果実酒のビンをきれいにふくと、あざやかな深いルビー色が浮かび上がってきて、
明け方の空の光りにキラキラ映って、とってもきれいで、寝不足の目にしみこんだ。
ビンの中には、色も形も大きさもまるで違う果物がごろごろしていて、
おもちゃ箱を見ているみたいだ。

おまけにお酒の色がたまに変わって、
たしか小学生の時には淡いピンク色で、中学生のころは深い青で、
高校生の時は甘酒みたいになっていて、大学生の時には透明だったかなあ。
遠い記憶をたぐりよせているところで、 今日最初の電車の音が私の住む住宅街に静かに響いてきて、
家のなかで唯一起きていた私を見つけたネコに、カツオの臭いがするざらざらしたキスを
足首にもらってしまい、

ページ 1-2

朝のごはんを用意してあげなければならなくなった私は、
すぐに現実に引きもどされてしまった。

ページ 3-4

ページ 5-6

せっかくあげたごはんのニボシで遊びはじめてしまった
ネコと時計を見ると、もう朝の5時少しを過ぎていた。

ページ 7-8

ページ 9-10

出勤時間まであと少ししかなかったけれど、
少しは寝ておこうと思ったので、

ページ 11-12

ほこりまみれになっていたパジャマを着替えなおして
ふわふわした気持ちを抱えてベッドにもぐりこんだ。

ページ 13-14

ページ 15-16

ページ 17-18
-----おしまい-----

気持ちのよい眠気が小さな丘に写真をうめた
あのころを誘って
夢になった。
-5-
-6-