鷹狩と法規制


作成2005年6月28日

このページの最終更新日は2009/11/03です。

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このページでは近代に於ける鷹狩に関する法規制の変遷を検証します。

鷹狩を行う上で一番大切な事は法律に 抵触していないと言うこと です。このページでは明治から平成15年までの鷹狩に関わる法令からその正当性を探りたいと思います。


繋ぎ鷹之図(伝、直庵筆)  


※慶応三年(1867)5月鷹場制度の廃止に伴い鳥猟を一般に許可したが、この時その証明として鑑札を発行した。これが近代に於ける狩猟免許制度の始まりと考えられる。それから明治に移り急激な乱獲が始まり、著しい減少から規制が必要に成って来た。


  徳川幕府が瓦解して野放し状態だった狩猟行為に対し明治5年、銃猟をする者は「免許猟札」を受けなくてはいけない事となった。その翌年の明治6年1月に太政官布告25号により、「鳥獣猟規制」が制定され日本の狩猟法が産声を上げたので有るが、その内容は銃猟の鑑札制、銃猟の猟期等 、銃猟の規制が主な内容で、鷹狩は依然として野放し状態であった。

  その後、明治25年になって新たに勅令により、狩猟規則が定められ、ここで始めて鳥獣猟規制の対象であった銃猟の他に網、もちなわ、はご、放鷹が加わり甲種に分類された。そして、この勅令が施工されて「鳥獣猟規制」が廃止された。

 さて、この原本は「独立行政法人国立公文書館」に所蔵され、デジタルアーカイブで誰でも簡単に閲覧する事が出来ますが、今回は掲載許可を頂きましたので、ここに第一条と第三十四条を掲載します。


標題: 「狩猟規則制定鳥獣猟規則廃止・御署名原本・明治二十五年・勅令第八十四号」

※正式に国立公文書館の掲載許可を受けております。よってこのデータの二次利用は出来ませんので、ご注意下さい。


 その後、狩猟規則が勅令によって定められるのは違憲であると言う事から明治28年3月20日法律としての狩猟法が公布されたが、内容は明治25年の勅令に少し手を加えた程度であった。その後明治34年に狩猟法の全面改定が行われ、第1章 猟具、猟法 第1条の中から「放鷹」と言う言葉が消え、猟具から外れ自由猟具になった。


  明治43年に狩猟法の一部改正が有り、さらに大正7年に平成15年まで続く改正狩猟法が制定され、終戦後の昭和22年GHQ主導による狩猟法の改正が行われ、鳥獣保護の為の法律へと生まれ変わって行った。さらに昭和38年の法改正で狩猟法から「鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律」と名前を改め、従来の狩猟優先の考え方から 、鳥獣保護を優先にすると言う考え 方に変わった時期と考えられる。事実この時期は狩猟者の増加、野生動物の減少とが重なり早急な対策が必要な時期で有った。昭和46年環境庁が発足し、鳥獣保護行政が農林省から環境庁に移管され、 その後環境省と名前も変わり平成15年、昭和38年から続いた「鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律」が全面改正され、「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律(以後鳥獣法)として平成15年に施行された。


 明治34年の狩猟法の全面改定以後、「放鷹」と言う名前が表に出る事は無かった。

 では、現行の鳥獣法の中で何を根拠に「放鷹」(法律上ではこの表現が正と考えられる)を行い鳥獣の捕獲(鳥獣法では法定猟具にて鳥獣を捕獲する事に限って狩猟と言う 定義を使う。それ以外は捕獲)が出来るか検討してみる事にする。


第十一条 次に揚げる場合には、・・・・・・・環境省令で定める区域以外の区域(以下「狩猟可能区域」と言う。)において、狩猟期間(・・・・)内に限り、環境大臣又は都道府県知事の許可を受けないで、狩猟鳥獣の捕獲等をすることができる。と有り、その中に幾つかの禁止事項を挙げ、続いて第一項の中のイで、法定猟法以外の猟法による狩猟鳥獣の捕獲等と記載している。この部分を要約すると以下の項目になる。


・法定猟法以外の猟法であっても、規制(禁止)以外の猟法であれば、狩猟期間中に狩猟可能区域で狩猟鳥獣を捕獲することが出来ると解釈出来る。(現在はこれを非法定猟具と呼ぶ。)

これにより、全ての狩猟法―(マイナス)法定猟法禁止猟法(禁止猟具)非法定猟具と言う式が導き出される。ではここで言う所の法定猟法とは何かと言うと、第二条ニ項、この法律において「法定猟法」とは、銃器(装薬銃及び空気銃・・・・・)、網又はわなであって環境省令で定めるものを使用する猟法その他環境省令で定める猟法をいう。と有り、つまり現在狩猟免許を取って狩猟者登録を行ってのみ行える狩猟法を法定猟法と呼ぶ。


  さらに、上記の第二条第二項の中で言う所の環境省令は鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律施行規則(環境省令第二十八号)の 事で、その中の第二条で上記鳥獣法の第二条二項の補足説明をするような形で法定猟具を定めている。さらに、同環境省令の第十条三項で禁止猟法を定めているが、これは鳥獣法第十二条一項三号に基ずくものである。他にも幾つか有るが、要するに法定猟法以外のほとんどの狩猟法は禁止されていると言う事である。この中で可能な猟法は捕獲行為の区分概念図の注記に「非法定猟法(手取り、棒振り等)により捕獲する事は不要許可と有る。 この中の等に放鷹が該当すると言うのが根拠なのだが、これではあまりにも寂しすぎる。そこで引き合いに出されるのが「鳥獣保護制度の解説」と言う本である。少し古い本であるが、副題に「鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律の解説」と有り、平成15年以前の 旧法の解説書であるが、(新しい法律の解説書が出ているかは不明)この中に「タカを使用する方法等は、いずれも法定猟具に該当せず、このように法定猟具でない猟法による狩猟鳥獣の捕獲は、狩猟期間内で、法第一条ノ四第三項の規定による捕獲の禁止又は制限の範囲外で、かつ法第一五条の危険なわな等を使用しないのであれば、何人も狩猟免許がなくして行うことができる。」と有り、この解釈を現行法に当てはめても何ら問題は無く、狩猟期間 内に狩猟鳥獣を制限の範囲で狩猟可能な場所で禁止猟法でない放鷹により捕獲する事は可能であると解釈出来るのである。


※一部のWEBサイトでスリングショット(パチンコ、カタパルト)での狩猟は可能と書いてあり、実際に行っているような記述が見られますが、私の知る範囲では間違い無く違法行為である。(スリングショット:子供が遊びで使うパチンコではなく、アメリカで狩猟用に改良された殺傷力の強い物です。私もアメリカで使った事が有ります。また、日本の銃砲店でも狩猟には使えないと言う事で販売していますし、一部のスリングショットには狩猟に使えない旨が正しく記載されています。)過去に判例が無く現行法では明確な記述に欠ける点で説得力を失っている。もっと細かく法定猟法以外の可能な猟法を定め、仮に「無許可法定猟法」とでもして法律で定めなければならないと思う。いわゆる抜け穴が幾つも有る法律と言う事です。スリングショットについては、半矢を生む可能性が高く、動物の保護上問題になるだけでなく、人をも殺傷する能力が有り危険な猟具に分類されると考えられます。

他にも現行法には色々注文を付けたいがあまり書き過ぎるのも色々影響が有るので省略する。


鷹狩図より


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