エポス文学館 改め 

 マリネコ文学館


今月の言葉

<夜の影はすみやかに落ちつつあった
 アルプスのとある村を 一人の若者が 雪と氷のさなかを
 奇妙な字句をしるした旗を掲げ すぎていった
 「より高く(Excelsior)!」と

 彼の額は悲しげだが その下の眼は
 鞘からこぼれる剣のように 輝いていた
 そして銀のラッパが鳴るように かの未知の言葉が
 高らかに鳴りひびいた
 「より高く(Excelsior)!」と

 幸せな家庭の中に 暖炉の火が暖かく 明るく
 燃えるのを彼は見た 頭上には氷河が 亡霊のように白く光っている
 彼の唇からは うめき声がもれた
 「より高く(Excelsior)!」と

 「その峠はよしなされ」 と老人は言った
 「黒々とした嵐が 今にもおそいまするぞ
 幅広く深い激流が ごうごうと逆巻いておりますぞ」
 しかしラッパのような声は 朗々と答えた
 「より高く(Excelsior)!」と

 「おとまりなさって」と乙女は言った 「あなたの疲れた頭を 
 この胸のうえで やすらわせてあげます」
 若者の青い輝く眼に ひと粒の涙がやどった
 しかし彼は ため息をつきつつも答えた
 「より高く(Excelsior)!」と

 「松の木の枯れ枝に 気をつけなされ
 恐ろしい雪崩に 気をつけなされ」
 これが農夫のくれた 夜の最後の挨拶だった
 はるかな高みから 声が答えた
 「より高く(Excelsior)!」と

 夜のあける頃 聖ベルナール寺院の 敬虔な僧たちが
 いつもの祈祷を 空に向けてあげていると
 空気をさくようにして 叫び声が起こった
 「より高く(Excelsior)!」と

 一人の旅人が 忠実な犬のかたわらに
 なかば雪にうずまった姿で 見つかった
 凍りついた手の中に あの奇妙な字句をしるした旗を
 握りしめたままだった
 「より高く(Excelsior)!」と

 凍てついた 夜明けの薄明の中で
 息絶えても美々しく 彼は横たわっていた
 静謐な空の高みから 一つの声が
 流れ星のように降ってきた
 「より高く(Excelsior)!」と>

     ――ロングフェローより高く(EXCELSIOR)」

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アムブローズ・ビアス妖夢―夜の幻影― 
ナサニエル・ホーソーン夜半の幻―心の幽霊―
ナサニエル・ホーソーン夜のスケッチ―雨傘の下から―  
 ビブリオテク・ウラニボリ
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見えない王国・フォルクマン=レアンダー童話集(「見えない王国」他・全6篇)
沼に落ちたハイノ・フォルクマン=レアンダー童話集2
(「沼に落ちたハイノ」他・全4篇)


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 カイメラ氏の英雄詩講座その4エッダ
 
10デカンションへの旅(1)
 11
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 12. 
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