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ブナハバチ(ブナハバチの幼虫)とブナ
許可無く転載禁止
ブナハバチとはなんでしょうか、研究者でもない私たち一般の者は本当に知らない
事が多いのです。然し今、知らないでいられない、大きな問題になっています。
なぜならば、この虫と私たちが飲む水と密接な関係があるからです。
丹沢山塊は正に県民の水瓶です。年々危惧されている、山塊の自然が致命的な
打撃を受けています。丹沢で、山頂一帯にブナの原生林を抱える最後の砦、
桧洞丸のブナが、今、まさに終わりを告げるかもしれません。
2011年の大被害からの状況を記録しましたのでご覧ください。
 
 ブナハバチの成虫と幼虫
成虫には、虎斑があり、小さいうちはこの縞模様は無く、育つにしたがって、
体が伸びて、虎斑が現れるのだと言います。
蜂と言う事から人を刺すようなイメージは、この模様からついた名前でしょうか。
 ブナハバチの成虫の形。  ブナの葉を食べている幼虫。
 ブナハバチの成虫  ブナハバチ幼虫
 ブナハバチの背中  ブナハバチの腹部の写真
 2015年5月5日、(例年より早い時期と言う事を断っておきます)水溜りに飛び込んだ
ブナハバチの成虫の採寸をしてみました。
この時点から多少育つものと思われますが、約、1センチ位の大きさです。
上記の写真に比べ、腹の部分がまだ細いです。裏返すと腹の部分が黄色に
膨らんでいます。さらに卵を産むまで数日、育っていくものと思われます。
成虫の食料はなんでしょうか。幼虫の食料の事ばかり関心を集めていますが、
成虫の食料も気になります。
写真では0の文字が大きく映っていますが、水の中でレンズの作用を受けたために
、この部分が巨大化しています。 
 
桧洞丸で見るブナハバチの成虫は、体長約1センチぐらいで、全体が黒く、
丁度一般に見るハエに似た形です。成虫は育つに従い腹の部分が伸びて縞模様に
なり、5月頃に山中を飛び回って、ぶなの新葉に卵を産み付ける習性があり、
卵はたちまち孵って幼虫になり、ブナを食べつつ脱皮し、体長3センチぐらいの虫に
成長します。この幼虫が、ブナの葉を食いあさり、ブナに大きなダメージを与えます。
2010年は4年に一度の大発生の年という騒ぎがありましたが、特別なこともなく過ぎ、
次の年の2011年、記録的大発生をしました。
青ヶ岳山荘では、山小屋経営の傍らボランティア部を置き、山の塵ひろいなどをして
いますが、山に長く居る時間を活用し、さらにボランティアの手を広げて、ブナハバチと、
被害にあったブナの観察に当てることにし、2011年から観察記録を始めました。

ブナハバチは1993年に大発生をして初めて注目されたといわれ、今年2012年から
さかのぼると19年前のことになります。然し詳しい解明はいまだされていないのが実情と
いうことです。
調査研究者のリンク集をこのページの中段に設定しておりますので、ご覧下さい。
 2019年定点観測のブナの記録 
2019年5月11日、新緑の芽吹くころ
定点観測のブナは芽吹かず、
完全に枯れました。 
頂点の小枝も見当たりません。
すでに18年の時点で芽吹きもありません
でした。
      
春を待つまでもなく・・・・・2月の雪に
  ただ皮を剥がれて立っているだけ。
2718年定点観測のブナの記録
2018年6月14日の朝の撮影です。
写真はパソコンの故障により、紛失。
試行錯誤の末、ココログの記事を検索。
6月のお天気情報の記事に載せて
おりました写真を見つけて、拾いました。
又、体調不良と重なり、サイトの放置も
このブナの記録を残すことに
大変な支障をきたしました。
周りの木々が芽吹いて、新緑といえる
時期も過ぎた6月、まだこの状態でいると
いうことは、枯れてしまったと、
言うことでしょうね。
一筋の希望を残して。
 2017年定点観測のブナの記録




10月7日には山はまだ緑だった。
写真に撮影記録の数字が記入されて
いますが 、17年の秋です。
四季の写真があればいいのですが、
山の緑は、いろいろな物体を隠して、
一つの形を見るのにはかなり邪魔に
なります。
重なり合う木の中から1本の木を観察する
のは、簡単でいてかなり面倒です。
この木は右手から撮影すると、奥の木
と重なり、小枝の様子がわかりません。
登山道を少し下に降りて、従来より
左手から撮影しました。
たまたま青空で小枝の様子が
よくわかりました。
枯れ切った枝の先端は、割りばしでも
折ったように細かい枝はありません。
この木は青息吐息でもまだ先端部分は
生きています。
  
2016年 桧洞丸のブナとブナハバチの記録
昨年に引き続き、今年も気温上昇で、芽吹きの早い春でした。
幸いなことにブナハバチの大量発生はありませんでした。
昨年末12月に土中に埋めたブナハバチの幼虫は、
小屋の屋根の雪下ろしなどのために、消失。

ブナハバチに関心を持つ人はなかなかいません。
「あそこの木を見てください」と、登山者に幼虫被害の木を指さしても
「あ〜!気が付きませんでした」と言う返事がほとんとですです。愕然としますが、

山小屋の経営管理の業務時間の合間、急ぐことなく山を見て歩き、
小屋に籠って山を見続ける事ができ、自然保護の観察に時間を使えるということは
この地点に居るものだからで、他人に出来ない、職務を与えられたのかと、
この異常事態を道行く人に語りかけても、無関心である現実に、有意義と無意味を、
同時に感じます。自分が労を惜しまず汗を流して訪れた山を視ることなく、
通り過ぎる、とても不思議です。人々が山を訪れる目的は何なのでしょうか。
 


2016年10月31日、冬姿の定点観測の樹。右から倒れた楓の樹に皮をはがれ
そのころから(2012年)めっきり弱った。
ブナハバチの被害も受け、枝枯れが進んでいる。冬、葉を散らした樹を見て、
樹が枯れていると、紛らわしい表現をしがちだが、春から夏にかけて
確認しないと、明確なことは分からない。この樹は、右に伸びた枝が弱っていたが
小枝以外の枝も欠落している。どんどん、枯れが進んでいることは確かだ。
 2015年桧洞丸のブナとブナハバチの記録
 2015年の春は早く、里の桜も早かった。山も、春の到来が早く、木々にむらが
あったが、山頂周辺のブナは早々と芽吹いた。写真のブナは、
この状態になった月日は5月3日だった。例年ならばブナの芽吹きは、
5月25日前後となるが、20日ほど早いことになる。又、この年は間隔を置かず、
2年ぶりに花が咲いた。雄花の先端が茶色い微毛に覆われるために薄黒いような
薄茶色いような、くすんだ緑の芽吹きだった。燃える新緑には程遠い、
汚い芽吹きの春だった。
 
