先ず、代表的ポプリスタを7名、列記する。これ以外にも、ナショナリズムや労働運動の高まりでポプリスタと目される政治家が1930-50年代にかけて輩出している。次項からは最初赤字で表わし、その他の登場人物は青字で、人名表に記す。
- カルデナス(Lázaro Cárdenas del Río、1895-1979)。メキシコ。軍人。1934年の大統領就任前に全国行脚。労組と農民組合を全国組織化して政治基盤とし、後の「制度的革命党(PRI)」を磐石なものにした。大規模農地改革、石油国有化を断行
- ヴァルガス(Getúlio Vargas、1883-1954)。ブラジル。 1930年、若手将校団と共に、いわゆる「ヴァルガス革命」を率いる。「新国家」の推進、15年間に亘る第一次政権に加え、復活して更に4年政権を担う。ブラジル近代化の功労者
- アヤデラトーレ(Víctor Haya de la Torre、1895-1979)。ペルー 1924年、メキシコで「アメリカ人民革命同盟(APRA=Alianza Popular Revolucionaria de América)」を旗揚げ、1930年、帰国後「アプラ党」(現政権党)結成
- ベラスコ・イバラ(José María Velasco Ibarra、1893-1979)。エクアドル追放と復権を繰り返し、大統領を1934年の第一次政権を皮切りに5回務める亡命中も「偉大なる不在者」と呼ばれる大衆的人気を博す。
- ペロン(Juan Domingo Perón, 1895-1974)。アルゼンチン。軍人出身。軍政時代に労組との関係を構築、1946年から55年まで、及び73年から1年弱政権を担う。支持者を「ペロニスタ」と呼び、その政党「正義党」(現政権党)の通称はペロン党
- ベタンクール(Rómuro Betancourt、1908-81)。ベネズエラ。現在も有力政党の一角にある民主行動党(AD)結成。1945年、民主化のための臨時政府樹立。追放されるが、58年民主化達成に貢献、ADは59年から94年まで、一時期を除き政権党
- ガイタン(Jorge Eliécer Gaitán、1903-48)。コロンビア。1946年、自由党(コロンビアの二大政党の一つ)党首。大衆動員力に優れ、今日も尾を引く「暴力の時代」(1948-64)は彼が暗殺されたことが発端
上記7名の内、カルデナス、ヴァルガス及びガイタンを除く4名が下記の通り、亡命経験者である。またヴァルガスは自決、ガイタンは暗殺された。
- 学生運動指導者として追放、国外脱出:アヤデラトーレ(1923-30)、ベタンクール(1928-36)
- 政変による亡命:ベラスコ・イバラ(1935-44、47-52、72-79)、ペロン (1955-73)
現大統領ではガルシア・ペルー及びフェルナンデス・アルゼンチン両大統領が、夫々アプラ党、ペロン党から出ている。他の5ヵ国については下記の通り:
- ルラ(ブラジル):自ら創設した「労働者党」はヴァルガスの労働党とは別
- チャベス(ベネズエラ):ADの流れを汲む政治勢力を、言ってみればアンチテーゼとする政党を自ら創設
- カルデロン(メキシコ):国民行動党(PAN)。同党はPRIに対する野党の時代を、創設後61年間にも亘って過ごした。
- サントス(コロンビア):自由党で政治活動を始めたが、ウリベ前大統領(同党公認候補を下し政権を獲得)と共に独立
- コレア(エクアドル):ベラスコ・イバラの政治勢力は消滅
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