどうにかしてくれるさ。それが彼女らの仕事さ。
⇒旅行先で倒れても、病院はどこでもあるさ。不可抗力さ。誰かを頼っても罰あたらんさ。
⇒イメージトレーニングも教わった。セッションも受けた。なんかリラックスした感じもする。
⇒あんま考えても仕方ないな。やれることはやったさ。
⇒やったあ!なんか知らないけど飛行機乗って旅行してきちゃったよ。
⇒じゃあ今度は都内の電車やバス移動なんて大丈夫じゃん。
⇒大したことないはず。狭い飛行機の中で長い時間エコノミー座って、あんな距離移動して旅行もできたじゃないか。
⇒じゃあ各駅電車バスも乗ってこれからはいろいろ行けるよね。各駅は止まるしね。
⇒タクシーもある。病院はいくらでもある。人に頼っても罰当たらんさ。
⇒なんだあ?緊張しなかったぞ、思ったより楽だったぞ。
⇒次はどこ行こう。
この様に少しずつ一歩一歩皆さん独自の感覚で変化を確認しながら、自分と対話しながら可能性を広げ、その過程で自分の中の新たな無意識レベルでの価値観が生まれ「自信の芽」を育てて行き、プラスのイメージをすることができる機会が増えてきて、いつの間にか改善の方向へ向かっている。この過程がカウンセリングを通して大切だと考えます。
クライアントの皆さんお一人お一人の数だけその歩幅は様々です。
心療内科で処方された薬を飲んでいる皆さん。どうぞ「飲むこと=弱いこと」などと思わないで下さい。薬を飲んで少しでも前向きに活動的になり自分の世界を広げていくのと、薬を飲まないで毎日を不安を抱えながら狭い世界で過ごす・・・どちらが例え数mmでもパニック障害の症状から未来を見据え前進していることになるのか?私は後者だとカウンセリングを通して感じます。お守り代わりに持つことも大賛成です。薬を飲む飲まないに関わらず、まずはゆっくり皆さんそれぞれのペースで心の中を見つめ直し、そして、少しでもできる所から数mm一歩を踏み出す。時には何度も休みながらでもいいと思います。歩幅は一人一人違います。焦らず行きましょう。
「私はストレスで、たまたま心の風邪ににでもかかっていたんだ。」
風邪は人によって長引いたり、ある日突然治っていた経験があると思います。風邪で高熱が出たり、咳が出て症状が改善しない場合は継続的に薬を飲んで休んで、そしていつの間にか風邪が改善の方向に向かって行く。その結果、薬もいつの間にか頻繁に飲まなくて済むようになる。そんなスタンスで、心の風邪もまずは同じで、焦らないで皆さんのペースで歩いて行きましょう。
セッションについてはこちら心の症状と無意識の関係について子育てとアダルトチルドレン
カウンセリングについてはこちらエンカウンターグループ
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