 ツツジ新道の中間で見たブナの総苞、まだ未熟ですが俗に言う種です。
4月28日に落ちていました。
左端には雄花が落ちています。4月下旬に種が付くと言う事はあり得ないことです。
右下には去年の総苞が化石のような色で転がっています。
非常に不思議に思って写真に撮りましたが、山頂の芽吹きを見て、季節の巡りが
異常に早い事実を、認識しました。
 幼虫から繭玉になるまでの観察。
今年は、ブナハバチの幼虫をじっくり観察しました。

5月24日、ブナの葉は、まだ幼虫被害が見えなかったが、至近距離で見ると、
ブナの葉に小さな穴が開いていて、2〜3ミリぐらいの見落とすくらいの幼虫が
付いていた。
小さな枝葉を持ってきて、ビニールの袋に入れ、見てみると、2匹の幼虫が
ある日5匹になっていた。葉に産み付けられていた卵がかえったのだった。
注意深く観察しなかったが、卵らしいものは見つけられなかった。
生まれたばかり?7 少し育って。
 ブナの新芽の葉脈の幅は、約5ミリ。
その半分ぐらいのブナハバチの幼虫です。
ブナを食べるとおなかの中が黒くなります。
厳密に言えば、くすんだ緑色です。
それは順次糞になって排泄されます。
形状は抹香そのものの大きさと形です。
 5月24日、やや育ってきた問題の幼虫に
計測テープを当ててみると、3ミリ位です。
左の幼虫はビニールの中で孵ったもので
2ミリ強でした。
 10日前には、助かった!と、糠喜びをしていました 。
 5月26日
黒い糞をまき散らしながら、少しずつ
育っていきます。幼虫にも個体差があり、
側面に模様があるもの、無い物があります。
 6月7日
約20日の後に食べられています。
2センチかな。 数回脱皮をすると言うので、脱皮の殻があっても当然。
 6月7日
見るからに育ちました。
葉脈の幅が5ミリなのでそれをはるかに
超えています。
1センチ5ミリは越えています。
脇に模様がある個体です。
 6月7日
脱皮の殻か?頭の部分とおぼしきものが
見える。
隣りの写真の右に、こびりつくように
ありました。脱皮を見てみたいものです。
腹の中には食料の形跡がない。
 6月7日
おびただしい糞の中に色が変わって、
動かなくなったブナハバチ。
蚕になりたいのか、死んでしまったのか、
判然としません。
 6月5日
袋に入れたブナの葉は約、2週間の後には
茶色くなってカリカリに乾燥しています。
この乾燥したブナを、いつまでも食べていま
した。その強力な生命力には
驚きました。葉は、2回補給しました。
土の中に潜ると土の色の蚕になるのがわかりますね。
 8月31日
ビニールの袋は、口を縛って置き、暫くして見てみると、縛ったビニールの口の部分の
狭いところに這い上り、繭糸を吐いて小さな繭玉を作っていました。
それを剥がして見やすいところに置いて、写真を撮りましたが、剥がすときに、
なかなかしっかりくっついているものでした。大きさは葉脈の幅位で長さは5〜6ミリ。
幅は3ミリぐらいです。寸法の目安に枯葉をそのまま置いています。
又、注目すべきことに、もう一つ、繭があり、それは、狭い手がかりになるところに行かず
に、自分の排泄した糞に糸を吐いて自分の体に巻きつけると言う、逞しいと言うべきか、
臨機応変と言うべきか、なんでもアリという生態でしょうか。本来ならば土に潜って、
土の中でこのような形になるのでしょう。
糞を巻きつけた繭玉は本体よりも一回り大きい形です。

幼虫は2匹ビニール袋に入れましたが、途中、葉に付いた卵が孵って5匹になり、
その後、影も形も無いように消えたものがあり、繭になった物は結局 2匹と言う事です。
山の現場、山小屋に毎日いるとはいえ、24時間体制で記録を取っているわけではない
ので、脱皮するところも、繭糸を吐くところも見ることはできませんでした。
残念と言えば、残念ですが、、繭を見たいと思っていたので、今回は満足です。
蛹になるのはいつ頃か?

