御鷹匠同心の収入


作成2005年10月25日

このページの最終更新日は2011/06/02です。

ホーム個人情報保護法空気銃猟のページ狩猟のページパキスタンのページ鷹狩のページメール 御鷹匠同心のページ鷹狩の近代史のページドイツポインターのページアフリカのページ

主題:「御鷹匠同心片山家日常襍記抄」に見る御鷹匠同心の生活と野先

文政十一年(1828年)


 副題:御鷹匠同心の収入

 まずは、片山勇八が鷹匠同心としてどの位の収入を受け取っていたか検証してみたい。今で言う所の基本給(役高)の他に、出勤日数に合わせ日帰(日給月給 :働いた日数により月毎に支払われる月給)が支払われていた。しかし、良く見て行くと基本給が賞与(ボーナス)見たいな物で、 扶持米と日帰は今で言う月給の働きをしている事がわかる。そうなると同心と言うものの、その収入はかなりの物になってくる。こうなると同心の貧しい生活を想像していたのに、 他の同心と比べるとかなり裕福な人達ではなかったかと思われる。

 さらに鷹匠同心達は一戸建てに住んでいる事がわかる。また、特技を生かして副収入を得ていた片山勇八だが、これは直接片山家の生活を支えるほどの事は無く、勇八の煙草代になっていたのだろうか。

 まずは、主要な収入で有る役高だが、記録が無い。そこで平均的な鷹匠同心の役高である三十俵二人扶持と仮定する。 この内の三十俵が切米と呼ばれ、本来なら基本給であるが年三回に分けて支給されるので、今で言う所のボーナスに当たる物である。春四分の一、夏四分の一、冬四分のニ受け取る事になる。さらに毎月支給される二人扶持の扶持米は一日で一升一年で3.6石になり、これが今の月俸(月給)となる。両者を合わせて幾らになるか計算してみよう。江戸幕府では一俵に三斗五升(0.35石)の玄米を詰める事になっているので、これに三十俵を掛けると10.5石になる。これに扶持米の3.6石を足すと14.1石。現金に直すと十二両ニ分一朱位となるが、これを現 代感覚の金額に換算すると、一両三十万円(これはかなり信頼できる数字です)で、年収380万7千円の所帯になる。これではかなり厳しい事になるがそこに日帰が加わる事で生活に多少のゆとりが出て来る。

 収入の最も重要な部分を占める日帰を見て行くと、


・一月二十日:十二月日帰二十九日分、壱分四拾八文。

・二月十七日:正月日帰三十二日分、壱分二百八拾文。

・三月十七日:二月日帰二十六日分、三朱三百五拾八文。

・四月十六日:三月日帰十六日分、三朱と九文。

・五月十八日:四月日帰二十九日分、壱分三十三文。

・六月十五日:五月日帰遠据十五日、餌作七日、都合二十二日分、三朱弐百六文。

・七月十日:六月日帰十六日分、二朱三百八十八文。

・八月二日:書役日帰三朱六拾文(片山勇八は非常に筆が立った。そこで 暇な時は役所の事務(書役)もこなしていたが、その日当が支払われている。片山勇八が書いた文書が国立公文書館に保存されている。)

・八月十三日:七月日帰二十九日分、壱分壱朱と百七十文。書役日帰十五日分、二朱三百三十三文。

・九月十五日:八月日帰十一日分、書役日帰十五日分、都合壱分壱朱弐百拾弐文。

・十月十七日:九月日帰二十七日分、書役十日、都合壱分三朱三百八拾五文。

・十一月十六日:十月日帰二十五日分、壱分壱朱貳百参拾八文

・十二月十五日:十一月日帰十一日分、貳朱七拾文。


 これに続いて「四拾八両貳分に売れ候よし、千駄木の日帰扶持は五拾壱両に売れ候よし」 と有る。その前の記事にも八月分が四拾七両に売れたと有る。これに付いては別の機会に説明する事として、例えば八月分の日帰一分一朱百十二文をこれまた現在感覚の金額に換算すると9万9千780円受け取る事になる。 毎月約十万円の収入が有り、扶持米が一日で一升の割合で毎月毎に支給されるのだから、米(玄米なので精米の必要有り)は買わずに済むし、今ほど贅沢なおかずを食べているはずも無く、同心としては優遇されていた人々だと思われる。

 とは言うものの、江戸中期以降米価の値下がり、物価の上昇の影響で米に頼って生きてきた武士にとっては幕末に向けさらに厳しい時期を向かえる事になるのだが、片山家は片山勇八の息子片山椿助(ちんすけ)の代になり親から受け継いだ素質と椿助の才能により新たな出世をしていくのだが、その時はもうすでに徳川幕府の瓦解が静かに始まっていた時期でもあった。


情報提供はこちらからお願いします。

参考文献:「続徳川実記」、「文化六年雑司ヶ谷職員名簿」、「武士の家計簿」、「放鷹」 、「御鷹匠同心片山家日常襍記抄」
 

ホーム個人情報保護法空気銃猟のページ狩猟のページパキスタンのページ鷹狩のページメール 御鷹匠同心のページ鷹狩の近代史のページドイツポインターのページアフリカのページ

  Copyright (C) 2000 German−Pointer. All Rights Reserve