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ショウは天界でも裕福な家庭の生まれだった。父は人間界で言えば官僚クラスで母は名の知れた名家の娘だった。
 ショウは生まれつき病弱で色素が薄く光や紫外線に弱いためあまり外に出ない生活を強いられていた。
 しかしとある日事件が起こった。ショウが五歳の誕生日を迎えたある日、政府の重大な事件に絡まれショウの父と母はショウの目の前で殺されてしまった。いわゆる殺人事件だ。
 身寄りの無くなったショウは親戚中に煙たがれる存在になってしまったが唯一父方の遠い親戚が快く迎えてくれた。
 だが快く迎えてくれたのには訳があった。ショウが引き取られてから十五の誕生日を迎えるまで約十年間叔父から毎晩のように性的虐待が行われていた。
 天界では同性の恋愛などはタブーである。ましてや性行為などが明るみに出てしまうと天界追放になってしまう。

ショウと叔父の関係はショウの言動などから噂にはなっていたが人前でやるような行為ではないので誰も見たことが無くただの噂とされた。

叔父はそのようなことをする代わりにショウが好きな勉強を色々させてくれた。
 ショウは人間界のことを色々勉強した。英語、フランス語、スペイン語、ドイツ語、日本語、中国語をかじる程度だが学び、主要国の文化、経済、歴史や地学、生物、化学、計算等を頭に叩き入れた。特にショウは島国、日本の独特な文化に興味を持ち他の国以上に学んだ。
 そして叔父からの性的虐待も無くなり3年経ったある日に事は起こった。
 その日、ショウは珍しく一人で出掛けていた。いつもは叔父か叔母と一緒に出掛けるのだが二人仲良く旅行に行ってしまっていた。
 勉強に必要な物を買いに行ったが欲しい物が無くいつもなら行かない所へまで足を運んだ。それが間違いであった。帰りが夜になり辺りが暗くなってしまった。
 家まであと少しというときに後ろから誰かに羽交い締めにされて建物の陰に連れ込まれた。ショウは何が起こったか分からずもがいていると頬に痛みが走った。
 頬を殴られたのだ。相手は自分よりも大きく暗いため顔が見えない。ショウは怖さから体の力が抜けてしまっていた。

体に纏っていた物を引きちぎられるとそいつはいきなりショウの慣らしていない蕾にたかぶった自身を挿れようとしたのだ。
 さすがにショウも事態に気付き暴れたが押さえつけられてしまい無理矢理挿れられてしまった。蕾は切れ血がショウの内股を伝う。
 男は何度となくショウを突き上げショウの中に白濁を放つと意識を失ったショウを置いて去って行ってしまった。
 その後ショウは通行人に助けられ病院に送られたが同姓に強姦されたことがバレてしまいショウの心身が治り次第処分が決まることになった。
 その事が起こってから一ヶ月以上が過ぎたときショウの処分が決まった。ショウは決まり通り五日後に天界追放になってしまった。
 その後すぐに大天使様から犯人の事を聞かされた。犯人は悪界によく行っているらしい堕天使だった。そういえばあの時ショウは堕天使の多く住む街まで行っていたのだ。
 久しぶりに家に帰ると叔父と叔母は腫れ物を扱うようにショウに接した。叔父の話によるとショウの入院中に犯人は何回も家まで来て謝っていったと言う。

追放の日が刻一刻と近付いていってる。ショウは書物を取り出し追放された後のことを考えていた。たぶん天界から落ちて人間界に行くことになる。
 今までの例からいって落ちたときにまだ生存している可能性は五十八%だそうだ。その後生きていかれる可能性は落ちたときに生存している人の十六%。全体の九%にすぎない。つまり天界追放は死を意味している。
 しかしもし落ちたときに生き残れても言葉が通じないかもしれない。それに今まで自分は両親や叔父母に全てをしてもらっていた。一人で生きていかれるのか。それも問題である。
 今後に頭を抱えているとどこからか声がした。聞いたことがある声だった。たぶん玄関にいるのだろう。叔父と叔母は買い物に行ってしまっているため家には自分だけだ。
 もしまた何かあったらと言って叔母は自分を置いていくのを躊躇ったが自分は大丈夫だと言って出掛けさせた。
 ドアの覗き穴を覗いたとき逆光でシルエットだったがショウは気付いた。あいつだ。自分を襲った犯人だ。
 恐怖で後ずさったら物を倒してしまい大きな音がした。声が止むとドアノブを回す音がした。運悪く鍵を閉め忘れている。

ショウは足がすくんでしゃがみ込んでしまった。ドアが開くと目の前にはあいつが居た。恐怖で声が出ない。
 するとあいつはいきなり土下座してきた。悪界に行っている間に自分のせいでショウが天界追放になったのを知りどうしても謝りたかったらしい。
 あいつも天界追放になるそうだが悪界に逃げ込むことになったと言った。そしてショウも一緒にに悪界に来ないかと言ってきた。
 ショウはそれを断った。当たり前だ。自分を強姦した犯人と一緒に悪界へ行くならば人間界へ一人で行った方がましだ。
 ショウは足に力を入れ立ち上がるとあいつを家から出した。もう一生会いたくない。声も聞きたくないと言って。
 あいつは何か言いたそうな声をあげたが渋々帰ってったらしい。ショウはドアを背にして座り込むと声をあげて泣いた。今まで溜まった物が一気に噴き出してきた感じだ。
 叔父と叔母は帰ってくると玄関で泣き疲れて寝ているショウを見て吃驚したが後でショウの話を聞きショウを誉めた。
 そして運命の日がやってきた。前の日は不安で一睡も出来なかった。日が昇ると同時にベッドから起き上がり綺麗に部屋を片付けた。

人間界にはなにも持っていってはいけないのだが父と母の写真くらいはいいだろうか。ペンダントに親子三人で撮った最後の写真を小さく切り入れると首に付けた。取られてしまうかもしれないが最後まで一緒に居たい。
 写真の中の父と母は笑っていた。自分も笑っていなければ。そう思っていると叔父の声がした。もう行く時間だ。
 叔父と叔母と一緒に家を出て執行所へ向かう。もう恐怖など無かった。
 執行所へ着くとショウだけ別の部屋へ通された。着ている物を全て脱ぐ。ペンダントを取ろうとしたがさっきはあった留具が無くなっていてチェーンが輪になっていた。
 執行所の人が引きちぎろうとしたが細くてそんなに強度が高くないはずのチェーンがビクともしない。仕方がないので付けたままにすることにした。

場所を移るとそこは広い広間のようだった。床の真ん中には穴が開いており人間界が見える。叔父と叔母はガラス一枚隔てた小さな部屋にいた。たぶんそこが親類などが見ている部屋なのだろう。
 ショウは穴の前に座るよう言われ素直にそれに応じた。ショウの前にいる大天使が処罰の内容などが読み上げる。右斜め後ろには羽を切るための鎌をもった大天使が居る。左斜め後ろにはショウを穴へ落とすための大天使が居る。
 もう逃げられないのだ。前の天使が全てを読み終わると右の翼を広げるよう言われた。純白の翼が広げられる。すると突如右の翼の根本に激痛が走った。鎌が振り降ろされたのだ。
 鎌はあまり研がれていないらしく切れるというよりもちぎれるような感じであった。後ろから叔母の悲鳴が聞こえる。
 痛みにより意識が朦朧としてきた。ショウは叔父が自分の名前を叫ぶ声を聞くと穴に落とされた。それを最後に意識を失った。