ラ米諸国の選挙制度

共産党一党支配制の典型的社会主義国家キューバを除く18ヵ国全ては、複数政党を前提とした選挙制民主主義体制を採っている。

1)大統領

大統領(国家元首)選挙は、ラ米18ヵ国の内の13ヵ国では、一定得票率に達しない場合、次点候補者との決選投票に進む。残る5ヵ国(下表中国名に●を記す)では、一度の大統領選で最高得票者が当選する。国民の民意反映と言う意味では、選挙人方式を採る米国より民主的と言える。
 いずれの場合も大統領には、行政上の最高権限が付与されている。米国やフランスなどと同様だが、ドイツやイタリアなどとは異なる。
 米国と異なり、一個人に対し多選乃至は連続再選を認めない国が大半だが、例外も6ヵ国ある(下表の国名の後に連続再選への憲法改定年を入れる)

1

再選の可否

任期

国名

国数


@

再選そのものが
不可
4ヵ国

4

グァテマラ及び●*ホンジュラス

2

5

パラグアイ

1

6

メキシコ

1

A

連続再選が不可
(計7ヵ国)

4

ドミニカ共、コスタリカ及びチリ

3

5

エルサルバドル、パナマ、ペルー、及びウルグアイ

4


B

連続再選が可能
(計7ヵ国)

4

アルゼンチン19946月)、
ブラジル19976月)、
コロンビア200510月)、
エクアドル20089月)

4

5

ボリビア20092月)、ニカラグア20141月)

2

6

ベネズエラ199912月)

1

 上表中Bについての補足;

  • 左派政権の4ヵ国では、このための憲法改定(通常、国民投票を経る)は今の政権党により実現された。
  • 中道左派5ヵ国で可能なのは、ブラジルとアルゼンチンの2ヵ国のみ。だが、このための憲法改定はいずれも中道右派政権下で行われた。
  • 右派及び中道右派計7ヵ国中、連続再選可能はコロンビア1ヵ国のみ。*ホンジュラスは、20112月、憲法改正への国民投票自体は合法化(未実施)
  • 中道のドミニカ共和国では、恒常化していた連続再選が2012年選挙から禁止

キューバの最高指導者は、国家評議会議長である。議会の形態とも言うべき人民権力全国会議が、5年毎に、その幹部で成る国家評議会メンバーを選出し、その中から選ばれる。社会主義国では名称こそ異なっても、個人独裁の北朝鮮を除くと、一般的な方式、と言える。ただ、国家を指導するのは共産党であり個人ではない、と原則があり、通常、一個人が最高指導者を務めるのは一期のみなのに、この国は連続二期となっている。それも20124月に開催された共産党大会で決まったばかりで、そもそも多選規定自体が存在しなかった。

2)議会

 キューバを除くラ米18ヵ国では、立法権は議会に属する。
 米国同様二院制を採るのはメキシコ、ドミニカ共和国及び南米7ヵ国、また一院制は中米6ヵ国と南米3ヵ国で、下表の通り

2

二院制

一院制

国名

上院

下院

国名

任期

定数

任期

定数

任期

定数

ブラジル

8

81

4

513

ベネズエラ

5

165

チリ

8

38

4

120

ペルー

5

120

メキシコ

6

128

3

500

ニカラグア

5

92

アルゼンチン

6

72

4

257

パナマ

5

71

パラグアイ

5

45

同左

80

グァテマラ

4

158

ボリビア

5

36

同左

130

ホンジュラス

4

128

ウルグアイ

5

30

同左

99

エクアドル

4

124

コロンビア

4

102

同左

166

エルサルバドル

3

84

ドミニカ共和国

4

32

同左

150

コスタリカ

4

57

大統領と任期が異なるのは;

  • 二院制ではブラジル、アルゼンチン、チリ夫々の上院(いずれも大統領より長い)及びメキシコ下院(大統領の半分。米国同様)
  • 一院制ではエルサルバドル及びベネズエラ(いずれも大統領より短い)

 国会議員の選出は、一般的に民意吸収度の高い比例代表制を導入しており、且つ大統領選と同時に行う総選挙方式を採用している。下記諸国が例外;

3

選挙区制導入諸国

選挙区の対象(各国下段は総選挙関連の特記事項)

ブラジル

上院。各州3名の選挙区制。計81名

総選挙の際、州毎に1名ずつと2名ずつを交互に選出

メキシコ

下院。300選挙区1名ずつの300名の小選挙区

下院議員は任期が大統領の半分のため中間選挙あり

ドミニカ共和国

上院は小選挙区

ボリビア

下院は全議席を各県113名ずつ配分の中選挙区

ベネズエラ

113議席を68小選挙区、19中選挙区及び3先住民に配分

パナマ

一院制(全71議席)。26議席について小選挙区

総選挙方式を採らない(*ベネズエラ、ドミニカ共和国は上欄と重複)

コロンビア

議会選は大統領選に2ヶ月半先行

ドミニカ共和国

議会選は大統領選の2年後(中間選挙の性格あり)

ベネズエラ*

大統領(6年)と議員(5年)の任期のずれによる

エルサルバドル

大統領(5年)と議員(3年)の任期のずれによる

 上記以外でも、アルゼンチンでは2年毎に下院が半数、上院が3分の1ずつ改選(メキシコ及びドミニカ共和国のごとく中間選挙の性格が強い)。
また、チリの上院議員は総選挙毎に半数ずつ改選(ブラジル同様) 

選挙制度上は、概ね下記に区別できる。

4

選挙制度

議会制度

比例代表制
(拘束名簿*)

一院制
7
ヵ国

グァテマラ、ホンジュラス、エルサルバドル、ニカラグア、コスタリカ、
エクアドル、ペルー

二院制
7
ヵ国

メキシコ上院、ドミニカ共和国下院、
アルゼンチンコロンビア、ボリビア上院ウルグアイ、パラグアイ

比例代表制
(非拘束名簿*)

二院制
2
ヵ国

ブラジル下院、チリ

小選挙区制

二院制

ドミニカ共和国上院

小選挙区比例代表並立制

二院制

メキシコ下院

小選挙区比例代表併用制

一院制
2
ヵ国

ベネズエラパナマ

二院制
2
ヵ国

ブラジル上院、ボリビア下院


*拘束名簿方式:政党が提出する候補者リストから順位に従い当選者が決まる
*非拘束名簿方式:政党リストから有権者が候補者を選択



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