「たまこちゃーん、たまちゃーん。ちょっと降りてらっしゃーい。」 |
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「おかーさん、なあに?」 | |||||||||||||||||||||||||||
子供のころの私は言葉にうまく力をいれることができなくて、他の多くの子達のように、 上手に『おかあさん』と言えなかった。 |
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読みかけていたマザーグースのパン小僧の話が気になっていたので、 パン小僧のページをつかんだまま、1階の母親の所に向かった。 |
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「あのね、たまちゃん。これからお家の裏の丘に行くから、 たまちゃんの大好きなものを持っていらっしゃい。」 |
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「だいすきなもの?いっぱいあるよ。どんぐりのコマとか、 うさちゃんとか、7色くれよんとか、あとね、あとね、 |
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この前のどうぶつえんのね、ゾウさんとキリンさんとラスカルといっしょのお写真とかね、まだね、いっぱいあるよ。」 | |||||||||||||||||||||||||||
「うん、そうゆうの。」 | |||||||||||||||||||||||||||
「あとね、てんとうむしの髪の毛 むすぶやつも」 |
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ページ 7-8 |
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「じゃあ、それも一緒に持っておいで」 | |||||||||||||||||||||||||||
誰かに自分の大好きなものを見せるのがわくわくするのは、 今も昔も変わらないみたいで 丘に行ってから何をするのかも聞かないまま、 マザーグースをほうり投げて、両手いっぱいに <だいすきなもの> を抱えて、 ひとつひとつ母の足元に並べた。 |
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「じゃあね、たまちゃんの <だいすきなもの> をみんな、このお母さん特製の バスケットに入れましょうね。」 |
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ページ 17-18 |
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あのころの私の <だいすきなもの> を、バスケットに入れている母の顔が なんだか楽しそうで私もつられて、一緒に手伝った。 |
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大人が楽し気に何かをたくらんでいる顔は、ちいさな私にちょっとした秘密を 共有させてくれて大好きだった。 |
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