ショウは溜まった物を吐き出すかのようにずっと話し続けた。途中カタカタ震えたり泣きながら喋っていた。そして最後に「僕の血も体も汚れてるからそんな綺麗な字はふさわしくないよ…」と言うと今度は押し黙ってしまった。
潤は話しかける言葉が見つからず煙草に火を付けた。何かに詰まると煙草を吸い始めるのは潤の癖だ。ふぅーと煙を吐き出すとショウが物珍しそうに見てきた。
「なに?」
「それって煙草…?」
「初めて見た?」
問いかけるとコクコク頷く。
「見るのは初めて。体に悪いけど美味しいんでしょ?」
「美味しいかはその人によるけどな」
潤が苦笑しながら言うとショウは吸いたいと目で訴えてきた。
「その前にショウ服着なきゃ」
煙草をくわえたまま言うとショウはハッと気付いたらしく腰の位置で下半身だけを隠していたタオルケットを頭まですっぽり被った。
「み…見ないでぇ…」
頭は良いらしいがどこか抜けてるようだ。
「あったかなぁ新しいパンツ」
煙草を灰皿に置きショウに背中を見せる形でタンスを探る。ちょっとするとケホケホ咳き込む声が聞こえる。振り向くとショウは灰皿に置いてあった煙草を持っていた。
「吸ったの?」
「ケホッ…吸ったけど…ケホケホ」
ショウにはあわなかったらしい。ショウの手から煙草を取り灰皿に灰を落とすとまた口にくわえた。
まだ咳き込んでいるショウに向かって服を放り投げる。とりあえずパンツとジーパンを投げ上を何着せようか迷ってたら後ろから声がした。
「…上はタオルケットあれば良いよ?」
潤はタンスを閉め煙草を消すとショウの方へ向いた。ショウはジーパンのチャックを閉めるところだった。
ショウはタオルケットを手に取ると端をぎゅっと握り羽織った。すると背中で窮屈そうにしていた左の翼をまるで伸びでもするかのように開いた。
翼は広げると二メートル近くあるだろうか。純白と言うよりも銀色に近い色をしていた。
ショウが翼を畳むと同時に腹の虫が鳴った。恥ずかしそうに俯きながら潤の目を見る
「お腹…すいちゃった…」
今は深夜十二時を回ったところである。潤も昼から何も食べてない。ショウは朝から食べていないのだろう。
「何か作ったら食べる?」
潤はクスッと笑って言うとショウは頷いた。
台所へ行き冷蔵庫の中を覗くとバター、チェダーチーズとルッコラ、そして生クリームを取り出し冷凍庫からは1食分に分けて冷凍しているご飯を二つと小分けのスープを取り出した。
潤は生活費を少なくするために自分で料理を作っている。昼も大学に自分で作った弁当を持っていってるほどだ。高校の頃から一人暮らしのために料理を勉強し始め今はその辺の主婦よりも上手くなった。
上手くなると同時に食材にもこだわりだし冷凍庫にはジャポニカ米とインディカ米を一食づつにしたやつや暇なときに鰹ベースや野菜ベース、鶏がらベース等の出汁やスープを作り使いやすいように冷凍している。
潤はご飯を電子レンジに入れて解凍し始めると深型のフライパンにバターを入れ火をかける。解凍し終わる頃にはバターが程良く溶けておりそこへご飯を入れ米粒にバターを絡ませる。
すると匂いに誘われたのかショウが台所にやってきた。潤の肩の所から顔を出し鼻をヒクヒクさせながらフライパンの中を覗く。
普通なら料理中にまとわりつかれ邪魔で仕方ないのだろうがあいつのせいで慣れている。潤は気にもせずに料理を続けた。
バターが上手く絡んだら凍ったままのスープをフライパンの中へ入れる。熱で徐々に溶け全て溶けきったところで生クリームを少し入れる。軽く煮立ったらルッコラを細かくちぎりながら入れ軽く塩コショウをする。最後にたっぷりとチェダーチーズを入れよく混ぜる。
これで簡単リゾットの出来上がりだ。
お皿に盛りダイニングテーブルに置く。ショウはすでに座っており鼻先が付きそうなほど皿に顔を近付けている。
スプーンをショウに渡し潤も座った。
「いただきまーす」
「いっただっきまーす!」
一口スプーンに掬って冷ましていたらショウがのたうち回った。
「はふっ…はふっ…あっ…熱い〜!」
