日本の鷹道具U


作成2006年3月19日

このページの最終更新日は2012/06/25です。

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 このページでは四十二種類有ると言う日本の鷹道具をご紹介します。参考に宮内省編「放鷹」を見たらやはり四十二種類紹介されています。しかし、現在では使わなくなった物や市販品で代用されている物も有りますが、「放鷹」で取り上げている順番に合わせてご紹介したいと思います。但し、流派による名前の違いや形状の違いなど有りますので、これはあくまである流派で使われている道具であり、その説明とお考え下さい。決して何処かの流派の道具が違うなどと言うものでは有りません。

なお、新しく鷹道具に加えた物も参考にご紹介します。

28.餌合子:(エゴウシ)


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 合子(ゴウシ)とは元々香などを入れる小型の器の意味で、それがかなり古い時代(安土桃山頃か)に鷹の餌入れとしては使われ出した様です。今では最も良く使われる道具です。楕円形の手のひらに収まる器で、大と小の二種類(左が小 、右が大)のサイズが有ります。私はどちらかと言うと手が小さい方なので、小さい方が好きです。

この器には専用の携帯用ケースが付いていて、「放鷹」では餌合子覆いと呼んでいますが、これは元々合子に使われていた袋状の入れ物の名前が今まで生き延びて来たと考えられます。鷹道具の中には全く違う名前が付いている物が良く有り、私は単純に餌合子入れと呼んでいます。

下の写真では分かりにくいと思いますが、蓋の内側は削られて丁度カスタネットの内側の様になっていて、音が響きやすい構造になっています。

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 丁度去年、餌合子入れを作ったときの写真が有るので紹介します。餌合子入れ、丸鳩入れ、餌スケ入れ等全て、木型に合わせて革を整形し、漆(今は人工漆)を塗って仕上げます。この作り方は私の父親が知っていて、道具と技法は私が受け継ぎましたが、それ程難しい技術では有りません。これを一般に漆皮(しっぴ)と言いますが、これで出来ない形は無く、昔は兜等の装飾にもに使われました。今で言う所のガラス繊維にエポキシ樹脂をしみこませて作るFRPと全く同じ原理です。下の写真の左は型から抜いた所で、右は下地処理を済ませて漆を塗る直前の物です。出来上がりは一番上の写真の左側で、とりあえず使うのに問題ないと言う程度の状態です。この後さらし(半年位)と研ぎと塗りを繰り返し、3年ほど掛けて仕上げます。


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 この餌合子は鷹の餌入れとして、常時携帯して中には作り餌を入れておきます。場合によっては初めの食い付かせ(この時は直接餌合子は使いませんが)から昼出しまで餌合子のみで仕込む事も有ります。大変便利な道具で、渡りもこの餌合子を打ち鳴らして呼びます。究極の鷹道具だと思っています。これだけの道具ですから、伝統的に幾つかの条件をクリアしていないと餌合子とは呼べません。


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 餌合子の条件1:左の写真は下を向けても蓋が落ちない所です。さらに、今親指で持っている所の少し下の中央部分を押すと蓋が簡単に落ちます。この様に下を向けて使う道具では有りませんが、蓋を上にして、真ん中を押しながら蓋を親指と中指ではずします。つまり、普通に持って いても蓋は開かないが、横を押すと簡単に開く構造になっています。これは昔ながらの方法で作ると自然とこうなります。

 餌合子の条件2:右も同じく下を向けても勝手に抜けない構造になっています。しかし、抜くのに苦労する位堅くては困りますが、実際は餌合子入れの持つ弾力性が保持しています。この為、やはり漆皮でないと この微妙な感じは出せません。

※先日インターネットオークションで金蒔絵の餌合子が出ていましたが、落札価格が何と16万円でしたが、素晴らしい物でした。(2005年)

29.口餌籠:(クチエカゴ)


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 餌合子に次いで二番目に多く使われる道具です。名前の通り「口餌」を入れる籠で、今はほとんど鳩の羽ずると呼ばれる胸肉の塊を入れて使っていますが、たまにはヒヨドリを使ったりもします。籐で作られていてかなり丈夫ですが、一猟期で汚れるので毎年新しくしています。基本的にはオオタカに使う物ではなく、ハイタカやそれ以下の小鷹用に殺したスズメを入れて持ち歩く為の物ですが、冷凍のスズメしか手に入らなくなってしまった現在は鳩の羽ずる用になっています。オオタカの場合、仕込み中や狩猟中に使います。また、口餌籠も二種類あり、羽ずる用とバン用が有ります。

