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ナノバイオ


1. ナノバイオとは(知恵蔵2011からの引用)
2011年8月9日
 ナノテクノロジーとバイオテクノロジーが融合した技術領域。バイオナノテクノロジーともいう。幅約2nm(n〈ナノ〉は10億分の1)のDNA分子や、大きさが10nm程度のたんぱく質分子などのバイオ分子(生体高分子)は、生命現象を担うナノマシンである。
 通常のナノテクノロジーは、小さな機械を用いて、さらに小さな機械をつくろうとするトップダウン方式で進められるが、ナノバイオテクノロジーは、原子から分子を合成し、その分子が自己集合して超分子のナノマシンができるボトムアップ方式を目指す。バイオ分子は精巧な認識能力、均質性、自己集合性などの特徴を示す。このようなナノマシンは、現在の工学技術では製造不可能であり、ナノバイオテクノロジーは新しい技術分野となる。
 病気の診断や治療などの医療分野、環境汚染モニタリングなどの環境分野、電子材料分野などで研究が進められている。( 川口啓明/菊地昌子氏による)

2.特許の紹介;インフルエンザウイルス結合能を有するグリセロ糖脂質
2011年8月14日
 インフルエンザは、インフルエンザウイルスに起因する感染症であり、世界的な流行を幾度となく繰り返してきた。被害の大きい年では、1000万人以上の人々に死をもたらしたことがあり、そうでない場合でも社会的損失は大きい。最近、ヒトのインフルエンザウイルスの感染機構が解明されてきた。それによるとインフルエンザウイルスは、その表層にある釘状糖蛋白質ヘマグルチニンを介して宿主細胞上にあるウイルスレセプターを特異的に認識し結合する。
 ウイルスレセプターはその末端にシアル酸(N−アセチルノイラミン酸およびN−グリコリルノイラミン酸)を含む特徴的な構造をもっており、さらに各宿主により異なった糖鎖で修飾されている。ヒトのレセプターは末端のシアル酸にα2→6結合でガラクトースが結合した糖鎖であるが、宿主依存性の変異によりα2→3結合を認識するヒトのウイルスも分離されることがある。ウマやブタから分離されたウイルスはN−グリコリルノイラミン酸を末端に含む糖鎖も認識するが、ヒト由来のウイルスは主にN−アセチルノイラミン酸のみを認識すると言われている。
 これらのレセプターを模倣した糖鎖や糖脂質を用意すれば、ウイルスの宿主感染を阻害することが期待される。最近シアル酸を含まない糖脂質スルファチドにウイルス結合能が報告されてから、ヘマグルチニンの結合能にかなりの許容範囲が推測された。シアル酸を含まない糖脂質はウイルスのシアリダーゼに分解されず安定であり、インフルエンザ治療剤として期待される。
リンク先 http://www.patentjp.com/13/L/L100244/DA10010.html



3. ナノハイブリッド分子は火山で出来たのか
2011年8月16日
 日本列島の周囲には多数の海底火山があります。原始地球における生体分子の生成の場所、いいかえれば生命の誕生の場所は海底火山の熱水噴出孔だったのではないかと考えられています。高温高圧下で水蒸気・メタン・硫化水素・アンモニア・水素などが均質化され、共存する油や粘土の表面上で活発な化学反応を起こし、複雑な有機分子・生体分子が出来上がったとされています。さらには鉱物・有機分子・生体分子が融合し、原始的な生命が出来上がったとされます。
 いろいろな無機・有機分子を高温高圧で超臨界状態にすることで海底火山を再現し、バイオハイブリッド分子を創成しようとする研究があります。東北大学の阿尻教室ではホームページで高分子の中にナノ微粒子状態で完全に分散させる技術を紹介しています。潟Aイテックにより超臨界水ナノ粒子合成装置が販売され、分散性のいいナノ粒子が高速に製作できるそうです。 
 ただこうした単純系はいいが、高度な生体分子のようなものがこうしたシステムで出来るのか、超臨界温度や圧力は物質により異なるのに、複雑系の超臨界温度や圧力の設定をどうするのかを知りたいものです。草津白根山の神秘的な火口湖を見て思いました。

4. ナノマテリアルの安全性
2011年8月18日
 粒子がナノレベルまで小さくなると未知な性質を発揮するようになり、十分な安全性の評価が必要になります。化粧品や医薬、食品など応用した製品の開発が著しい、ナノマテリアルの安全性を懸念する動きがあります。
 懸念の発端はアスベストであり、数十ナノメートルの径の繊維で、肺組織への透過性が強く、悪性中皮腫を引き起こすことがわかっています。自動車エンジンの排出する粉塵や火山灰による健康障害も、ナノレベルの粒子が引き起こすとされています。
 法律ウォッチャー「ナノマテリアルの規制動向」と題する、波多野友博氏のホームページサイトがありました(http://www.scas.co.jp/company/news/30/watcher_30.pdf)。法制度の整備状況が簡潔にまとめられています。現在はナノマテリアルに特化した規制や基準はなく、新規化学物質開発時の、開発者による安全性情報の取得義務と、労働安全衛生法、粉じん障害防止規則、じん肺法といった粉塵量規制で対応されています。でもナノマテリアルごとの安全基準を設ける動きもあり、OECDでは14種の代表的ナノマテリアルを特定し、安全性に関する評価文書が近く策定されるそうです。ナノマテリアルを利用した魅力をある製品開発を促進する意味でも、ナノマテリアル個々の安全性の評価基準が望まれます。



5. ナノバイオマシン創製技術市場性報告
2011年8月19日
 古くなりますが、平成15年度にA機械システム振興協会による「ナノバイオマシン創製のための技術及び市場性に関する調査研究」の発表があり、下記のサイトに要旨が記され、詳細は成書にもなっています。筆者は当時バイオインダストリー協会に在席し、調査研究に携わりその後の情勢に感心があります。
 そのなかにナノバイオマシンの将来像が記され、@マシンはますます複合化し、A基礎物理学に依存した生物原理に習うことになり、 B部品や素材には新しい概念が取り入れられ、C組立技術にも新しい考え方が導入されることになるだろうと予想されています。とくに何故、生物原理に基づかねばならないかについては、@生物原理はSN比が高い、A生物原理でしか複雑な構造分子を作る技術が未到である、B生物原理はエネルギーカップリングが優れることが挙げられています。
 この成果からすでに8年が経過していますが、ますますこれらの感を強くしています。生体に学ぶナノバイオマシンの例として、光合成装置やタンパク質合成系、ATPase、アクトミオシン、べん毛などを模倣した、高効率エネルギー変換、エネルギー供給、情報の変換などがあげられています。これらをターゲットにした研究者は着実に増加しています。http://www.jba.or.jp/publish/publication/pdf/005_nano.pdf