1. 基礎

1.8 振りの基本

振りの基本を説明する前に、ラケットスイングの基本姿勢を確認しておきたい。ラケットスイングをミサイルエンジンとすると、基本姿勢はミサイルの発射台に相当する。この発射台がお粗末ではエンジンの性能を発揮することが出来ない。そもそも始まらない。 まず、3.1節 「ラケットスイングの基本姿勢」を先に読んでおく必要がある。
そして、この節を読み終わったら、 2.13節 「ドライブラリーの原則」を目を通しておくことを進める。相手の振りと鏡面に擦ることで球が安定しラリーが続くのだ。

1.8.1 振りの方程式

ラケットの振り方には、何処の関節に重点を措くかで大きく3種類ある。

  1. 腕を伸ばして、肩関節の回転で振る。
  2. 肘関節の屈伸で振る。または、肘を90度に折って煽って振る。
  3. 手首の関節の回転を使って振る。

君はどの振り方をしているだろうか。人は競技をするときに一番力の入る筋肉を無意識に使う。 初心者はどんな場合でも「腕を伸ばして肩関節の回転を使い腕全体」で振っている。これは間違っている。

実は、それぞれの振り方は状況に応じて使い分ける必要がある。

  1. 腕を伸ばして肩関節の関節での振りは、台から遠く離れた場合に使う。
  2. 肘関節を使っての振りは、台から近く離れた場合に使う。
  3. 手首の関節の振りは、台上での振りの場合に使う。

更に、 次節 1.9 「球と振りの関係」において、球の飛距離と振り半径との関係について力学的に詳しく述べている。

間違っても、腰の回転を主体にして振ってはいけない。
力学では、回転の難易度(動きにくさ・止まりにくさ)を表すのに、慣性モーメントというのがある。

慣性モーメント =(回転半径)2× 質量

体の質量はラケットの質量に比べて遥かに大きく、制動に時間がかかり過ぎスピードを要求されている卓球には向いていないのだ。

もどる

1.8.2 基本的なスイング

基本的な台から近く離れた場合の振りを見てみよう。初心者には、まずこの振りを覚えてもらいたい。 その前に、表面に赤いラバーを、裏面に黒ラバーを使てるものとしている。
肘関節の屈伸を使って、前方に振ることによって球に飛びを与える。打点の前に肘を伸ばし、伸ばした肘を屈することで球を弾く。

基本フォアースウィング

フォアスイングでは、ラケットヘッドを左上45度に傾け、球の右2時の所を、台の左端コーナーに向けて、躊躇なく前方に鋭く擦る。

基本バックスウィング

バックスイングでは、ラケットヘッドを右上45度に傾け、球の左10時の所を、台の右端コーナーに向けて、躊躇なく前方に鋭く擦る。

この距離つまり中陣のスイングでは腰の回転は使わない。腰を使うと慣性力が大きくなり、振りを止めることが出来難くなり、姿勢を戻すのを難しくする。

もどる

1.8.3 スウィングは最後まで振りぬく

球をスウングの最速点で当ることが大切である。そして、スウングを途中で止めてはいけない。 どんな場合も振り抜く。これは、球に上回転のマグヌス効果を与えることによって、 球をコート内に入れるためだ。

ドライブとマグヌス効果

左の図は、上回転をパラメータとした時の打球の軌跡を示したものだ。 Vy=10は、10m/sの初速をしめしている。ωyは上回転をしめしている。 ωy=0は回転していない球の軌跡だ。
上回転がかかる程、球の勢いが強くなるが、同じ初速でも近くに落ちることになる。 さらに良いことにはブレーキの効きが小さくなる。だんだん、幅が狭くなっているのが分かる。

スウィングを途中で止めた時

左の図は、スウングを途中で止めた時の打球の軌跡を示す。 この図から、球がネットに引っかかってしまうことが分かる。 スウングを途中で止めると、初速が下がり、回転が小さいのだ。 球の勢いがないからだ。相手コートに入ったとしても相手に打ち込まれ易いのだ。

もどる