※クチエカゴを一猟期で廃棄するのは衛生上の配慮からです。


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 上の写真の左はキジバト用(本来のサイズ)、右がレースバト用で口のサイズが違います。右側の写真は、着物を着た時に帯に挟む為に下げ緒が長く、他の口餌籠と比べてもらうと分かりますが、革紐が一本足りません。これが本来の姿で、今はベルトに付けるので外れ防止の為に、根付に掛ける革紐が1本付いています。この口餌籠は宮内庁(省)の物と比べると横に編み込んだ籐の幅が0.3mm広いものになっているので、正規の幅の約半額の5千円で手に入ります。(残念ながら、現在は一般への小売はしていないそうです)

 籐と口餌籠の製作工程を紹介する「籐と口餌籠」はこちらからお進み下さい。

籐と口餌籠

最終更新日:2008年8月6日

30.丸鳩入れ:(マルバトイレ)


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 左の写真は後ろと前から見た物、右の写真は下と上から見た物です。漆皮製で叩くと独特のコツコツと良い音がします。

 この丸鳩入れは本来、仕込みに使う殺した鳩(丸鳩)を入れる為の物ですが、オオタカに使う時は丸嘴と言う仕込みの時に殺した鳩を鷹から取り上げた後、この中に入れて隠します。どちらかと言うと丸鳩を積極的に使う隼用の道具と言った方が良いと思いますが、「放鷹」によれば、仕込みの一時期にこれを叩いてオオタカを仕込みます。やはり漆皮でないと出せない音で、紙製の一閑張りでは良い音は出ません。羽ずるを左手に持って、策でこの丸鳩入れをたたいて鷹を呼ぶ事も出来ます。

31.エスケ:


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 餌の器(うつわ)と言う意味ですが、今は飲み水入れになっています。古くはこれで餌を飼っていた様ですが、餌合子や「鷹部屋日記」で紹介している各種餌板に取って代わられて飲み水の係りに甘んじています。これも携帯に便利な様にエスケ入れと言う漆皮製の携帯用ケースが付いています。少し浅めの汁椀を使っていますが、最近はみんな深くなってしまって適当な物が無くなってしまいました。これも簡単に外れない工夫が有ります。また、鷹部屋で使うならば 昔と同じく茶碗(ご飯)がいいでしょう。

32.鈴:(スズ)


 正式には尾鈴。鷹の尾羽に付けて居場所を確認します。この中で黒く見えるのが鉄(はがね)で出来た鈴です。今では鈴張り(鈴を作る事)をする職人も少なくなってしまいました。この為、鈴の作り方を習って自分で作っています。機会が有れば鈴の張り方をご紹介します。また、鈴には鈴袋が付きますが、それは次回紹介します。 また、最近では鈴を付けたままにする流派(?)が有るそうですが、吉田流でも諏訪流でもその様な教えは有りません。ものぐさな人間が始めた事だと思います。

※上の写真の左が鈴板に付けた状態で、右の写真の左側2つが 小さい鈴で、右が大きい鈴になります。

鉄鈴

33.鈴板:(スズイタ)、音助緒(ネズオ)


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 鯉の鰓蓋(エラブタ)で作るのが、一番良いとされます。80センチ以上有る鯉だと良いのが取れますが、中々そんな大きな鯉は手に入らないので、出掛けた時に大きい池や湖で、死んだ鯉が浮いているとエラブタを取ってきて腐らせて骨だけにします。また、煮て肉を取るのは良くないとされています。死んだ鯉はエラブタも健康なのが少なく、穴が開いたり変色しているのも有ります。大鯉を釣ってエラブタだけ取る為だけに殺すのは忍びないのでそれはしませんが、湖の漁師で調理までする人に頼んでおくと取って置いてくれます。但し、大学等からの環境調査が 入ると譲ってもらえない事もあります。また、鯉にも野鯉と放流された真鯉が居て野鯉の方が幅が広く良質とされます。

※鈴の写真の中で左の一枚の内、黒く見えるのは鼈甲(ベッコウ)で、その二つ隣は象牙で出来た鈴板です。

 左の写真の白と紫の革紐が音助緒(ネズオ)その右が鈴板、この板の上に鈴を置き穴に音助緒を通して鷹の尾羽の中央2本(上尾)の根元に縛り付けます。鷹の種類及び雌雄により鈴板もサイズを変えます。右が加工前の鯉のエラブタです。

