アメリカ大陸における旧スペイン植民地は、十八ヵ国にも上る。何故か、という思いは、ラ米に関った日本人なら誰にもあろう。領域が余りに広大だから、というのは理由にならない。カナダと米国はそれより二割方小さいだけに過ぎない。独立時期がさほど変らない旧ポルトガル植民地はブラジル一ヵ国だけで、三割方狭いだけだ。ロシアは、逆に、四割も広い。
これら十八ヵ国の内のグァテマラ、ホンジュラス、エルサルバドル、ニカラグア及びコスタリカの五ヵ国は、歴史的な経緯から一体感が強い。独立記念日も国旗のデザイン(色の配分は異なる)も同じで、住所も国名の後「中米」を意味するCAが付く。1991年12月、この中米五ヵ国とパナマの6ヵ国が中米統合機構(SICA)を形成(後に旧イギリス領ベリーズも参加)した。
残る12ヵ国の内、南米9ヵ国は2008年5月、ブラジルとガイアナ(旧英領)及びスリナム(旧オランダ領)と共に南米諸国連合(UNASUR)を組成した。従って、今旧スペイン領十八ヵ国は、聊か乱暴な線引きではあるが、2統合体とメキシコ、ドミニカ共和国及びキューバの3ヵ国に纏められよう。
統合体は、欧州連合(EU)をモデルとする。加盟国の主権は一定の民主主義体制にある限り侵害せず、経済面ではヒトとモノの流れの自由、同一の対外関税(従って国家毎の関税自主権は無い)が特徴だ。域内には統一体を代表する委員長を抱く常設委員会が置かれ、裁判所と議会も設置される。最終的にEUと同じく同一通貨や中央銀行を持つまでになるのか、非常に興味深い。
ブラジルを含むイベロアメリカ十九ヵ国(以下、「ラ米」)の歴史的背景を、地域統合の側面から概観していく。
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