たった5匹の小さい幼虫が、これだけのブナを食べた糞をするのですから、
ブナにどれほどのダメージを与えているか察しが付くと言う事です。
 すっかり枯れ枝が目立ってきました。
  2015年6月4日。弱り果てて、ようやく芽吹きがそろった定点観測のブナ。
めっきり枯れ枝が目立ちます。
いつも、西から東方向に向かって写真を撮っていますが、この木の後ろに立っている
樹に、枝葉の様子が邪魔されます。今日は北から南に向かって、つまりいつもの写真の
左側面から、撮影しています。木の枝の太いところから、ぷっつりと切れているのは
完全に枯れている状態です。枯れた小枝がこのようになるのは2〜3以上年かかります。
さらに枯れた大木が倒れるまでは何十年もかかる時があります。
元気な大木が一気に倒れる台風被害がありますが、枯れて、枝葉を失って立ち続ける
大木もあります。台風や竜巻、つまり気象条件、立地場所により受ける被害が
異なります。
 拡大してみると本当によくできています。不思議です。
 12月24日、 ブナハバチの蚕を地中に埋めることにして、ビニールの袋から出して
段ボールに土を入れ、春に分かるようにして、印をする。
一度ビニールからはがした蚕を見てみると再度ビニールにくっ付いていた。
その部分の面が黒くくぼんでいる。もう一つ、自分の糞に糸を吐き、
体に纏って出来た蚕は、消滅していた。
この蚕は春にまともに蛹に成るだろうかと非常に懸念した 。
2015年は暖かい年で、この時点で地表は雪に覆われていなかった。
 2014年桧洞丸のブナとブナハバチの記録
とうとう一枚の葉も出なかった2014年の春。 この木のお蔭で、ボランティアを立ち上げた。この木の根を見る辛さが、起爆剤になった。助けてやることはできなかったが、できるところで活動を起こせた、非力さと、詫びと、感謝が交差するこの地点。
 4月25日登るときは当然芽吹きは無い。
然し、その後、何度見ても、2014年この年、
この地点のこの木は、芽吹く事はなかった。
通るたび、「何をしてやる事も出来ない、
申し訳ない」と思うばかりだった。
写真は6月30日12時17分。
稜線上で、どんな人も見る事が出来る
登山道の脇。オーバーユースでえぐられた
木の根を雨が浸食し、驚愕の様相を呈し
つつ、息絶え絶えに頑張っていたブナの
巨木。昨年2013年のブナハバチ被害が
止めとなった。6月30日同じ日の12時18分。
 野外卓の上にもびっしりとブナの若葉が散っている。痛々しい・・・。
 5月29日、芽吹いて間もないブナが雹に叩き落されて、地面が黄緑に染まった。
ブナハバチの被害がないかと思えば、雹なのか・・・とため息が漏れる。
然し、この雹が、まだ小さいブナハバチも一緒に落としたと言う事も考えられる。
 よく芽吹いた山波とブナハバチは少ないトラップです。 
 2014年5月28日、去年よりもやや早めに良く芽吹きました。
数年に渡り、大きな被害を受けつつ、芽吹いたブナに感謝と驚きが湧きますが、
2013年11月3日の下段に表示した写真が示すように、温かい昨秋に、第二展葉の
若葉が次の年の発芽の芽を充実させる期間を与えられたと言う事でしょうか。
たまたま幸運な気候だったわけですが、実に不安定な幸運です。勿論、芽吹かずに
枯れて行った木も見受けられます。
2014年はブナハバチの大発生は無いようで、6月30日のトラップにはブナハバチの
幼虫があまり貼りついていませんでした。(上段右の記録写真です)
ブナハバチの成虫の活動は見られたので、5月29日の雹も関係しているのでしょうか?
天候や、芽吹き、ブナの状態等、事実を記録してゆくだけです。
 早々と食害に遭っているブナの葉と、ブナアオシャチホコの幼虫。
 6月4日のブナは一部、早々と何かの食害に遭っていました。(ブナハバチの幼虫は
こういう食べ方はしません)右の写真は斑紋からしてブナアオシャチホコの幼虫と
思われますが、写真は釘の頭に止っている映像です。卵から孵って間もないものと、
脱皮を数回繰り返した、2センチを超える幼虫です。なぜこの標高に居るのか
わかりません。本来ならば7月に入って、標高の低いところで活動します。
その後、この近くで、蟻に襲われて、七転八倒している幼虫を見かけました。
転げまわっていました。撮影地点は山荘付近です。
 ブナハバチの幼虫は糸を吐く。
ブナハバチの幼虫がブナの枝から落ちるとき、糸を出してぶら下がった。
それを見たのは2011年だった。樹に這い上っているブナハバチの幼虫は、かすかな
ショックでも、雨のように木から落ちる。とても不思議に思い、ずっと観察していたところ、
2014年5月26日二人の入山者が(青虫が木から沢山ぶら下がって居ました)と言った。
やっぱり糸を引いて、下に降りると言う事もあるのだろう。 
ごくまれに発芽の密集地。全山を確認したわけではありません。目視できる範囲では、気を付けてみて、所々と言う発芽状態です。
 ブナの発芽
2013年のブナの種付は40年以来のことではないだろうか?昔は、コロコロと肥った
堅果が山頂一帯に撒かれたように落ちていたのが(昭和49年)。昨年秋は、そのような
ことがなかった。小動物のエサの確保に遭っているのだろうか。
然し、2014年の春、所によりブナの発芽が30センチ間隔で見られたところがあった。
上の写真は2014年6月17日、檜洞丸の山頂付近である。
 2013年桧洞丸のブナとブナハバチの記録
 2013年いたるところのブナが花芽をびっしりつけている。
 譲り葉を残して、丸い花芽がびっしり。見たこともない程花芽が付いている
4月23日の映像。 
 今年はブナの芽吹きが10日以上早かった。
ブナハバチの成虫も早いうちに活動しているようだった。始めのうちは、寒い春で、
バイケイソウの芽吹きも27日で成長が止まり、それから2週間近く寒い春が続き、
桜の花も咲かなかった。
然し、5月9日から5日間に高温になり最高気温が26℃に達した。
あっという間に桜が咲き、5月16日夜の雨で散った。このあたりからリズムが狂った。
動きの悪かった木の芽も動きだし、定点観測のブナも芽を吹いた。
早々と誰かの衣服について来たのか、ブナハバチの幼虫が、小屋の中を這っていた。
 ブナの雄花と雌花。開花の流れ。
 雄花が芽吹き、新芽が芽吹き、雄花が展開し、やがて花粉をだし、
萎れてゆく後から、雌花がのぞき、充実してゆく。
写真で見ると5月23日の映像と5月17日の映像では、ブナの雌花の成長と充実が
違いますが、それぞれの写真は、違う場所で、違う木の花の実を写しているもの
です。そのために、場所により、成長の早さが違います。
成長の順番通りに並べています。 
  総苞(ソウホウ)から堅果(ケンカ)への流れ