34.頭巾:(ズキン)


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 正式には隼頭巾と呼びますが、単純に頭巾と呼び隼の目隠しに使います。道具と言う物はその国の国民性を表していて、日本では布で出来た頭巾を被る事から、やはり同じ呼び名で同じく布で出来た物を使っています。表は絹、内は木綿、中には柿渋を塗った和紙を挟みます。上は戦前に実際に使われていた本物の頭巾ですが、コヨリが一本出ているタイプで、他に3箇所コヨリが付くタイプも有ります。私が頂いたのは一本の方で、この方が使い易いと教わりました。

※今度は海外製のフードも紹介します。また、同じ物を日本の漆皮の技術で作ると出来る縫い目の無いシームレスフードも紹介します。

遮眼革(フード)

35.鳩袋:(ハトブクロ)


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 鳩を入れて持ち歩く為の物で、両端が絞れる仕組みで片方に頭を出し、もう一方に足と尾を出します。型崩れ防止の為に竹の板が2枚入っています。昔の物はキジバト用なので小さすぎて使えないので、今はかなり大きな物を使っています。右は犬の訓練用に購入した物で、アメリカ製のバードバック、これなら鳩を2、3羽入れて持ち運べ ますし、腰に付ける1羽用も有ります。また、これは側面がメッシなので温度上昇を防げます。参考用(犬にだけ使っています)。なお、オリジナルは絞る部分が写真の様な木の玉では無く、竹の節の部分を使います。


36.生物袋:(イケモノブクロ)


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 生きたスズメなどを入れて運ぶ為の袋で今は鳩袋が使えない鶉に使う程度です。オオタカの場合、鳩を使うので最近ではチョーゲンボーのリハビリに使った程度です。右は今流行のチョークバックを真似て作ってみた物で、正面は通気性を考えてメッシュになっています。

37.麾:(ザイ と読み、または業の字を用いる)



 武具の采配(サイハイ)の原型になったと言われるが、年代的に整合が取れない気がする。竹の柄の先に付いた半球に障子紙を貼り付けた物と、ただ紙を縛り付けたハタキの様な物が有る オリジナルは紙を縛り付けただけの物です。。

 上鷹(アゲタカ)と言う隼独特の狩猟法が有 りますが、この時に隼の指揮に使う物で、半球の付いた物は指揮の他、隼の回収にも使えるそうですが、私は自分で隼を使った事が無いので、実際にどちらが良いかは分かりません。元々は長い竹竿の先に白旗を付けた物で、この旗竿で鴨を追い立てていました。この為、考案者の名前を付けて「祖父江の竿鷹」と呼ばれていました。その後、鴨を追い立てる竿を持つ勢子と指揮をする為の鷹匠用にと役割が別れ、現在の麾になったと考えられます。

 摩の製作工程を紹介する「 紙と竹」はこちらからお進み下さい。

紙と竹

38.呼子:(ヨビコ)


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 スポーツで使うただのホイッスル(オレンジ色の笛)で、振り鳩と言う仕込みの時に使ったり、隼の指揮に使うのですが、これで鷹を呼んでも良い。条件付けさえ出来れば何でも良いのだが、日本古来の呼子の方が味が有るし、外国製の鹿の角で出来た犬笛(犬の訓練に使っています)も味が有って良いと思います。日本古来の呼子は本職の人が今でも作っているので簡単に手に入ります。一本六百円から八百円位で売っていますが、犬笛同様細いほど高い音が出て良い様でる。右のプラスチックのホイッスル(アメリカ)と犬笛(イギリス)は犬と兼用。しかし、これを書いていて最近は使っていない事に気付きました。

2015年9月25日追記

 久し振りに買いに行くと在庫がありませんでした。ヤバイと思ったのですが、未だ作っていると聞いて一安心しました。幾つか頼んでおきました。日本の職人も高齢化して来ている上に後継者もいないので、いつ店終いになってもおかしくない時代になりました。今度、作り方を聞いてみようかと思っています。


39.水舟:(ミズブネ)

 「鷹部屋日記」で紹介します。鷹部屋用と屋外用のタライの二種類が有ります。

40.水差:(ミズサシ)

 「鷹部屋日記」で紹介します。単なる如雨露です。

41.餌板:(エイタ)

 「鷹部屋日記」で紹介します。

42.ドロ板:(ドロイタ)

 「鷹部屋日記」で紹介します。

43.長餌板:(ナガエイタ)

