日本の鷹狩


作成2005年6月28日

このページの最終更新日は2015/09/23です。

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このページでは平成16年度猟期に於けるオオタカのメスを使った鷹狩(放鷹)の一部をご紹介します。タイトルの「日本の鷹狩」ですが、海外の鷹狩を紹介する都合からあえて「日本」と付けています。

平成16年度猟期

猟期は平成16年11月15日より平成17年2月15日までです。

平成16年11月20日初鳥飼


平成16年10月20日

  この日午前中に鷹が届く予定だったが、台風の影響で午後になり、仕事に出掛けてから届いたとの事である。随分心配させられたが、夕方6時前には鷹部屋に放すことが出来た。しかし、西濃運輸で送られてきた鶉100羽は予定通り早朝届く。

※これからは暗闇の中での仕込みになります。

 この日の夜、鷹部屋に入り少し据えてみると様子が良いのでそのまま廊下に出て30分ほど据えて鶉で1羽半ほど飼う。


平成16年10月21日

 夕方、購入先で付けてくれた洋式の足革(あしかわ:足に着ける皮紐)を外し、新しい足革を差す。10月に捕獲された鷹は9月に捕獲された鷹と比べると随分大人しく、伏衣 (ふせぎぬ:鷹の拘束衣)で伏せるとまったく暴れ ない。  9月の鷹は巣鷹(すだか:巣から獲って来た雛を育てたもの)に近いせいか良く暴れるが、腹具合では初日から拳に渡って来たり(飛んでくるの意)して来て面白い。  爪とくちばしを削り、足革を差し足革に大緒(おおお:江戸八打ちの組紐)を通して出来上がり。流派によっては初めから尾鈴(尾羽に付ける鈴) を付けるが、私の所では狩の前に付けて狩が終れば外してしまうので、伏衣は尾の部分まで有り、中には芯が入っていて尾羽を保護するようになっている。(ストレスを与えない為、頭にはフードをかぶせてある)

 ※フード:外国製の目隠し、可児弘明氏がその著書の中で、「遮眼革」として紹介しているが、漢字で表現された最適な名前ではないかと思う。

足革装着後


 鷹の装束(足革等を付ける事)が終ると鷹部屋の準備に掛かる。架(ほこ:止まり木)を一段下げ架垂( ほこたれ:畳表)を掛けて鷹を繋ぐ。(実際は架木に 架垂を結わえ付けた物が別に有り、架受けに差込み、架垂れの裾各3箇所に付いている乳輪(ちちわ)に杭を差込んで、土間に止めれば張架の出来上がりである。)後は嵐戸、嵐窓(天窓) 、無双窓を閉め、餌棚、休棚をたたみ、水舟(水槽)に蓋をして鷹を繋げばいよいよ仕込みに掛かる。

※鷹部屋の設備に付いては「鷹部屋日記」を参照下さい。

 名前を「舞姫」とし、呼び名を「ひめ」と決める。その後、夜中に据えるが調子が良いのでそのまま軒先まで出て、しばらくして軒離れも問題無く出来たので、鷹部屋の前の芝生で据え回しを行う。それを鷹が落着くまで行い、最後は道路に出て街灯の下で鶉を食べるまでになった。と言ってもウクライナで捕獲されてから 、色々な人の手を経て日本までやって来る間に人間から餌をもらっているので、野生でもかなり人に馴れていた様である。この時点で肉(シシ:胸の肉付き)七分で輸送に使われてきたケージの中は緑色の油ウチと呼ばれる糞でよごれていた。この為、今回は詰め(餌を絶つ事)を行なわず、このまま続けて仕込む事にした。

※この後は単調な仕込みになるので省略します。 仕込みに付いてはその内「夜据日記」でご紹介します。

 とにかく11月15日の解禁日までに仕上げ様とかなり手抜きをした。 しかも7時半には家を出なくてはいけないので、朝は5時半から7時までしか仕込みが出来ず、夜は9時頃から据え出し11時頃までが仕事に影響が出ない限界で、特に段々日の出が遅くなり、土日を抜かすとほとんど夜中に据えている様な感じでした。この為、一部の仕込を抜いて解禁1週間前には会社の出勤時間を1時間遅らせ、何とか使えるまでになりました。

