夜男爵の部屋

バロン・ナイトのゲストルーム



 夜そのもののために夜を溺愛するというのが、私の友の気まぐれな好み(というより他に何と言えよう?)であった。そしてこの奇癖(ビザルリー)にも、他のすべての彼の癖と同じく、私はいつの間にか陥って、全く放縦に彼の気違いじみたむら気な行いに身を委ねてしまった。漆黒の夜の女神はいつも我々と一緒に住んでいるというわけにはゆかない。が、我々は彼女を模造することができた。ほのぼのと夜が明けかかると、我々はその古い建物の重々しい鎧戸をみんな閉めてしまい、強い香をつけた、ただ実に微かな不気味な光を放つだけの二本の蝋燭をともす。その光で二人は読んだり、書いたり、話したりして――夢想に耽り、時計がほんとうの暗黒の来たことを知らせるまでそうしている。それから相携えて街へ出かけ、昼間の話を続けたり、夜更けまで遠く歩き廻ったりして、その繁華な都会の奇(く)しき光と影との間に、静かな観察の与えうる無限の精神的興奮を求めるのであった。

              ―― E・A・ポオ「モルグ街の殺人事件」より(佐々木直次郎訳)

テーマ曲:Vivaldi:La note (The night)  リコーダ協奏曲<夜> You Tube


ようこそ、余が暗闇のゲストルームに彷徨い入られた方々。夜を溺愛する方のみ、この先の扉を開かれるがよろしい。各晩ひとりの夜の友を余が客人として招き、歓談し、一篇の作品を置き土産にしてもらう趣向にてござる。いわばサロン・ウラノボルグの裏サイトでござるが、あくまでも文学サイトである点に変わりなきことを承知おかれたい。(B.N)



  第一夜 風の中の家 ・ ゲスト 羽和戸玄人   

  第二夜 時の学校 ・ 羽和戸玄人 作

  第三夜  奇人 ・ 羽和戸玄人 作

  第四夜  公園 ・ 羽和戸玄人 作

  第五夜 橋を越える ・ 羽和戸玄人 作

  第六夜 クレピュスクルム ・ ゲスト アフララ

  第七夜 ネロポリスU 夜男爵詩集後編 ・ 夜男爵作

  第八夜 Anschauungen――散文詩集 ・ 夜男爵作

  第九夜 夜の中心への旅 第1章 ・ ハワード・クロフト作

  第十夜 夜の中心への旅 第2章 ・ ハワード・クロフト作

  第十一夜 夜の中心への旅 第3・4章「夜への序章1・2」・ハワード・クロフト作

  第十二夜 夜の中心への旅 第5・6章「夜への序章3・4」・ハワード・クロフト作

  第十三夜 志馬氏の夢日記(前篇) ・ ゲスト 夢遊星人

  第十四夜 志馬氏の夢日記(後篇) ・ ゲスト 夢遊星人

  第十五夜 最短詩集・七里靴 ・ ゲスト 羽和戸玄人

  第十六夜 続・最短詩集・海のイデア ・ ゲスト 羽和戸玄人

  第十七夜 過去からの招待状 ・ ゲスト 羽和戸玄人
 

マリネンコ文学の城
サロン・ウラノボルグ