「出来立ては熱いに決まってるじゃん」
言いながらショウをちらっと見ると赤くなった舌をペロッと出しながら今にも泣きそうなくらい目に涙を溜めている。
バカかこいつは…。
「ちゃんと冷ませよ」
「だってお腹空いてたんだもん…」
「もー…」
俺は自分のスプーンをショウの前に差し出した。スプーンの上には先ほど冷ましてたリゾットが乗っている。
「へ?」
「ほら、食べな」
「…いいの?」
口の中を大火傷されるよりかましだ。
ショウはパクっとスプーンを口にくわえると至福の笑みをこぼした。
「おいしい?」
「うん!超美味しい!」
潤はクスリと笑い自分も食べようとした。
と、その時電話が鳴った。
「誰だよ…」
ショウはフーフーとリゾットを冷ましながら食べている。俺は電話に出た 。
『もしもし?松潤?俺!俺っ!!』
俺俺ってオレオレ詐欺かよ…。
「うちに松本潤は居ますが松潤は居ません」
『俺だよっ!あなたの親友相葉雅紀〜!』
親友って言うよりも腐れ縁じゃん。
「知ってるよ」
『ねぇ!これから行くよ!』
「はっ!?」
『行・く・よっ!』
いや、聞こえてるから…。
『じゃあ』
「待て!今来るな!」
『えー!いつもは喜んで迎えてくれるのに〜』
「喜んで迎えてないし」
『松潤のご飯食べたい!』
「だーめ。」
『あっ…もしかしてお客さん来てるの?』
ナイス相葉ちゃん!
「あーうん来てる」
『俺も一緒に遊ぶっ!』
バカか…。
「遊んでるわけじゃないから」
『じゃあエッチ中?』
「違うって!」
『そっかエッチ中だと松潤絶対に電話出ないもんね!』
……。
「あのさぁ…」
『ナニナニ!?』
「もう切って良い?」
『やぁ〜だぁ〜!』
いい加減ウザいし…
「大事な人来てるから来ないでね、それじゃあ」
『あっ!ちょっ!!』
ガチャッとちょっと乱暴に電話を切ってやった。ショウはその音にビックリしたらしく目を丸くしてこちらを見てる。
「ケンカ?」
「違うよ。いつものこと」
そう言いながら潤は椅子に座ってまたリゾットを食べはじめた。相葉ちゃんのせいでチーズが固まってきてしまっている。
「いいなぁ潤は仲良い友達居て」
少し淋しそうな目をして言った。ショウは幼い頃に滅多に外に出なかったからあんまり友達が居なかったのだろう。
「別に仲良い訳じゃないよ。幼稚園の頃からの腐れ縁」
「でもそれだけずっと一緒に居るんだから仲良しじゃん。一緒にいるのがヤなら縁切ってるでしょ?」
その通りだ。もし嫌なら多分相葉ちゃんとはとっくに縁を切ってるだろう。
「動物はね、独りじゃ生きていけないんだよ。独りじゃ孤独に負けちゃうから。だから必ず誰か空気みたいな存在の人が傍に居るんだよ。」
そう言いながらもショウは黙々と食べている。
確かにそうかもしれない。昔っからいつも三人で居た。誰かが欠けるとなにか空気が変だったものだ。まぁあの時からは俺と相葉ちゃん二人になったが…
「そうか…仲良いのかもな…」
「でしょ?ごちそーさまっ美味しかったよ」
ショウは満腹そうな笑顔をしながら上っ腹をさすっている。
「潤は食べないの?」
箸が止まっていたらしい。
「あー…もういいや…」
「潤は少食?もっと食べなきゃ駄目だよ?」
俺の母さんかよ…
「ちょっと行かなきゃいけない所があるんだ。あっちでもなんか食えるし」
「これから行くの?」
ショウは悲しそうな顔をして聞いてくる。
「あぁ。ショウの為だよ。」
「俺の為?」
表情をコロコロと変え聞いてくる。面白いくらいの変わりようだ。
「そう、ショウの為。朝までには帰ってくるよ」
「うん…」
寂しいのか俯いてしまったショウの頭をくしゃくしゃと撫でる。
「ちゃんと帰ってくるからさ」
「うん…留守番してるから…」
俺は食べ終わった食器をキッチンに持っていき洗う。その間中ショウは椅子の上で小さくなっていた。
「ショウ?」
「なに…?」
ショウの声のトーンが沈んでいる。
「ベッドの辺りに携帯があると思うんだけど取ってくれない?」
「ケータイ…電話?」
「そうそう」