※11月1日にはかなり渡る様になったので鷹部屋の中を元に戻し放す。これは鷹の健康維持の為であるが、詳しくは「夜据日記」でご紹介します。


平成16年11月15日

 解禁日。家から歩いて10分ほどの所に有る鴨が良く付く小さな池の周りに数日前からネットを張って(昔であれば寄せ垣と呼ぶ物である)近づき易いようにして置いたが、昨日まで居た鴨が今日に限って一羽も居なかった。理由は少し寝坊をした為、単純に先を越された訳で、こればっかりは仕方がない。この日は月曜日だが、会社を休んで午後から空気銃を持って鷹の餌にするキジバトを獲りに行く事にした。


平成16年11月17日

  朝据え(アサズエ:朝の散歩)をしていると農家の裏を流れる農業用水路の中にゴイサギを見つける 。相手も気付いて草陰に隠れるが、ここで少し心配(獲り損なった場合に回収に時間が掛ると会社に遅れてしまう為)になり忍縄(オキナワ :凧糸の様なもの)を差し(付ける意)て羽合(あわ)す事にした。草陰に隠れたゴイサギは見えなかったが、鷹には見えていると思いそのまま羽合す。鷹はそのまま飛んで初めにゴイサギが隠れた辺りに降りる。すっかり掴かんだ物と思い込み土手を降りるとその草薮の反対からゴイサギが飛びだす。鷹も続いて後を追うが、忍縄(オキナワ)が草に絡み数メートルしか飛べず、ただ見送るのみ。

※久しぶりの鷹狩で、ゴイサギに対する羽合せ方をすっかり忘れていたのが失敗の原因である。

 夜据えをしていると結構ゴイサギは居るもので、ハンターも(私も)この鳥はまず撃たない。この辺では蒼鷺(アオサギ)と大体同じ数だけ居るが、基本的には夜活動するので昼はほとんど人目に付かない。それに比べ、ゴイサギより大きな体を維持する為に 、昼も夜も魚を獲り続ける蒼鷺(アオサギ)の方が漁業被害は大きいと思うのだが、捕獲は禁止されている。鷹狩での捕獲が許可になれば楽しいのだが。 近年、非常に増え出してニジマスの養魚場や山奥の渓流釣り場も被害に有っている。


平成16年11月20日(土)

 やっと時間を気にせず鷹狩に行ける時が来た。今年は例年に無いほどの降水量で、しかも台風が遅くまで来ていたので川での鴨猟は期待薄だった。この為、とりあえずゴイサギの代(シロ:獲物の付場)へ行くことにする。例年なら水が引けてゴイサギは居ないのだが、今年は少し期待が持てるので覗いて見る。しかし、何も居ないようなので一回りして帰りにもう一回覗く事にする。いつもはベルが追い出してくれるが、犬馴らしが出来ていないので(普通に接触するには問題無いが、犬がハァハァしながら走ると全く駄目である)小さな池の上に密生している木の枝をゆるす。すると木移りする影がわずかに見えた。池から10m位下離れて羽合せ易い場所に移動し、池の中に石を投げ込むとゴイサギが飛び出して来た。すかさず羽合せるが、すぐに二羽共見えなくなってしまった。落草 (オチグサ:鷹が降りた所)あたりを探すと池の中にゴイサギを鳥舟(トリブネ:鳥を下にして船にしている様)にして鷹が浮いていた。それが一番上の初鳥飼の写真です。初めてでちゃんと掴めたか心配でしたが、頭(カシラ)を取っていたのでこちらも自信が付きました。

 この日は、肉を上げるために十分に食わせる事にしました。このゴイサギは一番上の写真でも分かる通り、若鳥の羽根をしていて羽に点々と星が付いていて、これを星五位と呼びます。現在の鷹狩ではゴイサギが一番簡単な獲物で、「ひめ」にとっては今年最初の獲物で仕込の最終仕上げである初鳥飼を無事に行う事が出来ました。

平成16年11月20日


 鴨猟編:休みのたびに鴨猟に行くのですが、今年はダムの放流が止まらず、水量が多くつかもうとする寸前で皆、水の中にドボンと逃げられてしまい、鷹も鴨にはなれていないのか、中々下に回り込めず取り逃がしてばかりで1 ヶ月が経ってしまいました。やっと水量が下がって来た頃には鴨も安全な場所で過ごすようになり、今度は出会いが少なくなってしまいました。

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二の池風下側より見る


平成16年12月20日

 今日は、川原に点在する池の一つ、二の池に行く。ここは鴨が良く付いていて覗くと鴨が一斉に飛び立つのですが、目的はこの飛び立つ鴨ではなく、池の中のガマの陰や岸のススキの間に隠れている鴨たちです。しかし、今日はなぜか一羽の鴨が飛び立ちかねて池の中を泳ギ回っている。飛べばチャンスは有のだが、飛ばなければ相手にはならないので左岸を風下(写真の位置)から風上に押して (狩り上るの意)行く。すると何を思ったのか、件の鴨が右岸側をこちらに向かって15mほど先から約30度位の角度で上に向かって飛んで来るではないか。羽合せがうまく決まり鷹は鴨の胸に吸い付くように結ぶ。 (掴む意)キンクロハジロのメスでした。

