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製造物責任(PL)法


1. 製造物責任法(PL法)とは
2011年8月1日
 製品の欠陥に対する損害賠償には、民法の範囲で判断する場合と、製造物責任法に訴える場合があります。民法では、被害者が加害者の故意や過失を立証しなければならない「過失責任主義」が原則ですが、被害者側の立証が不十分であっても、またメーカーに明確な過失が証明されなくても賠償を請求する手立てが、製造物責任法として用意されています。それは、企業活動の結果生じた過去の悲惨な公害や薬害事件を鑑み、被害者をまず救済することを保証する必要があったからです。
 繰り返しになりますが、製造物責任法では、世間常識的に見て製品に欠陥があり、身体や財産を侵害したときには、被害者がその因果関係を立証できなくても、製品のメーカーが賠償責任を負うことになっているのです。
 製造物責任法は1995年7月1日に施行された比較的新しい法律だけに、適用できる範囲やメーカーに課される責任の程度には議論の余地がまだ残され、今後の判例で明確化されていくものと思われます。


2. 被害者側の因果関係の立証が必要ない
2011年8月2日

 製造物責任法では、小売店から購入したものでも、メーカーに直接製造物の欠陥を訴え責任を問うことができます。自分で購入したものではなくても、製品に欠陥があり身体的・精神的被害を受ければその人は損害賠償を請求することが可能です。被害者は個人に限定されることはなく、企業でも可能です。
 賠償請求範囲は製品の代金のみでなく、健康被害、精神的被害も含まれるとされています。
 製造物責任法は、予見可能で回避可能な過失を賠償責任の根拠とする民法とは異なる視点にたった法制度ですが、製造物責任法ではなんでもかんでもメーカーの責任としているわけではありません。メーカー側が欠陥は製造段階の科学知識では予見不能であったことを証明し、欠陥の可能性を把握したあと被害の拡大を予防する処置を十分に行えば、メーカーの責任は回避されます。
 また、被害者の製品使用方法が常識に適っていたかどうかによっても、当然メーカーの賠償責任は相殺されます。


3. 法律が対象とする製品は?
2011年8月3日
 製造物責任法での製造物は「製造または加工された動産」と定義されています。家屋などの不動産がふくまれないのは、建物は耐用年数が長く、その間の劣化を考慮しなければならないからです。自然災害や維持・補修の程度によっても大きく異なります。ソフトウェアや講演などの無形物は動産ではないから対象外となります。製造物や加工物は対象だが、修理は含まれないことになります。
 製造物が常識的に有すべき安全性を欠いていると欠陥品になります。条文では1)設計上の欠陥、2)製造上の欠陥、3)指示・警告上の欠陥が列挙されており、分類に含まれないものは製造物責任は問われないことになります。
 製造物責任法の対象に該当するかどうかについては判断が難しく、今後の判例により明確化していくことでしょう。例えば食品の多くもこの法の対象になりますが、加工を施しているかどうかの境目を引くのはかなり難しいものがあります。また、欠陥の判定にも難しい場面が多々あります。疑問な折りはお尋ねください。

4. メーカー側の製造物責任回避法
2011年8月4日

 欠陥が追及された場合、製造メーカーはどう対応すればいいのでしょうか。メーカーが責任を回避するためには次ふたつの免責事由が用意されています。
 そのひとつは「開発危険の抗弁」と呼ばれる難解な名称が付けられています。製造物を引き渡した時点での科学技術では、欠陥があるかどうかはわかりようがなかったことを立証すれば、「開発危険の抗弁」によりメーカー側は責任を免れます。
 もうひとつ、例えば下請け関係に伴うもので、依頼会社から指示された設計図どおりに作ったが、設計自体に安全を脅かす欠陥があったような場合には、下請け会社の責任は問われないとされています。
 ふたつに合わせて、ユーザーに使用上常識的な注意の欠如があった場合には、賠償責任はその程度により相殺されます。また、損害賠償は、因果関係のある範囲に限定されるものであり、因果関係のないものを賠償する責務はありません。


5. 民法との関係
2011年8月5日
 損害賠償には製造物責任法に合わせて、民法の適用も受けます。当然、時によれば刑法の適用もありますが。どの法律の適用を受けるかは各法律で定められています。
 製造物責任法は被害者の救済の観点が強く、被告の支払い能力の程度も賠償額を決定する大きなファクターになります。メーカーが生産物賠償責任保険に加入しているかどうかも判定の材料になります。
 民法と製造物責任法の時効を記しておきましょう。それぞれの時効は少しだけ異なり、製造物責任法は時効がきたが、民法上の賠償責任が残る時期があります。まず、被害者が損害の発生と賠償義務者を知った時から3年間訴えを実施しないときは、時効によって消滅することになります。もうひとつの時効があり、製造物責任法では被害者が製造物を手に入れてから10年、民法では20年となっています。よく、電気製品などに購入後1年間無料修理しますというような表示がありますが、その期間は民法や製造物責任法での時効とはおおきく乖離しています。