 「鷹部屋日記」で紹介します。

44.餌盤・台:(エバン・台)

 今はプラスチック製の抗菌まな板を使っています。あえて写真は載せません。

45.餌入蚊帳:(エイレカイチョウ)


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 一般に売られている蝿帳を使っています。今は冷蔵庫と冷凍庫がこの役割をしていますが、今は仕込から猟期の間だけ朝の残りを夜まで置ておく時に、サランラップにくるんで入れています。

46.鷹箱:(鷹箱)


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 私の使っている鷹箱はのぞき窓2個を取り去り、短距離の輸送用にした物で、鷹輸送箱と言うべきものです。鷹箱の中には本当に架が中央に付けられて、鷹を止めて鷹部屋の代用に使えるほど大きい物も有ります。右は扉を開けたところですが、オリジナルと比べると扉の大きさと開き方が違いますが、この方が出し入れが楽なので使っています。但し、鷹を入れ易いと言う事は鷹にして見れば開閉時に逃げ易いと言う事でも有ります。また、底が外れる様になっているのはオリジナルと同じです。最近は人工芝を底に張る人が多いようですが、鷹が輸送中に滑りやすいので私はカーペットの切れ端を使っています。なお、サイズはオリジナルと同じです。


47.鷹輸送籠:(タカユソウカゴ)

 いつか作りたいと思いながら未だに手を付けていません。

48.鷹籠:(タカカゴ)

 一度、竹篭職人に依頼したら断られ、使う必要も無いのでそのままになっています。

49.尾筒:(オヅツ)


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 鷹を輸送籠で運ぶときに使う尾羽根の保護用カバーです。本来は厚紙と綿で作りますが、今は100円ショップで買ったファイル用品で作っています。右側のスリットの部分に鈴が入って外れ止めの役目をします。未だ鈴を付けるまで仕込み上がっていない時にはコードロックを鈴の代用にします。尾袋が正式な名前です。

50.餌箸:(エバシ)

 竹製の箸です。今は、一尺の菜ばしで代用していますが、調理用のステンレスのケッパーが有ると特に塒(とや:夏鷹部屋で換羽させる事)を飼う時の調理後の餌の処理には便利です。写真はいらないでしょう。

51.地架:(ジボコ)


 本来は巣鷹の飼育に使う物ですが、これに架垂(実際はパンチカーペット を取り付けます。人工芝は足が浮き、滑りやすいので使いません。また、手で握ってみると分かりますが人工芝はかなり痛い物です。)を付け、車に取り付けて鷹の輸送用に使っています。鷹箱の場合、尾筒(尾袋)を付けなくてはいけませんが、これだとそのまま繋ないで輸送出来るので手間が省けて便利です。 車の中心線と架の中心線を合わせます。つまり鷹は車の進行方向に対し横向きになります。未だ仕込み上がっていない時や、車外の物に怖がる時はフードを付けると良いでしょう。

52.獲物袋:(エモノブクロ)


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 江戸時代や宮内省時代には獲物を持つ人が居たので絶対にいらない物です。今ではハンティングジャケットやハンティングベストを使うので、全くいらないのですが、仕込みの段階で私は良くバンドリをよく使うので、この時に腰に縛って据前自身が獲物を運ぶのに使います。なお、それ以前には打飼袋(ウチカイブクロ)と言う時代劇で武士が荷物を運ぶ時、背に縛り付ける網袋に一時的に獲物を入れて運んでいました。これも鷹匠が直接運ぶ物ではなく、回りの関係者が運んでくれました。

 ついでにバンドリですが、特徴的な襟をした鷹匠専用の野羽織で、ひざ下まで有る長い物(個人的には長いのは嫌いです)です。夜、鷹を据え回す時(夜据)に袖を使って鷹の視界を遮ったり、丸嘴の仕込みの時には鷹が早く鳩に掛からない様に隠したり、つかんだ鳩を取り上げる時に鳩を隠すにも便利です。ただ普段は丈の短い普通の羽織丈の背割羽織と言う同じ襟の形をした物をバンドリの代わりに使っています。

53.ウチ板:


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 屋内で鷹を据えた時にフン(ウチと言います)を受けるためのお盆で、鷹類は楕円で隼類には丸型を使います。

54.寄せ道具:(ヨセドウグ)


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 今や絶対に使わない道具で、ガンを捕獲出来た頃の物で、天秤棒に桶を両側に掛け、前方には鳥隠しという藁束を掛けてガンに鷹を見せない様にし、本人は農夫に化けて寄せる「荷寄せ」為の道具です。写真は水桶ですが、絵は肥桶で、隼の一人荷寄せの図になります。写真は鷹部屋の水汲みに使っていた物です。参考用