 ブナの結実の流れ、そして落下。

 9月27日、早い総苞は開きはじめました。育ちきれない総苞から、堅果が青い色で、
8月前から覗くものもある。
10月の下旬ころ、総苞がはじけ、堅果が落ちる。それを食料にする小動物、
其の他がいる。落ちた、堅果は本来ならば来年の春に発芽をして、何百年の後に、
現在のような原生林を形成するはずですが、その確信は不安に置き換えられています
 ブナを食べるブナハバチの幼虫。
 そして、ブナハバチの幼虫が活躍を始めている。
小さい幼虫が二匹、葉を食べている映像です。
この時点で、見上げると多くの葉が食害にあって、葉に穴が開いています。
 幼虫の糞。
 2013年6月11日、マルバダケブキの上やバイケイソウの葉の上に
虫の糞が堆積し、木道の上にもおびただしい量の虫の糞が積もっている。 
 新たなトラップも加わりました。  見るも悲惨。
 2013年6月11日、なぜかトラップが、
設置されたまま。
 何年に寄らず、
あちらこちらから踏んだり蹴ったりの
虐待を強いられてきたこの木も
、今年とどめを刺されるのだろうな。
 登山道わきの粘着トラップ。
 2011年6月22日の隙間ない程の虫が付いた粘着トラップと、
2012年7月2日(右)の粘着トラップです。虫の発生率が歴然としています
取り替えられたのちの2回目のトラップです。最初のトラップには脱皮3回ぐらいの
小さめの幼虫が2011年からすると10日早いが、めっきり少ない数で
這い上がっていたのを目撃されています。
 2013年6月11日。粘着トラップの様子です。
2012年は寒さと、6月の台風のために幼虫が振い落とされ、被害は少なかった。
然し、2013年は6月11日の時点で、これだけの虫が、粘着トラップに捕獲されている。
2011年を上回るかどうか、断然多いのは、虫の糞だ。(上段に表示)
 大発生していましたが、トラップの設置が遅く、捕獲状況は適正でなかったようです。
 そして、2013年6月29日、稜線の粘着トラッ
プを見ると、古い幼虫が死んでいる上に
新しい幼虫が貼りついている。
6月11日の写真)に早めに巻かれた
トラップから、約20日近い時間を経て、
捕獲された幼虫の数がめっき、り少ない
のはトラップをまく時期が遅かったものと、
思われる。あのおびただしい虫の糞は
2011年に匹敵した。それは、被害にあった
ブナの姿を見れば、一目でわかる。
 それが、これである。
写真を撮り続けて、表示するのも嫌に
なるほど、歩みにしたがって現れる、
ブナの被害。無残の一語に尽きる。
芽が育っていない。  8月なのに木の枝は真っ黒。
 そして8月2日、第二展葉がさらに虫の
食害を受けていた。驚きの事実!
第二展葉をしたブナの葉は小さく丸い
葉型をしているが、この第二展葉をした
葉は団子状に丸みを帯びていることに
変わりはないが、驚くほど大きかった
(春の芽吹き同様6センチ以上あった)。
細身の従来の葉は、厚みがあり、硬く、
色が濃い。早い時期に第二展葉を迎えた
団子葉(俗称)は、色は春、芽吹いて
硬味を増した葉に近い色となり、しばし
考えるほどだったが、間違いなく第二展
葉であることは、その付け根に出来た
来春に向けての芽の形状で分かる。茎と、
蕾(芽)の境目にくびれがない。つまり、
茎の太さよりも横に芽を張れない事を
表している。これは、来年の芽吹きの
葉芽が充実していないことを物語って
いる。充実の不足は、水分を受け入れる
余裕を芽の中に残してしまうために、
極寒の冬の、霜の被害を受けやすい。
この先、どのように変化していくか観測
あるのみ。
同じ日に撮影した、ブナの大木。
2011年には第二展葉は8月8日頃こういう
状態を迎える。まるで黒い竹箒の中に
点々と第二展葉の若葉の色が見える。
はっきり言えば個体差と片づけられる
ことだろうが、この大木は老朽化しており、
芽出しの能力が落ちているのだろうか。
では、上段の木は、なぜ速く第二展葉を
したかと言う事になるが、しいて言えば、
被害を早く受けたと、言う事と、その後の
天気が非常に暑かった。そのために早々
と第二展葉をし、生き残りのブナハバチか、
あるいは遅く出現したブナハバチの幼虫の
食害に遇ったとししかいいようがない。
又、別の視点からすると、先の写真は
ひどい被害にあっていなかった。そのため
に、再生する力の配分が、まだ枝に養分
を吸い上げる力が強かったといえるか
しれない。上の写真は、ほぼ壊滅という
被害である。
 第二展葉の団子状の葉の形。  これが第二展葉したばかりの若葉で、
後ろに色濃く映っているのは、本来の春の
ブナの葉です。当然小さく開いた葉も、
育ちます。同じ木で、6センチにも育って
いる葉もあったのです。この写真の葉に
限って言えば、先端の食害によって欠損
下部分を想定していますが、6センチを超え
るかもしれません。沢山の写真を撮り、
観測しましたが、
大きいので6センチ前後です。
 早い春に早く芽吹き、大きく育った第二展葉がさらに第二回の食害に遭った状態。
 季節の巡りによって、早く寒さに遇えば、遅く展葉した葉の成長は止まります。
然し2013年は例年にない、温暖で第二展葉のブナまでブナハバチの幼虫に荒らされ
ました。これは、山にいながらにして、第二展葉は8月上旬から始まると思い込んでいた、
浅い経験と、思い込みのために、観測の時を逃しました。残念、この上なしと、
いう処です。
今年の天気は、早朝の天気は良く、日の出が、比較的よく見えた。然し、
すぐに霧がわき、雲を被る日中だった。
霧に巻かれたブナから小雨のようにしずくが垂れ、登山者は、
雨が降っていると、不安の声を上げる。風でも吹けば屋根をたたく
雨だれの音は顕著になり、平地では記録的暑さに辟易している
ニュースの中、山の朝晩は肌寒い霧の日々で、2日もするとドラム缶
一杯の水がたまることもあった。この、山が張り巡らせた木の枝葉、
雲を逃がさず捕まえて受け止める水の量。雨が降ったときの話ばかり
でなく、それを蓄える腐葉土や草木、その水を濾過して我々に送る山
そのものの土の厚さ。この山と草木は、そのまま我々の命の水瓶と
言える。

例えは、適切でないかもしれないが、我が家が火事になったという状況が、いまのこの
山のブナハバチ被害のように思える。良し悪しの議論や、経緯の如何はとりあえず火を
消してからにすべきだろう。
まさか、ブナよりブナハバチの方が大事と言う事は無いだろう。どちらも保護区の
生きものとはいえ、方や、移動ができる最低限の生態を持つものと、動くことができない、
ブナを同一にすることができるだろうか。
 時期外れの白い幼虫。なんなのでしょうか?
2013年8月2日、第二展葉をしたブナの観察をした帰り、草の上に脱力状態になっている
ブナハバチの幼虫が目に留まった。死んではいないが、動く力は無い。本来ならば、
地に潜って、蚕になって往くところだろう。何かの事情で一連の流れから脱落して地上に
いるのだろう。然し、体は時期的に、蚕になる体制になった色なのだろうか。年に1度位、
見かける幼虫の姿である。確実明確な事情は分からない。( 右は拡大写真)
 冬だと言うのに・・。
 2013年11月3日。従来ならば山はすっかり葉をふるっているものですが、第二展葉した
ブナの葉が、新緑の様を呈しています。見下ろす、ユーシン渓谷に延びる尾根は、
標高が低いにもかかわらず、すっかり、灰色が勝っている風景です。この暖かい晩秋が
第二展葉のブナの芽を充実させることになりました。
 2012年桧洞丸のブナハバチとブナの記録
 2011年から比べてブナハバチの幼虫の大発生はありませんでした。
6月の台風の発生で幼虫がふるい落とされたと言う説もあります。
 どっちも頑張れ!
 2012年6月の台風の襲来で定点観測の木に楓が倒れてぶつかって居ます。
ブナは幹の部分が広く皮がむけてしまいました。
楓は根を露出させながらも、ありがたいことに、まだ生きて葉を茂らせている。
ブナのほうは、よわっています。今年の寒さのせいか、木の葉はいずれも小さく
7月下旬には紅葉を始めています。
この倒れた木は、木道に倒れたものでないために、すぐに撤去されることがない。
どのくらいこうして葉を茂らせていることができるか、せめてもこうして
生きていられることだけでも、どのくらいありがたいかしれない。
 ブナハバチに関するリンク集

リンクを貼って数年、ウエブサイトから消えているものもあります。
今後も変動があるものと思われます。ご承知ください。
 北海道立総合研究機構林業試験場 北海道美唄市光珠内町東山
ブナハバチ

神奈川県ブナハバチ調査(結果)速報

神奈川県のブナ 研究連携課害虫(ブナハバチ)の大発生

ブナ林の衰退実態調査

19年度発表の神奈川県の調査もリンク設定。(成虫の写真あり)