ショウはヒョイと椅子から降りると携帯を探し始めた。はたしてショウはちゃんと携帯がどんな物か知っているのだろうか?『ケータイ電話』と言ったあたり機能は知っているらしい。
ショウに背を向けて洗った食器や調理器具を拭いていると「あっ」っと言う声と共に先ほどからしていたガサガサという物音が無くなった。多分見つけたのだろう。振り返ると目を爛々に輝かせ携帯をいじっているショウが目に入った。
「ショウ?」
食器を食器棚に片すとショウに近付いた。いつの間にかデータフォルダからアプリを起動させゲームをしていた。俺はショウの手から携帯を取るとアプリを一時中断した。
「あー!後もう少しで次の面に行けたのにー!」
頬を膨らまし不満そうな顔である。
「ちゃんと終わらせてないから大丈夫だよ」
「ぶー!」
「持ち主は俺だよ?メール送らせてよ」
まだふて腐れているショウを横目に俺はあの方にメールをした。
──お久しぶりです。今から会えませんか?──
返事はすぐに帰ってきた。
──ほんと久しぶりだね。フられたのかと思ったよ。それではいつもの店で──
ふと気付くと後ろからショウが画面を覗き込んでいた。
「プライバシーの侵害だよ」
「ゲームやりたいんだもん」
ゲームの続きを今やらせていたらあの方を待たせてしまう。なんとしてでもそれは避けたかった。
「ごめん。もう出掛けるよ」
鞄をひっつかむと携帯を入れた。
「あ〜…」
なんとも情けない声である
「ちゃんと寝とけよ?そんな怪我してるんだから熱出るかもしれないし」
ショウの背中の傷は軽いものではない。
「うん…」
「俺が家出たら鍵閉めとけよ。」
「わかった…」
ショウはまた俯いてしまった。ゲーム出来ないのが嫌なのか一人になるのが寂しいのか。多分両方だろう。
俺は靴を履くと玄関を開けた。
「それじゃ」
バタンと音がして玄関が閉まると少しして鍵を掛ける音がした。雨はすっかり止んでいて雨の後独特の香りがする。
俺は駅まで小走りで進んだ。空気はヒンヤリとしているので汗はかかない。上着を置いてきてしまったのはヤバかっただろうか。
駅に着くとちょうどホームに電車が滑り込んできた。終電間近だから人は疎らだ。
三つ先の駅にいつもの店はある。北口を出て徒歩八分、雑居ビルの地下。重い扉を開けるとカウンターにあの方は居た。
「こんばんわ、大野さん。」
「久しぶりだね潤くん。会いたかったよ」
大野さんは若くしてデザインの会社を立ち上げた社長さんだ。年齢は二十代前半。初めて会ったのは俺が高二の時、相葉ちゃんと東京へ行き新宿の二丁目を彷徨いていたときのことだ。
「ええ、僕もです」
俺はシャンパンカクテルを頼んだ。シャンパンをベースにアロマティックビターズと角砂糖が入った琥珀色のカクテルだ。アルコール度数はそんなに高くない。
前に調子に乗って度数の高いカミカゼを頼んだときは流石に酔いつぶれてしまった。あれも良い思いでだ。
そして大野さんが飲んでいるのはカルーアミルク。カルーアを注いだグラスにゆっくりとミルクを注ぐと下にカルーアがたまり二層になる度数の低い甘いカクテルだ。
「潤くん何かあったんだろう?言ってごらんよ」
感付くのが早い人だ。
「ええ…ちょっと…人?…を拾いまして…」
「『人?』って?犬とかじゃないの?」
「人…ですね…それで怪我してるんですよ…だから追い出すわけにもいかないし…それに…」
「それになんだい?」
「…好きだった人に瓜二つなんですよ」
「それは前に言ってた亡くなったって子?」
「はい」
大野さんに聞かれるとついいろんなことを話してしまう。初めて会ったときからそうだ。
「そうか…」
すると大野さんは俺の頭を優しく撫でた。
「病院には連れていったのかい?」
「連れていくわけにはいかないんです…」
「お金なら僕が出してあげるよ?それに雅紀君だって居るじゃないか」
「相葉ちゃんなんかに会わせたらどうなることか…僕も理性保っているの大変なのに…」
「まぁ雅紀君は本能に走るからね…」
そう言うと大野さんは苦笑した。そして鞄から財布を出すとお金を僕に差し出してきた。