キンクロハジロ♀


平成16年12月29日

 今日からやっと年末年始の休みになる。前回鴨を獲った池の横に有る細長い、一の池を覗くと20m位先から蒼鷺が飛び出す。はじめの頃、朝据えをすると必ず1羽か2羽の蒼鷺が飛び出して鷹が掛かった(襲おうとして飛び掛る)りしたが、当然羽合わせないでいたらまったく興味を示さなくなりました。


※現在、蒼鷺(アオサギ)は狩猟鳥獣では有りませんが、戦前まで秋田ではこれが鷹狩りの獲物の第一であった。これに関しては瀧澤正勝氏が戦前に書かれた「鷹を捕りに」に詳しく書かれている。現在残っている鷹狩りとはまったく違ったもので非常に興味深いものだが、その後瀧澤正勝氏がどうなられたかご存知の方がおられましたら情報の提供をお願いします。

一の池、手前の土手下より出る。合羽せたのは写真左奥より


 所が、蒼鷺の出た所のすぐそばから遅れてゴイサギが飛び出したように見え、風上側でしかも間合いが長すぎたが、ゴイサギならと思い鷹を羽合す。

※残念ながら写真は有りません。新らしい狩猟用のジャケットをおろして今猟期から使い出したのだが、このジャケットが曲者で前身ごろが二重になっていてポケットとしての機能が有るのですが、この口の縫い代が浅いので少し藪漕ぎなどすると中身が全部出てしまいます。この為長年愛用していたデジカメをなくしてしまい、仕方なく新しいカメラを買ったのですがその間は写真が撮れなく、さらに今回は馴れていない新しいカメラで、あわててカメラではなくビデオ撮影をしてしまいました。


平成17年1月8日

 その後年が変って1月8日午後3時、家から歩いて野据えに出掛ける。時間的には遅かったが、前に犬の散歩の時、午後遅くゴイサギを見たので少し気になったのと、いつも午前中しか狩に行かないのでたまには午後に行くのも面白いと思ったからです。午後3時を過ぎると結構獲物が出ているのですが、山木居(やまこい又は山恋)の時と言い夕方近くなると山(森)へ行って休み、戻らなくなる事があるので注意が必要です。

※初めにキジが逃げ込んだ所から下を見下ろす。左の青いフェンスの方から竹やぶに向かってキジが飛ぶのが一瞬見えた。実際キジが出たのは写真中央、この場所から後ろ(右の写真)を振りかえるとゴルフ場。(後から撮った写真なので草は刈られています。)


 この前ゴイサギの出た所へ行くと前方の竹やぶにキジが飛び込むのがほんの一瞬だが視界の片隅に見えた。鷹も気付いたが、あばれず大人しくしていた近づくと鷹が盛んに竹やぶの手前の休耕田の草薮を気にし出したので、鷹の見つめる方へ歩いて行くと5m先からオスキジが飛び出す。すかさず羽合すが、キジは5mも飛ばずにその先の高台の草薮に逃げ込む。鷹もそれに続いて飛びこむが間に合わず。その後、その上に張り出した低い枝に止まりいつ飛び出してもいい様に待ち構えている。その間に始めに見たキジが、竹薮から飛んで逃げて行く。鷹の見つめる先の草をかき分けて行くとキジが飛び出し、鷹も飛んで2m位でキジはまた下へ逃げ込む。今度は追い回しても草がゆれて逃げる方向が分かるだけで 、飛び出そうしない。その内やっとキジの所在を見付けたら足元のススキの株の陰にいた。思いっきり蹴飛ばすか踏みつければ良かったが、欲が出て鷹に掴ませたくなり近くの枝にいた鷹を据え上げ(拳に取り)、キジの居た所に戻るともぬけの殻で真後ろから飛び立たれる。この為、羽合せがうまく決まらず、キジと鷹の間合い (距離の意)7、8m位でゴルフ場を横切って飛んで行ってしまった。さらに50m位先で曲がってしまったので、二羽共見失う。先ほど居た高台の下はゴルフ場で 、キジを追い回して居た時も下でゴルファーがプレーをしていた。さすがにゴルフ場の中を横断して鷹を追いかける訳にも行かず、しばらく呼子を吹き続けたが戻らず。それから2、30分もしてあきらめた鷹が飛んで帰って来た時にはほっとした。