ブナ林の衰退実態調査

 ブナの観察と説明
 きりっとした葉です。
 これが、食害にあわなければこの時期(8月)にあるべきブナの葉です。
(撮影記録文字2010年の映像です)丹沢のブナは東北のブナと個体差が違い、
葉は小ぶりで引き締まり、細身です。
然し、丹沢にも葉の形態が微妙に違うものがあります。
建築材料としての価値は低いとされ、ないがしろにされる傾向にありましたが、
近年、山のダムと言われる程、強い保水能力があることが確認され、また、
近海に及ぼすミネラルの供給は、三陸の牡蠣養殖業者の
生存を掛けたアピールで、ブナの価値が一躍注目を集めました。
 ブナについての記述
ブナについての記述があります。→ブナ - Wikipedia ←リンク設定しましたので
文字をクリックしてみてください。桧洞丸に登ってみると、果たしてそうかな?
と思うところがありますが、皆さんはどう思われるでしょう。
そうなるとブナの立枯れは、獅子身中の虫の要素も加わり、混沌としてきますね。
然し、もっと気になることは、文中、檜の文字が出てくることです。
 ブナの観察と説明ブナの種・花
ブナのイガ  これは俗に言う、ブナの鬼殻です
(クリで言えばイガです)
然し、図鑑を紐解けば、イガと言っている
部分は総包(ソウホウ)と言い、
種子は堅果(ケンカ)というのだそうです。
栗を、これに当てて呼べば、棘のある総包
と言い、堅果は栗の実で、勿論、どんぐり
の種の呼び方でもあります。この際、俗称
を捨て、総包という知識を得た機に改め
たいと思います。
これは、ツツジ新道で5月の連休頃に
見つけたので、去年の総包が残っていた
ものです。普通ならば、開いた状態で
落ちる確率が高いので、これは何かの
事情で、早く落ちて、しかも、腐らないで
残ったものでしょう。
ブナのイガと種子。  2012年7月2日、ツツジ新道に落ちていた
ブナの種。枝ごと落ちていました。
6月の台風被害の結果でしょうか、
本来ならば10月の下旬頃に茶色くなった、
総包の中から丸々と太って栗色の堅果
(種子)が、地に落ちます。この映像は
あり得ない形ですが、たまたま台風に
よって枝ごと地面に落ちたものを観察する
ことが出来ました。これは落ちてから、
日にちが経っているために、総包も種子も
薄茶色ですが今の時期は緑色です。
こんな形で、ブナの種子の観察をするのは
初めてです。
イガの大きさ  総包の大きさは2センチ未満です。
この総包も、日を追って乾燥し、
開いた中から堅果(種子・あるいは実)が
現れることになるでしょう。
実を食べられた・・。  ツツジ新道に一面に散らばっている
ブナの堅果が、何者かによって食べられて
います。まだ完熟していない堅果ですが、
幅が5ミリぐらいのものをえぐって食べると
いうことは、小さい細い、しかも丈夫な歯を
もった動物でしょう。
 枝ごと落下。  ブナの枝に付いた花です。ここまで見ると
間違いなくブナの花ですね。只、果柄の
長さ、葉脈の幅の広さは、イヌブナの種類
に近いようです。台風被害で、枝折れした
もののために、残念ながら萎びています。
花と一言で言いますが、写真に写っている
のは雄花、つまり花粉です。
雌花は付け根に種子のもとを持っており、
地味な花という表現が適切かどうか、
つまりめしべということでしょう。図鑑に
よれば柱頭3裂と記されています。
つまり先端が3個の雌しべになっている
ということです。雌花、雄花同株と書かれて
います。
 ブナの発芽から成長
 芽吹きから枝掛けまでの流れ。
 ブナの年輪

ブナの年輪。
 このブナは、台風によって倒壊した太い枝です。登山道に倒れたために、
伐られて放置されました。拾ってきて年輪を測ってみると10センチ足らず、中心から
年輪を数えると50年ありました。登山者に話すと皆、驚きの声を発します。平地の
感覚で、5〜10年ぐらいで育ったものと思うのでしょう。貴重な物です。
 ブナによく似たシデの木

下から見上げるとちょっと区別がつきにくい。
 シデの葉は薄めで、葉脈の間隔が狭く鋸歯が鋭敏。小ぶりです。左がシデです。
ブナの葉も厳密に言えばイヌブナに近いと思います。葉脈と、葉の幅が広いです。
標高が低いところは、この個体が多いのでしょうか。
写真のブナの葉が色が濃いのは、枝折れして日が経ち、茶色になってゆく過程だからで、
本来の色は上記に表示している。生きた葉の色です。
シデの木は発芽の状態もよく似て、ちょっと見たところは間違える程ですが、ブナより平均
発芽状態(率)がよく、石棚に向かう稜線でよく見かけます。
漠然とこの木を見て、ブナと勘違いし、誤った判断をしないように、注意すべきです。
大木を下から見上げると、区別がつきにくい感じですが、幹肌が少々違います。
 2011年桧洞丸のブナとブナハバチの記録
 ブナハバチを誘引するトラップ。  毎年春には黄色い提灯状の物体が
ぶら下がります。
上記リンク設定の19年度発表の
神奈川県の調査によれば、誘因トラップ
というもので、調査のために、
ブナハバチを捕獲するものだそうです。
 2010年は空っぽ。  2010年も、その前もまわりには黒い虫の
死骸が輪を描く程度だった。
 前代未聞の黒い堆積。  2011年の様子。虫の死骸が分厚く
沈殿していた。
 6月11日稜線木道。
2011年6月11日、振り返ってみる桧洞丸は緑にあふれて、うっすらと掛った霞が、
この山に襲い掛かる様々な迫害に、痛みきっている様相を隠していた。
実に美しく、思わず合掌をして帰路に向かった。 
 ツツジに彩られた山肌。
 咲き誇ったシロヤシオとミツバツツジは、地面を飾って、今思えば、最後のはなむけと、
言わんばかりだった。この後、台風直撃でこの地点のシロヤシオツツジはあらかた
へし折られ、稜線の大木もなぎ倒された。特に桧洞丸から臼が岳の間が凄かった。
 ブナは丸裸の木道稜線。  ブナハバチがなぜブナが好きなのか・・・謎?
それがたった10日後、山は
想像もつかないほどの有様に変わった。
6月22日、稜線の右手、南側はスカスカ
状態。 
 すっかり、葉を失ったブナが中空にその
姿をさらしていた。被害を免れたかと
思って緑の木のそばに近づいてみると、
モミジやカエデ、サワグルミや、ツツジ、
シナノキなどである。
潰したいけど手が届かない・・・!
幹には、無数のブナハバチの幼虫が、見上げてみてどこで行きど止まっているのか、
わからない高さまで這い上がり・・・・。 
 マルバダケブキの上にも音を立てて落ちる。
思わず虫を撫で潰すと、ブナの幹の苔とともに、幼虫が雨のように音を立てて、
頭上に降った。 
 