 なお、戦前の宮内省時代には、寄せ道具として自転車を使っていたそうです。一人が自転車を押し、荷物の影に鷹匠が隠れて、寄せたそうです。 「自転車寄せ」とでも言ったらいいのかも知れませんが、昔で言う所の「馬寄せ」の現代版でしょうか。しかし、最近では自動車の窓から鷹を羽合せる「車寄せ」(私が勝手に付けました)が使われる様です。勿論、相手はガンでは有りませんが。

55.扇子

 今は忘れ去られた道具です。ただの白い扇子ですが、やはり江戸扇子がお勧めです。巣鷹(巣から獲って来た鷹)を飼立てる(育てるの意)時にこれで扇いだり害虫を追い払ったり、餌を載せて与えたりと何かに付けてなれさせます。そしていよいよ狩りに使う時、この扇子を振って鷹を呼び戻します。鷹はこの扇子を目印に舞い戻って来ます。特にハイタカを使った初夏の雲雀猟には欠かせない道具です。 また、この時期は暑いので風を送ってやります。今は猟期の初めに山ノ神を祭るのに使う程度です。但し、この扇子を使う目的の一つは巣鷹特有の悪い癖を出さない為の特別の仕込み方をする為の道具と考えた方が良いようです。写真は省略します。

56.絆取(バンドリ)

 鷹匠の正装時に羽織る野羽織の一種で、左が本来の物で右が普段使っている背割り羽織です。どちらも絆取特有の小さな襟が付いています。仕込みに使うと非常に便利です。この為、鷹道具の一つとして紹介します。

但し、丈の長い本来の物は裾が汚れたり、種が付き易いので普段は使いません。江戸時代、鷹匠は羽織紐が使えましたが、鷹匠同心は別な 形の物を使っていたので、見た目ですぐに判断が付きました。

 

新規追加の鷹道具

57.放鳥機:(ホウチョウキ、海外ではバードランチャーと呼びます)


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 これ以降は今回新たに追加する鷹道具です。名前の通り鳥を飛ばす為の道具ですが、元々犬の訓練用に買った物です。犬に使うのは若い時の本当に短い期間だけなので、今は鷹の仕込みに使っています。目縫鳩を前方より飛ばし、これに鷹を羽合せて掴んだ所で忍縄を止め、その後据え上げる実践さながらの仕込をします。鷹が慣れて来ると忍縄を使わず、毎回場所を変えていかにも獲物を探している素振りをして、草薮から自然に鳥が出た様な感じにするのがコツで距離も色々変えて変化を付けます。鷹に羽合せる時のタイミングや掴んだ後すぐ羽を切る(すぐ下に下りる) 事を教えます。またさらに猟欲を高める為に目を縫わないボブホワイト(猟犬の訓練用に使う鶉で、よく飛びます。1羽1000円で、専門店で売っています。)を使うとさらに良い仕込みになります。特に巣鷹の場合は有効ですし、人が投げる鳥ばかり追わせると野の獲物に興味を持たなくなって行きます。

 左が閉じた状態で右が開いた所です。国内で売られているのはアメリカ製ですが、かなり高額になります。個人輸入したほうがよっぽど安い(手動でUS$55から)のですが、 当時リモコンで動作させるタイプは輸出してくれませんでしたから、自分で手動タイプの物をリモコンに改造する必要が有りました。改造は2千円台で売っているリモコンカーの部品等を使うと作れます。改造方法は長くなるので省略します。下記リンクを参照下さい。

Cabela's -- Bird Launchers / Carriers

58.架秤:(ホコバカリ)※私が勝手に付けた名前です。


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 ハヤブサ類用の体重計です。隼類はオオタカと違い、体を触られる事を極端に嫌がるので、体重(据下:スエシタ)で調子を見ます。これを使うと大変便利ですが、人間本来の感覚が鈍くなり、之が無いと隼を飛ばせないと言う人もいます。オオタカに使う物では有りませんが、健康管理の為にたまに計ったりもします。また、オオタカに対し常に使うのは個人的にあまり賛成出来ません。使用例はチョウゲンボウのリハビリを参照ください。

※まだまだたくさん有りますが、順次写真撮影できた物から追加していきます。

※古い鷹匠道具、古文書に付いての情報もお待ちしています。


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