「こんないいです、毎月貰っているのに」
目の前には福沢諭吉が五人。
「いつものは潤君のじゃないか。これでその子の傷が早く治るように栄養あるもの食べさせなさい。」
手にお札を握り込ませてくる。
「…ありがとうございます」
俺はそれを受け取ると鞄の中に入れた。
「その代わり今晩は楽しませてもらうよ?」
「はい」
大野さんは残りのカルーアミルクを飲み干すと会計を済ませる。その間に俺もシャンパンカクテルを飲み干した。最後は角砂糖が溶けたので甘かった。
「さぁ行こうか?」
「ええ、大野さん」
店を出て階段を上り地上に出ると右に曲がる。ちょっと歩くとすぐ町並みが変わる。そこはいわゆるホテル街。
「ここにしようか」
そこはこの街の中でも豪華で値段が高くて有名な所だ。決定権があるのはもちろん大野さん。俺はなにも言わずに入り口を潜っていく大野さんに付いて行った。
「潤君どの部屋が良い?」
「大野さんの好きな所で良いですよ」
別にどこだって構わない。
「じゃあここが良いかな…」
大野さんはちょっと悩み部屋を決めるとさっさと鍵をもらいエレベーターに向かっていく。自分から少し擦り寄って腕組んでみた。
「ん?どうした?」
「いや、なんとなく…」
するとエレベーターが降りてきて扉が開いた。そして降りてきたのは中年の男性となんと相葉ちゃんだった。
「やべ…」
大野さんの方を向いて顔を隠す。が、後ろから声がした。
「松潤」
「な、なに?」
「なんでもない」
この声は凄い怒っている時の声だ。俺は急いで大野さんの腕を引っ張りエレベーターに乗ると階のボタンを押し扉を閉めた。
「雅紀君と喧嘩でもしてるの?」
「喧嘩はしてませんけど」
階につくと大野さんから先に降り部屋の鍵を開ける。
「さぁ、潤君入って。」
ドアを開けてくれている大野さんの腕を軽く引っ張り部屋に入る。
「潤君先にシャワー浴びてきなよ」
「じゃあお言葉に甘えて」
風呂場の扉を開け中に入ると服を脱ぐ。なんでこういう所は風呂場がガラス張りとか鏡張りとかなんだろうか。まぁ湯気ですぐに曇って見えなくなるけど。
「ちょっと筋肉落ちたかな…」
シャワーのコックを捻る。だいたい最初は水が出てくるからちょっと避ける。
「はぁ…」
水からお湯に変わり頭から浴びる。一通り体を洗うとシャワーを止めタオルを取る。
「潤君まだ?」
「もう出ますよ」
腰にバスタオルを巻き肩にフェイスタオルを掛け風呂場を出る。
「お先にどうも」
「待っててね」
大野さんは唇に触れるだけのキスをしてきた。
「逃げたりしませんよ」
俺からキスをする。
「すぐ出てくるよ」
そう言うと大野さんは風呂場に入っていった。俺は鞄から煙草を取り出すと一本くわえ火を付ける。
一本目を吸い終わっても大野さんは風呂から上がる気配がないので二本目に火を付ける。
半分くらい吸ったところでシャワーの音が止まった。俺は煙草の火を消しベッドの端に腰掛けた。風呂場のドアが開く。
「お待たせ、潤君。」
大野さんが近付いてくる。
「潤君また煙草吸ったでしょ」
「バレました?」
「二十歳前だから吸っちゃ駄目でしょ〜」
そう言いながら大野さんは俺の顔にキスの雨を降らせてくる。
「大野さん…」
「智でしょ…?」
「ん…」
キスがどんどん深くなってくる。
「…はぁ…」
絡み合う舌と舌。
「潤」
俺はベッドに押し倒された。
「ぁ…智…」
胸の突起をいじられ出したくもない声が出てしまう。
「潤はここいじられるのが良いんだもんね?」
嫌いではない。寧ろ好きな部類になるのかもしれない。
「ん…ぁ…」
大野さんの左手が俺の腰に巻いているタオルを掴み取る。別に抵抗はしない。いつもやっていることだから。
「はぁ…あぁ…っ」
大野さんが俺自身を握り扱いてくる。最初はゆっくりと包み込むかのように。そして次第に俺を追い込むかのように速さが増し強く握り込んでくる。
「…智っ…」
自分の声が掠れている。
「なんだい…?」
「も…だめっ…イきそう…」
俺がそう言うと大野さんは俺自身から手を離した。
「や…っ」
「楽しませてもらわなきゃねぇ…?」