 
その他の被害状況←こちらの文字をクリック。 
 捕獲された、粘着トラップの幼虫。

粘着トラップに付いた、ブナハバチの幼虫のアップです。
   
プールと言われる虫の塊。  また、虫がかたまって死んでいる
ものも見かけました。
 ブナハバチの被害を受けたブナは、その
被害の度合いが大きいと、葉脈を残して、
葉のすべてを失い、養分を必要としなくなる
ために落葉します。
落葉時期は6月下旬から7月に落ちます。
 2011年7月8日の映像です。
まだ青い部分を残しほぼ骸骨状態になって
散っています
 風に吹き寄せられて・・・。
山に来るたびに見る、地に落ちたブナの葉の姿。 
ブナの第二展葉 
 落葉したブナは、季節的にもまだ葉に養分を送る体制でいるために、2回目の芽吹きをし
ます。それを第二展葉(だいにてんよう)と表現されています。然し、7月下旬から
8月上旬に芽吹いたブナは秋になるまでに、充分な栄養を受けられないうちに、寒さを
迎え、枝葉に養分を送るその年の機能が終わります。したがって、芽は細く小さく、次の年
の春に健康な芽吹きを迎えられるかどうか、非常に不安を抱えることになります。
 第二展葉しているブナの芽吹き。
ブナは樹高があるために観察不可能な事が多いのですが、ブナの第二展葉をした
ばかりの低い地点の木を見つけて、写真を撮ることに成功しました。
8月5日の記録が記載されています。食害にあった葉を残しつつ、微毛にくるまれて
芽吹いたブナは、陽を浴びると正に黄金色に輝きます。 
 パラパラと芽吹いた第二展葉。
8月14日、気になる大木が展葉を始めていました。たまたま足元に落ちていた葉を手にして
写真を撮ってみました。白いメモリは1センチ間隔にカメラを下げる紐に記した物です。
その葉は初々しくも弱く、新芽特有の赤い覆輪を挿しているが、葉の展開も力強くと言う
感じではなく、芽吹きもまばらで、まるっきり芽吹かないものも有リました。
 
 定点観測の始まり
 青ヶ岳山荘ボランティア部では、山小屋を観察拠点に出来る特性を生かし、
被害を受けたブナの観察を3年を目安に続けてゆくことにしました。
2011年は遅い春だった。とても寒く、今か今かと小屋の前からブナの芽吹きを待っていた。
この遅い芽吹きがブナハバチの産卵時期に合致して、大発生のブナハバチの食害を
まともに受けたのです。
定点観測の木。
 2011年5月20日、寒さのためか、勢いよく出そろったとは言えない、ブナの新緑。
小屋の前から撮影した映像です。偶然、この写真を撮ったときは、まさかこの先、
ずっとこの木を撮り続けることになるとは、思いもよりませんでした。
一年後、2012年の状態。 
 2012年の芽吹きの状態。
 去年遅い芽吹きで、被害にあったと、思われたブナが、今年はさらに遅く、去年と同じ
20日頃、21日の映像では、まだ黒い枝ばかりが目立ってました。他の木よりも一段と遅く、
葉がそろったと思われる映像は、29日です。この木は特に遅い芽吹きで、はらはらでした
が、その生命力に畏れを禁じえません。その違いを見比べてもらうために、
間に挿入しました。
定点観測の的。  6月22日、山に来たときは、あまりにも凄い
ブナハバチの食害に衝撃を受け、茫然自失
の有様で、絶望感だけに打ちひしがれてい
ました。
「もう山に来る意味がない」そう思いつつ、
このまま見捨てる事ができるのかと、
それで平気かと自問自答しつつ、ブナハバ
チに身ぐるみはがれたようなブナを見るの
がつらく、外に出る回数がめっきり減ってし
まいました。然し、
「やることがある」という思いが湧いてきて、
それは、この現実を記録する。ということ
でした。6月22日に登って、7月11日に下山。
台風の襲来で入山待機。そして7月31日に
台風で荒れた林道を四苦八苦して通り抜
けて入山。そしてその思いを始めて行動に
移して、撮った写真でした。雨の多い年で、
この日も霧雨が降っており、小屋の入り口
で、ここならば大雨が降っても、毎日写真
が撮れると思ってシャッターを押したことが
忘れられない、定点観察の始まりです。
8月1日11時55分でした。
 ブナハバチの被害に遭った頭頂部。背後の黒い木はカエデです。  うっすらと青く第二展葉をしました。
8月1日、最も近い距離から、頭頂部を
アップで撮る。このようにして、ほぼ毎日、
小屋にいるときは記録写真を撮ることに
なった。後ろに見える大木はカエデの木。 
 8月8日、他のブナと同じく、細々と
第二展葉をし・・・・。
 茶枯れ色に紅葉。
10月27日、紅葉もし・・・12月9日、霧氷にも
彩られた・・・。そして長い冬の極寒に身を
置く時を迎える。葉の勢いは落ち、
葉張りは小さいながら、葉数は少なくなく、
枝枯れの枝は2〜3あれども、よく茂って
いると思われる。
 霧氷を纏う。
その他の観察 
 身近な観測点。
 この木は桧洞丸のブナの種を育てて、記念樹として届けて、生育を見守っているもの
ですが、全長2メーターぐらいのブナです。この木も小さいながらブナハバチの被害を
受けました。ブナハバチは高いところに卵を産む習性があるために、低い枝や木は
比較的被害が少ないのです。この小さいブナは葉肉の部分を比較的多く残したためか、
第二展葉をしませんでした。写真で見て分かるように、部分的に完全に、葉肉を失って
いるところもあります。然し、全体的に冬芽は結構充実をしていて、これが来春に、健康に
芽吹いてくれるかどうか、今から注目をしています。南面には第二展葉をしない大木も
あります。果たしてそれが、いい結果を招くのか、そのまま枯れてゆくのか、
これもまた、観察対象です。この写真2枚は8月7日の映像です。
 折れた茎の芽の菜かも緑色。 小さい冬芽。
10月16日、記念樹の先端が折れて
いたので、採ってきて、芽の充実を見て
みると、食害にあった木ではあるが
芽は来春の葉が詰まって、充実している
ように見えました。 
 それに引き替え、完全に葉肉を食い
尽くされて、第二展葉をしたブナの芽は
強い風や、飛来物にも弱いのだろう、
芽も欠け、大きさも、本来の4分の1ぐらい
の貧弱さだった。この映像は12月27日で、
たった1か所稜線上で、カメラが届くところに
被害を受けた木があり、観察に恵まれた
地点です。枝は大切にして、2012年の芽吹
きの観察に当てたいと思います。
 後ろに木が重ならない地点から。
 定点観測のブナですが、この度は真横から撮影しました。上から撮っていると
左に写っている木が後ろに立ちはだかり、枝模様が判然としないのが、悩みでした。
こうしてみると、枝ぶりがよくわかり、衰退していることがわかります。
撮影日は2012年8月24日ですが、第二展葉の勢いも悪く、完全に枯れ枝も増えました。
登山道を下に降りて、木が重ならないように撮っています。
ブナの調査 
保全センター研究連携課が設置の調査用のソーラー発電。  登山者の皆さんからよく質問される調査
のための県のソーラー設置地点です。
白いプロペラ状の風力機は、現在、
桧洞丸だけに設置されているようです。
柵を破りシードトラップの周りを徘徊する鹿。  クラゲ状に目立つ機材も、よく質問されるも
のですが、神奈川県のリンクを開いて
調べてみてください。
植物保護柵を破って入り込んだ鹿がしばし
右往左往しています。
金網が曲がるほど、強い力が加わっている
のを見ると、大概朝には入っているので、
夜中に他の動物との接触で、行動を
起こすのかもしれません。鹿の目は夜、
ライトの光で赤く光りますが、
犬ぐらいの大きさで、黄色く光る目の
動物を秋の夜に、2回見かけました。
不思議な光景。  大切な山に関心を持って!と
いうような調査機材が山肌をにぎやかに
している2012年の春。
その他の害虫 
 ブナアオシャチホコ
この虫は、ブナを食べる虫で、ブナハバチ
より約一か月後に活動します。
7月11日に下山の際、すでに山頂の
ブナハバチの幼虫は、姿を消していました。
ツツジ新道のかなり下で、ゴロゴロと肥った
ブナハバチの幼虫がいると思ってみました。
これがブナアオシャチホコでした。太さも、
体長も大きく3センチを超えていました。
一般社会人のサイトにも載っていますので
検索してみてください。
ブナアオシャチホコ
 シンクイムシ
この虫は平地にもいて、当方の知る限りでは
、ブナのほかに、ツツジの被害が大きいよう
に思いますが、何にでもとりついて、ぐるりと
木の周りを回って食べ、木の中心に食べ進
み、さらに上下に向かって食べ進みます。
かなり膨大なオガクズ状の糞を輩出する
ために、被害を知ることになります。
よく知られた虫ですが、野菜にも取りつき、
枯らします。この取りつかれたブナの小さい
木は周囲10センチ程度の大きさですが、
鹿除けに巻いたネットが台風のために
倒れたと思い、点検修復を試みた際に、
発見したものです。すでに形成層(枝葉に
栄養を送る木の皮の下の青い部分)は、
完全に破壊されて、再起が危ぶまれます。
シンクイムシの被害を受けたブナの根本。地表と同じ色なので、気づきにくい。
シンクイムシの糞
ブナの木の付け根をアップしました。
膨大な糞を輩出し、大きな穴を空けて
います。糞は綿のようにからんで、一掴みに
茶色い塊になって、木の周りに巻きついて
います。季節的に、活動期に入った時期に、
ストロー状のもので、塩水などを注入すると
白い、芋虫状の幼虫が這い出てきます。
とりあえず、支柱を立てて置くだけになって
いますが、かなりぐらがらしているので、
手遅れかもしれません。地表すぐ上から
被害を受けています。
(シンクイムシは平地と同じ個体かどうかは、
確認していません) 
幹の周りを食べきってしまう、シンクイムシの糞の塊。
小屋からよく見える地点のブナの苗木でし
た。
何かをするということは、大勢集まり、
楽しみとともに行動するために、比較的に
容易です。然し、そのあと見続け、管理して
整えるという地道な行為は、100倍の熱意と
労力が必要です。