 実は暮れに急用が出来てキジを1羽丸ごと与えて4日間留守にして、その後やっと少し調子が良くなって来たばかりで、まだ太っていて本来なら使える状況ではなかったが、ゴイサギ位なら良いと思っていた所でキジに羽合してしまい、後悔先に立たずと思っていた 。しかも夕方近くなりほとんどあきらめ掛けていた時の出来事でした。


平成17年1月22日

 今日もいつもの所に出掛ける。本来なら川の水位が下り、本命の中州に渡れるのですが、今年はあきらめざるを得ない。何箇所か有る代もここに来てチャンスの有る所が一つになってしまい毎週通い詰めている。さらに少し遅かったのでいつもの二の池には先行者が入って、鴨が丁度飛び出す所が見えた。仕方が無いので今回は先を急ぐ。

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中の池、写真の一番奥より出る


 今日は三つ目の池、中の池で出会いが会った。初めススキの間から蒼鷺が飛び出し、鷹も気にしていない様子で先に行くと、今度は間違い無くゴイサギが飛び出して来た。すかさず羽合わせるが、二羽ともすぐにススキの陰で 見えなくなる。鷹を探して池に入ると、池の真中に頭(かしら)を取った鷹が浮いていた。鷹に丸を飼って全てが終った頃、丁度さっき二の池の鴨を追い出していたライバルが手ぶらで表れたが、今度はこっちが先を越した形になった。

ゴイサギ

※「ゴイサギ」と書かれた部分をクリックするとビデオが起動します。


平成17年1月23 日

  去年鴨を獲った二の池に近づくとコガモが10羽ほど飛び出すが羽合せず。続いてバンが飛び出し、これに鷹が掛かるが引き止める。バンは池の中のガマの枯葉の中に消える。最後にカルガモが飛び出して一応これで全ての獲物が飛び出した様で有る。これまたいつもの様に風下から池を時計回りに回った所で、コガモとおぼしき鴨が飛び出し、斜め上に飛んで行くがスピードがコガモにしては遅い。少し遠いと思ったが、鷹も暴れずうまく投げられてくれて、吸い付くように下から結ぶ。落草あたりに行くともう羽を引いていて写真を撮っている間に胸肉まで食い下がっていた。据上げて丸( 丸肝の事:心臓)を飼い、ついでに赤肝(肝臓)も与える。ハシビロガモのメスであった。


  その後、きのうゴイサギを獲った所を通って帰ると今日はオオバンの羽が落ちていた。昨日はコガモだったが、今日はオオバンが捕まった様である。 犯人はここで冬を過ごす野生のオオタカです。いつもこの池の近くのワンドで見るオオバン5羽が今日は1羽も居ない筈である。

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     ハシビロガモ♀                     冬羽根のバン

※「ハシビロガモ」と書かれた部分をクリックするとビデオが起動します。


平成17年1月30日(日)

  この日を最後と思い出掛ける。今日は場所を替え本流から外れた支流を狙う。クリークと言った方が相応しいかもしれない。前回中央から鴨が出たので中央の土手に体をさらすと今日は下のほうからコガモが1羽飛び出して、大型の鴨が泳いで下流のほうに消えて行く。それ以上深追いをせず、 30分ほどして先ほど大型の鴨の出た所に急に体を表すと、マガモのオスが泳ぎ出して下流に向かう。距離にしたら5m位だが飛んでくれないと狩にならないので、こちら岸を鴨に合わせて走る 。やっと飛び出すが、相手もなれたもので、水面を離れず30m先で鷹が掴む寸前でボチャッと川の中に逃げられる。鷹は近くの木に止まり、それを見た鴨は安心して飛んで行ってしまった。その後、川岸を走った為に長靴が濡れたので、そのまま川に入り対岸のススキの間に隠れているはずのバンを追い出す。1羽出たが、対岸までの2m足らずの間を飛んだだけなので羽合わせた時にはもう対岸のススキの根元に飛びこむ所であった。その後、振り鳩を行ってその鳩で忘飼いをして今年の鷹狩を終了する事にした。

今猟期最後の記念撮影


 本来なら2月15日迄続けて、マガモとノウサギを獲りたかったが、出張に行かなくてはいけなくなったりと、他にも色々な事情が重なり今日で終了する事にしました。特に2月になるとノウサギとの出会いが多くなるので楽しみにしていたのに残念です


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