ある時、今の婚約者でもある彼氏に<私の誕生日のお祝いをしてくれる>とのことで、 BGMにと思って、お気に入りのCDを何枚かと、空のペットボトルに果実酒を詰めて アパートにおじゃました。 あらかじめ用意してくれていた赤ワインを2人で1本空けたあとでちょっとウソをついてみた。 |
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その時はルビー色だったのをいいことにして、変わったワインが家にあったから 飲んでみないかと言って、あの人の返事も聞かずに、 空になっていたワイングラスにそそいだ。 |
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「んー..............ちょっとクセはあるけど、飲めないことはないかな。 始めは苦いけど、あとから甘くなって、のどの奥でちょっと熱くなって、 で、最後はスーっとする。 慣れるまで時間がかかるかもしれないけどね。」 |
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そういいながらも、もう1杯もらえるかなと、空になったワイングラスを軽く振った。 ついさっきまで、深いルビー色だった果実酒が、 いつのまにかきれいなシャンパン色に変わっていた。 |
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へえ、色まで変わるの?なんて名前のワインなの?」 「ふふふ、もうすぐ分かるからね、それまで内緒。」 いつのまにか母の口調が乗りうつってしまったらしい。自分で自分に笑ってしまった。 |
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ちょうどその時、CDチェンジャーが3枚目に移って、1人の女性シンガーが私の記憶を揺さぶって 遠い昔に、どこかで聴いたことがあったメロディーとシンクロ率が上昇して 私の中のふわふわした気持ちを、お腹の中であったかくさせた。 |
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「どうしたの?楽しそうだね。」 「あのね、28歳の今になって気がついたの。今流れているこの曲。ほら、27歳で死んでしまった ジャニス・ジョプリンていたでしょう? |
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私の母親がね、よく鼻歌を歌っていてね、それって、 この<ふたりだけで>っていう曲だったのね。」 |
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やっぱり直球ストレートもストライクが決まると 気持ちがいいものだなと思った私は、 ずいぶんと思いきって言ってしまった。 |
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「私と結婚しませんか。」
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