虫は、風通しの悪さ、加湿、用土の悪化、
様々な要因が、虫を呼びます。弱ってきた
植物は一種独特の匂いを出します。
その匂いと同時に虫が大発生します。
花き温室のブログ、ブナハバチをご覧ください。 
シンクイムシはどこにでもいる虫。
様々な原因  
大気汚染の問題は色々な機関で取り上げていますが、
山と渓谷社
でもすでに、1996年の時点で取り上げて記事にしています。
ご覧ください。→
こちら←をクリック。 
地震との関連
神奈川工科大学地震予知研究矢田直之準教授の研究

では、地盤の摩擦によるイオンの放出量の測定などをしていると共に、
地震前における動物の異常行動の研究もしているということです。
特に驚くべきことは、様々な動物が、逃げるという行動をとって、暴れる
映像の中に、現在までの観察に地中の虫である、ミミズが一斉に
地表に出る行動が確認されているということでした。
昨年春、ブナハバチの被害にパニック状態の頃、関係諸氏が調査で
山に訪れた。その際、何が原因だろうと、話が及び、地震の影響もある
のでは、という当方の見解は、すべて、無反応であったが、動植物は、
刺激によって動く。それは植物を長く手掛けた経験として言える。
植物の種をまき、植え替えをし、それで数十年の歳月を送ったもので
あれば、誰一人反論はしない。今回のことも、孤立した問題でなく、
すべては連鎖しているのではないかと思わせる。
2012年の昨年から頻繁に起きる地震に、2月16日12時過ぎに
5チャンネルで地震予知の研究として、放映していた内容は無視
できなかった。当ボランティア部の考えに、相槌を打たれた気がした。
毎年うるさいほど啼く鳥が啼かないのも、その要素を秘めているの
だろうか。
 
 植物と環境の書籍紹介 
 自然が大事。
興味のある方は創林社
テレビでも紹介され注目の自然栽培農法家ですが、そのきっかけは、家族の薬害だった
ということは、何にも勝る説得力です。
文中、背筋が寒くなるような文字に、害虫とよばれる虫たちは、生態系のバランスが
崩れている時にそれを修正するために発生しているのではないでしようか。
ひょっとすると人間が口にしてはならないもの、たとえば残留農薬や、
過剰な硝酸態窒素などを食い尽くしてくれているのが害虫なのではないか。
(62ページから抜粋)虫は有害物質を摂食(食べて)排泄し、無害化するための、自然の
サイクルだということです。無農薬、無肥料を取り入れた事による、強烈な反動に苦しんだ
のち、本来の自然の状態に修正された健康な植物に虫は寄ってこなくなった。
と述べています。そのような観点からすると、桧洞丸や、その他の山に残っているブナは、
人々に清浄な水と空気を与えるという機能を失い、風霧に長く送り続けられ、
蓄積居された、有害な物質は、そのまま木を枯らすとともに、
膨大な虫を目覚めさせ、修正するための
最後の手段かもしれないと、考えることもできます。大気に渦巻く有毒物質が、
決していいものではないことは、だれもが否定はしません。物言わぬ木々がこのような形で
訴え、リセットされたとして、この森は又、千年の後に再生するのだろうか。
この過渡期に立つ私たちが、この時代に存在する役割は大きいのです。この森を守りつ
つ、海水による飲料水の利用、空気中の湿度による水の摂取など、様々な分野で研究
する時に向かっているかもしれません。また、特に応えたことは、農業の専門書や、
参考書で頭がいっぱいになり、純粋に自然を観察する目を失っていたのです。