クスクスと笑う。
「え…?」
「そんな簡単にイかせる訳無いじゃないか」
そう言うと大野さんは俺自身の根本を紐で縛った。
「やだ…っ」
「やじゃないでしょ…?」
またクスクス笑うと扱きはじめた。
「あぁっ!やぁ…っ!」
イきたいけどイけない。行き場の無くなった快感の波が体中をグルグル回る。
「はぁっ…!?」
突然足を高く持ち上げられ蕾に指が入れられた。
「ひゃあぁっ…!」
「潤の中…凄い熱いね…」
そう言いながら中を掻き回してくる。
「ああぁっ!やっ…だ…っ!」
「潤のイヤはイイだもんね?」
耳元で囁かれガラでもなく顔が赤くなってしまう。
「取っ…て…っ」
「何を…?」
「ぁぁあっ…紐…取ってっ」
「やだね」
今日の大野さんはいつもに増して意地悪だ。
「っ…はぁああっ!」
「キモチイイくせに」
気付かないうちに中に入っている指の本数が増えていた。一本が二本に、二本が三本に。指の本数が増えるのに比例し動きが激しくなっていく。
「智…も…だめっ」
「何が駄目なの…?」
言いながらも手の動きは止めない。
「っく…ぁ…」
「ほら…言ってごらん…?」
空いている方の手で俺自身の裏筋をなぞる。
「ああぁぁっ!!」
「辛そうだね…ココ…イきたい?」
コクコクと頷く。
「潤だけイくのはずるいよね…?」
すると指が抜かれると同時に大野さん自身が入ってきた。
「ああぁぁっ!」
「っは…すごい締め付けてる…」
イイトコロを確実に突いてくる。
「ひぁあん…っ」
「潤はっ…ここがイイんだよね…?」
大野さんは俺のどこが感じる所かすべて知っている。わかっていて聞いてくるのだ。
「あぅっ…ぅ…んっ」
これ以上声が出ないように自分の口を手で押さえた。
「もっと潤の声…聞きたい…っ」
そう言うと大野さんは口を押さえている俺の手にキスをした。
「んっ…ぅう…」
首を横に振る。
「なんでっ…?」
「ゃ…だ…っ」
「声出させてやるっ」
「っ…ああぁぁぁっ!!」
イイトコロを抉るかのように突いてきた。
「あぁん!…さとしぃ…っ!」
「くっ…はぁ…」
すると大野さんは俺自身の根本を縛っていた紐を取ると攻め立ててきた。
「ひやぁ!…やっ…イくっ!!」
「俺も…っ!!」
俺が白濁を放つと同時に大野さんも果てた。
「ぁっ…はぁっ…はぁ…」
「潤君?」
「はい…っ?」
「ごめんね?無理させすぎたね…」
そう言いながら大野さんはワシャワシャと俺の頭を撫でまわす。
「そんなことないですよ」
「そう?」
「えぇ…」
「ははっ久しぶりだったからねぇ〜」
「…帰ります」
「え?」
「もう帰ります」
重い腰を持ち上げベッドから立ち上がったら腕を掴まれた。
「もう少し居なよ」
「いえ…帰ります」
「久しぶりに会ったんだからさ…もう少し居てよ…」
大野さんはハの字眉をさらにハの字にしている。
「待ってるんで…」
「拾った子かい?」
「えぇ…」
「ならしょうがないな…」
渋々だが腕をつかんでいる手を離してくれた。
「帰りなよ。なんかあったらメールでも電話でもしな?」
「はいっ」
俺は服を着るとホテルをあとにした。
駅に出たがもう電車が無いのでタクシーをひろう。真夜中の東京は信号にさえ引っかからなければすぐに目的地に着く。あっと言う間にアパートの前に着いた。
ドアの鍵を開け中に入ると部屋の中は真っ暗だった。多分ショウは寝ているのだろう。音を立てないようにベッドに近付く。思った通りショウはベッドの上で寝ていた。
そっと頭を撫で顔に掛かった髪を上げるとカーテンの隙間からほんの少しだけ漏れる月明かりがショウの顔を映し出した。頬には涙が伝った痕がある。しかもまだ乾いてはいない。
「…ショウ…」
潤がそう言うとショウは目を開けた。
「ごめん…起こしちゃった?」
「潤…っ」
ショウは潤の胸にギュッと抱きついてきた。
「っく…ふぇ…おかえりぃ…っ」
よっぽど一人で居るのが辛かったのだろう。泣きながら服を強く掴んで離さない。
「ただいま。一人にさせてごめんね…」
潤は指で頬の涙を拭った。目の周りは赤くなっていた。