(本書27ページから抜粋)と書かれています。
人は見る、感じる、考える、そして、行動する。ボランティアのページに長く掲げた、
当ボランティア部の不遜とも生意気とも受け取れる言葉が、この本では肯定されて
いました。
植物に直接たずさわる人でなくても、自分の健康のために、是非ご覧ください。 
この2冊の本は、青ヶ岳山荘を訪れたMさんから、当ボランティア部に強い共鳴をいだき、
紹介されたものです。化学物質の被害にあった彼女が、食物・衣類・洗剤・日常備品に
含まれるあらゆる化学物質に拒絶反応を起こし、日常生活ができなくなるという逆境で、
それを克服するために、試行錯誤の苦しみと道開きの中で、本来人が暮らしてきた自然の
尊さと偉大さを、強い説得力で語り得る存在となっています。 
又、日と土と水の文中では殺虫剤に、除虫菊が使われていることに触れ、除虫菊の
成分は、殺虫成分が弱いので虫を殺すより、匂いで寄せ付けない。と書かれている。
今、桧洞丸では、トゲの鋭いアザミの他、毒草のバイケイソウ、マルバダケブキ、が繁殖し
ている。他に繁殖の凄いヤマシロキクだが、毒があるか否かな定かでない。ただ、鹿が
寄り付かないという事実は確かにある。除虫菊とヤマシロキクでは、成分が違うだろうが、
匂いは、強烈なものがあるだろう。確かにある。ヤマシロキクは、絶対食べない鹿の習性を
発見して、鹿に荒らされる斜面に、ヤマシロキクを移植し、崩落を防いだが、その効果は目
覚ましいものがあった。また現実に、この菊に、有毒成分があるとしたら、動物はやはり賢
いと言える。よもぎを燃して、殺虫効果を上げるわけだが、除虫菊も燃して、殺虫効果を
利用するという。(ネット検索)果たして、ヤマシロキクを燃してアブやブユが払えたら、
これも、なるほどかしれないが、山は特別保護区で、それもならないだろう。自然界にある
殺虫効果は、いかにも無害のように思われるが、強いか弱いかの差で、毒は毒である。
こうしてみると、アレルギーに苦しむ人が増えている中にもふと、我々も酸いも甘いも乗り
越えて、凄い生き者というほかはない。その、凄い生きものの我々の足元が、
じわじわと音もなく崩れているのだろうか・・・。 
 2013年、ブナの花と、結実
 ブナの実(種)
  あらかたの、動植物は、成長によって花を咲かせ実を結ぶ。
それは自然の成り行きと言える。然し、今年のような年は珍しいのではないだろうか。
命あるものは、刺激によって活動する。特に花は、危機感を察知して花を咲かせ、実を
結ぶと言われている。命の終わりを察知して、子孫を残そうという動きに出ると言われる。
ブナによらず、この山の植物は、絶体絶命の瀬戸際に立っている。ブナハバチの被害が
ないかと思えば、2012年のように、大型台風の襲来で、大木がなぎ倒されて行く。それも
また、不自然なほどの倒れようだ。倒れた木の根を見てみると、実に小さい。根が張って
いないのだ。普通植物は、葉張りと同じ根を張ると言われている。この根の小ささは異常
なのだ。土に力がないと言うべきか、土が汚染されているというべきか、その結果、木が
弱っていると言うべきか、早くから騒がれている、大気に問題があるのか。始終その木の
先端で気流の襲来を受ける山と山の木、それが何よりも反応していると言えるのではない
だろうか。今まで、どれほど様々なことに無関心だったか、思い知らされる。大昔というほど
でもない昔、水と空気はただだと言われた。無駄に消費することを、湯水のように使うと言
う、例えがあった。然し、今、水を買うことが不自然でない時代になっている。やがて、
空気も金を出して買う時代が来るだろう。それがいつか、早いか遅いかわからない。
(写真撮影は2013年6月10日)
事実に伴った、様々な憶測。様々な思考の展開や、因果関係を考えることは大事ですが、
まず1番大切なことは事実をよくよく見る事でしょう。出来れば広範囲に継続して観ること、
記録することかもしれません。事実以外は、かも知れないという想像が加味された部分
です。 
写真展にて訴える
今年は9月4日から17日までと決まりました。 
県立相模原公園のグリーンハウスサカタのタネの展示場にて行っています。 
2010年には桧洞丸の荒廃。2011年にはブナハバチが加わり、今年度2012には
その経緯の記録を展示して、皆さんに訴えてゆく予定です。
詳細は、追って表示いたします。
 ある日の写真展。

2011年展示会
自然を守ることは自分を守ること 
昔、丹沢山塊は原生林におおわれていたことは、残っている写真や、
先人の紀行文に、見ることができます。然し、時代とともに原生林は失われて、
登山者を多く迎える人気の山ほどそれは顕著です。幸い桧洞丸は、主脈からはなれ、
入山者も少ないことと、山頂から山小屋が離れていることなどが、原生林の壊滅を
免れたと言えます。山小屋としても、どこよりも早くプロパンガスを導入し、旧公園管理
事務所から感謝されました。山小屋としても、桧洞丸が原生林を保っていることは、
誇りでした。然し、個人のささやかな努力は、加速する環境破壊に届かず、風霧の
通り道や、オーバユースと言われる、えぐれた登山道から枯れてゆく大木は、
後を絶たず、2010年の春の突風、そして2011年の台風という自然災害は桧洞丸を
直撃して、大木やシロヤシオツツジの木々をなぎ倒しました。それにも増して大きな
衝撃は、ブナハバチの被害です。原因は複数に及び、自然の巡りは人知及ばぬ
ものがありますが、然しまた、大きな割合で人は自然にかかわっています。
意識的にも無意識的にもかかわっているのが現実です。それは大げさでなく、地球
規模、国際的範囲に及ぶでしょう。一人の力は小さくても、全員がかかあわっている
問題です。その全員が気を付ければその力は膨大です。私たちはそこに着目し、
たった今、些細なことでも何ができるか、日常を振り返って、知恵を出し合い、
思い当る環境に対しての礼節、思いやりに気づいたら、少しでも改めていきたいもの
です。
(一部、写真展趣旨より抜粋)
                   ボランティア部 主宰 高城律子

神奈川新聞がブナハバチを取り上げてくださいました。
7月17日丹沢自然学校の小林昭五さんの案内で神奈川新聞社足柄支局の
須藤望夢記者が取材に訪れました。記事になったのは7月23日でした。
このところ丹沢自然学校の方が随分訪れます。
ブナハバチの調査をしているのでしょう。
記事内容はこちら
尚、記事の文中で、この山の被害は230本とありますが、それは取材中の
食い違いで、躑躅新道から木道に入って頂上を通り、小屋までの間に数えた
本数です。

被害の木の本数に対して、金山谷方面、躑躅新道上部の被害の木は数に入って
いません。犬越路方面の稜線も点々と被害に有った木が、薄茶色に盛り上がって
います。山頂直下から確認されます。何処までを桧洞丸と言うのかそれによって
数の食い違いが生じるでしょうが、同角の鞍部から、石棚の稜線はテシロノ頭を
過ぎるかどうか、東は金山谷の乗越し辺りを目安とし、熊笹の峰の鞍部まで
と言う風に厳密に数えて言えば、1000本はあると思います。


山を守るために
ゴムのプロテクターを付けるのは、山に対する最低限の礼儀です。
高額な物でないので、取れてしまった時のために、
替えをお持ちください。
このページの写真は、 ボランティア部主宰の高城律子がすべて現地で撮影したものです。

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